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「オヤカク」ー親は子供の人生に責任を持てない

「オヤカク」という言葉をご存知だろうか。「内定者の親に対し、企業が入社してくれるかどうかを確認すること」「オヤカク」(親確)というらしい。

なんというか、いかにも日本らしい現象ではないか。上の記事では触れていないが、日本と同様、我が子を学歴社会の勝ち組にしようと必死な親が多くみられるお隣中国や韓国でも、就活に親が関与する状況は日本と変わらないのだろうか。

私も親なので、親が子を心配する気持ちはよくわかる。路頭に迷うような人生を送っては欲しくないし、子供が成功を望むのであれば成功してもらいたい(何を持って成功とするのかは本人が決めることで私にはわからない)。子供の進路に関し、親子で話し合うのは当然だろう。しかしながら「内定者の親に企業が入社意向を確認する」という行為の意味がよくわからない。

親の目からしたら頼りないだろうが、一応成人している一人の大人である。なぜ企業が本人をスキップして親とやり取りするのか理解に苦しむ。

二十歳を過ぎた社会人予備軍を「保護者を通してしか意見を言えない人間」として扱うのはいかがなものか。あるいは企業側に「親を先に取りこむことで親の影響力をもって彼らをコントロールできる」という心理が働いているのだろうか。いずれにしても、イマドキの就活生はずいぶんと甘くみられたものだ。

私はカナダで子育てをしてきた。「子供の意思を尊重する」ことについて、ここで北米との違いを紹介したい。上のnoteでも触れたのだが、まず日本と北米では「子供像」が違う。

アジア圏において子供は「無知で無力であり、大人の庇護下におかれる存在」として認識されていることが多い。それに対し北米・欧米では、子供は「体は小さくても能力・人格がある一人の人間であり、大人同様その意志と権利は最大限尊重されるべきである」と考える。

子供は「教え導かれる存在」であることは共通している。しかし「子供像」の違いから、期待される大人の役割は当然違う。前者では、子供の教育や暮らしを大人がコントロールする。基本的に、大人の言う通りにするのが「良い子」だとされる。

対して後者では、大人はあくまでも補助的存在だ。子供の持つ能力・志向・オリジナリティー等を伸ばすのが親や教育者の仕事であって、だからこそ、幼児の頃から子供の声を尊重する。

例えば未就学児のランチタイム。完食することは重視されない。保育士や先生がまわりに居ても、「残さず食べろ」などという人間は皆無だ。(おそらく親は「これくらいは食べてほしい」という思いでパックしたであろう)ランチが残っていようと、子供の「もういらない」という意志が尊重される。あの光景は「三角食べ」や「居残り給食」システムで育った私にとっては大きな驚きであった。

息子の小学校には給食があった。幼稚園生に毛が生えたような1年生も、大きなトレイを持ってカフェテリアの列に並ぶ。基本的に糖質・ビタミン・タンパク質・カルシウムなどがカバーされているメニューなのだが、何を選ぶかは子供次第なので、量も質も「きちんと」食べているかどうか、親としては大変心許なかったのを覚えている。野菜や果物はいらないという子供に対して、大人は声掛けはしても、強制的に食べさせることはしない

カフェテリアのこの光景に私は当時納得できず、もう少し大人が介入して「きちんと」食べさせればいいのにと思っていた。数年たって幼児教育を勉強した際に北米の「子供像」を学んだことで、やっと納得がいった。「子供の自主性を重んじる」という行動を支えるバックボーンがわかったからである。

日本式アプローチがいいのか、北米式がいいのかには賛否両論あるだろう。しかし「精神的自立」という観点から考えると、子供のときから四六時中「あなたはどうしたいの?」「あなたの考えは?」と聞かれる子供が「自分の意見を持ち、それにしたがって行動する」ようになるのは当たり前であり、その逆もまたしかりである。

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親子の思いにずれがあるのは当たり前だろう。住んでいる世界が全然違う。社会や価値観の変化も激しい。親の思いを全面的に汲む「親孝行」ポジションをゲットしても良し、自分の「心の声」を貫いても良し。先々自分の人生がどう転がっていくのかなんて誰にもわからない。どちらを選んだにしても、長い人生を歩く間には「あの時の決断は正しかったのか」と思い悩む日が来るだろう。

それでも、選ばなくては始まらない。人生はそんなことの連続で、だからこそ「最終的決断」は自分ですべきだし、「選んだ決断を正解にしていく」ことに尽力する姿勢こそが大切なのだと思う。

就活生に言いたい。親は大抵先に逝く。親を優先するにしても自分を優先するにしても「自分の人生の最終責任者は自分である」ということをお忘れなく。

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