祭谷 一斗

人生迷子のドラ息子/最近は主に創作/あと飛火野耀研究/今は伊藤計劃研究に復帰中/etc…

祭谷 一斗

人生迷子のドラ息子/最近は主に創作/あと飛火野耀研究/今は伊藤計劃研究に復帰中/etc...

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  • 文学研究

    基本的に資料収集と読解です。地味。もっとも、中には世界中でここにしかない情報も……。

  • 90年代ライトノベル事情

    主に90年代~ゼロ年代前半のライトノベルを振り返ります。

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固定された記事

『虐殺器官』エピローグの「大嘘」とは何か?

『虐殺器官』のエピローグには「大嘘」が存在している。  この事実は一時期まで有名だった。  2007年。刊行直後に読者(稲葉振一郎氏)が疑義を呈し、それに対し作者…

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祭谷 一斗
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魂天LV2になっての感想。

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祭谷 一斗
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【『飛火野耀読本』より】飛火野耀スレッドには何が書かれていたか?

 「飛火野耀=真行寺のぞみ説」検証のきっかけが匿名掲示板だった、とは 既に書いた 通り。  この点であの掲示板は、筆者にとって恩義あるサイトではある。  けれども一…

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祭谷 一斗
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【『飛火野耀読本(仮)』収録コラムより】飛火野耀 『もうひとつの夏へ(上)』初版の回収事情と異同点

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祭谷 一斗
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『ハーモニー』最終読解に必要なポイント1つ。/伊藤計劃読解

 またつらつらと考えてまして、霧慧トァンの意志(なぜ『ハーモニー』を記したか?)を確定させるに際し、以下の一点が必要と考えるに至ったため、ひとまず記しておきます…

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祭谷 一斗
2か月前
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三麻で魂天達成した感想。

 去年の大晦日までの話ではありますが、あるいは魂天目指してる人の参考になるかも……と思い、ざっくり書き残しておきます。基本的に地道な話で、雀聖到達から1年半ほど…

祭谷 一斗
4か月前
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【進捗報告】「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたのか?」/伊藤計劃『ハーモニー』読解

 年末の進捗報告です(挨拶)。色々やってるんで自分でもこんがらがる可能性があり、まあ後に続く研究者もいるかも、て感じで書き残します。  本題。「なぜ霧慧トァンは…

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祭谷 一斗
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都市伝説が証されるとき~作家・飛火野耀と真行寺のぞみ~

 伝説的な作家・飛火野耀と、謎の女子高生作家・真行寺のぞみ。  今でこそ二人は同一人物と見なされていますし、説に異議を唱える人はほとんど居ません。  では、その…

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祭谷 一斗
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【小ネタ】『虐殺器官』と『CURE』『戦争広告代理店』

当時から有名な話として、『虐殺器官』は黒沢清監督の『CURE』から発想を得ている話があります。別に目を引く話ではなく、作者当人が述べていたことです。 『CURE…

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祭谷 一斗
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【雑記】伊藤計劃、カズオ・イシグロ、小島秀夫/『ハーモニー』と『わたしを離さないで』

 おそらく影響関係がある(『ハーモニー』の執筆難航中に『わたしを離さないで』を読んでいた)ことまでは把握していましたが、いま読み返すと、 「この小説で使われたテ…

0〜
割引あり
祭谷 一斗
8か月前
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クラヴィスと悪夢――「死者の国」再訪/伊藤計劃『虐殺器官』読解

 死者の国とは悪夢であり、中盤以降のクラヴィスには心休まる存在でない ――そんな記事を以前書いた。  本稿はその続編にして増補版であり、全編を通してのクラヴィスと…

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祭谷 一斗
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【雑文】ノベライズ版『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』感想/伊藤計劃読解

・原作を知らない立場から率直に書いてるので、思い入れある人はたぶん回避推奨。 ・なぜこう書くのかというと、遠からず「知らない状態」ではなくなる予定なので、印象が…

祭谷 一斗
10か月前
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ETMLが持つ「真の意味」とは何か。 『ハーモニー』読解/伊藤計劃研究

基本に立ち返った話をしよう。すなわち、 「なぜ『ハーモニー』でETMLは表示されているのか?」 刊行から今年で15年。あまりに当たり前過ぎて、これまで見過ごされ…

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祭谷 一斗
1年前
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飛火野耀 生誕70周年に寄せて

 以前の記事 からの引用も交えてです。  私事でしばらく原稿を仕上げるまとまった時間がとれそうにないため、ひとまず「存命なら70歳」と書き残しておこうと思います…

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祭谷 一斗
1年前

『ハーモニー』における「語り」の重奏構造/伊藤計劃研究

要旨:『ハーモニー』本編は複雑に時間軸が絡み合っている。本稿では、記述の時間軸について簡易的に扱う。    ・ 『ハーモニー』本編の構造は、整理すれば以下となる…

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祭谷 一斗
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ノベライズ版『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』研究のための手引き /伊藤計劃読解

 オリジナル長編『虐殺器官』『ハーモニー:』と比較し、ノベライズ長編『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』(以下、N版『MGS』表記)の研究は現状ほぼ成さ…

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祭谷 一斗
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『虐殺器官』エピローグの「大嘘」とは何か?

『虐殺器官』エピローグの「大嘘」とは何か?

『虐殺器官』のエピローグには「大嘘」が存在している。
 この事実は一時期まで有名だった。
 2007年。刊行直後に読者(稲葉振一郎氏)が疑義を呈し、それに対し作者(伊藤計劃氏)が婉曲に答えた。そんな事件もあり、よく知られていたのだ。

 しかしながら、肝心の「大嘘」とは何だったのか。具体的にとなると、意外に分かりにくい。
 随所に痕跡らしきものはある。だがそのヒントは作中に散りばめられており、生半

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魂天LV2になっての感想。

魂天LV2になっての感想。

  魂天になったのが2023年の大晦日で、だいたい4ヶ月ですね。
  毎日やってはいたものの、去年ほどでは……という位の頻度でした。
  以下、三麻王座の間での印象です。

・魂天の維持は楽。

 三麻ではpt配分上、王座の間で魂天を目指すのが主流です。
 一番きついのが雀聖3配分で、平均順位2.0では維持すら困難。
 そして魂天は平均順位ちょうど2.0で維持可能。
 魂天になったあとのランクは、

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【『飛火野耀読本』より】飛火野耀スレッドには何が書かれていたか?

【『飛火野耀読本』より】飛火野耀スレッドには何が書かれていたか?

 「飛火野耀=真行寺のぞみ説」検証のきっかけが匿名掲示板だった、とは 既に書いた 通り。
 この点であの掲示板は、筆者にとって恩義あるサイトではある。
 けれども一方で、数々のガセが書かれていたのも確かだ。
 惜別の意も込めて、ここでは雑多な情報も残しておこう。

 以下、引用はすべて当時の2chライトノベル版、『「飛火野アキラ(字がでねえ)」消息求む』による。 ※くどいようだが、このくだりはあく

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【『飛火野耀読本(仮)』収録コラムより】飛火野耀 『もうひとつの夏へ(上)』初版の回収事情と異同点

【『飛火野耀読本(仮)』収録コラムより】飛火野耀 『もうひとつの夏へ(上)』初版の回収事情と異同点

   ・

 数年前までは、2ch(当時)の飛火野耀スレッドがある程度の解答を提示していました。最近ではスレッドの過去ログに触れることすら困難なため、以下、個人的な調査を行った上で記しておきます。

記事の内容
・文庫カバーでの回収版か修正版かの見分け方。 ※版数は同一。
・回収版と修正版の違い。
・初公開の比較画像3枚。

   ・

 初版かつ未修正版(以下、回収版)かどうかは、いくつかの目安

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『ハーモニー』最終読解に必要なポイント1つ。/伊藤計劃読解

 またつらつらと考えてまして、霧慧トァンの意志(なぜ『ハーモニー』を記したか?)を確定させるに際し、以下の一点が必要と考えるに至ったため、ひとまず記しておきます。

 まず、「大調和後の霧慧トァンは意志を持っている(自身は大調和の影響を受けておらず、また回避手段も持っていた)」のは既に書きました。
 その上で、

・大調和後の生府社会で、御冷ミァハはどう語られているか?

 が情報として必要だなと

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三麻で魂天達成した感想。

三麻で魂天達成した感想。

 去年の大晦日までの話ではありますが、あるいは魂天目指してる人の参考になるかも……と思い、ざっくり書き残しておきます。基本的に地道な話で、雀聖到達から1年半ほどかかりました。

 雀聖到達まで(玉の間)
 三麻独特のオリを覚えればあまり苦戦することはないと思います。三麻のオリってのはつまり「一枚切れ字牌は結構危険」「筋もまあまあ当たる」「中盤以降は基本ダマ警戒」辺りですね。四麻の感覚で粘ったらだい

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【進捗報告】「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたのか?」/伊藤計劃『ハーモニー』読解

【進捗報告】「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたのか?」/伊藤計劃『ハーモニー』読解

 年末の進捗報告です(挨拶)。色々やってるんで自分でもこんがらがる可能性があり、まあ後に続く研究者もいるかも、て感じで書き残します。

 本題。「なぜ霧慧トァンは『ハーモニー』を書いたのか?」ですね。ここ数ヶ月ほど引っかかってまして、この問いが本当の最終問題なのかなーという気はしています。

 まずそもそも、『ハーモニー』本文では、たびたび重要な事実が隠されています。たとえば、一部の旅路。霧慧トァ

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都市伝説が証されるとき~作家・飛火野耀と真行寺のぞみ~

都市伝説が証されるとき~作家・飛火野耀と真行寺のぞみ~

 伝説的な作家・飛火野耀と、謎の女子高生作家・真行寺のぞみ。
 今でこそ二人は同一人物と見なされていますし、説に異議を唱える人はほとんど居ません。

 では、その「飛火野耀=真行寺のぞみ」説はどのようにして広まったのか?
 そもそも「飛火野耀=真行寺のぞみ」は本当に事実なのか?
 事実ならどんな根拠が存在しているのか?
 最初期からの経緯を踏まえつつ、事実確認し広めた側の目線からここ20年を振り返

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【小ネタ】『虐殺器官』と『CURE』『戦争広告代理店』

【小ネタ】『虐殺器官』と『CURE』『戦争広告代理店』

当時から有名な話として、『虐殺器官』は黒沢清監督の『CURE』から発想を得ている話があります。別に目を引く話ではなく、作者当人が述べていたことです。
『CURE』のもう一方の主役、殺意の伝道師・間宮。彼の行動対象が民族単位だったら、と。

そして『戦争広告代理店』。今でこそPR会社の話は珍しくない、けれども刊行当時は衝撃的でした。紛争の風向きでさえ、情報戦が支配しかねないのだと。
「虐殺」の影の、

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【雑記】伊藤計劃、カズオ・イシグロ、小島秀夫/『ハーモニー』と『わたしを離さないで』

 おそらく影響関係がある(『ハーモニー』の執筆難航中に『わたしを離さないで』を読んでいた)ことまでは把握していましたが、いま読み返すと、

「この小説で使われたテクニックについて話し合った」とのことで、もう少し意味合いが変わってきますね。『わたしを離さないで』でのテクニックについて両者ある程度把握していて、なおかつ話し合っていたと。
 加えて、

 との言及もあり、『日の名残り』で使われていたテク

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クラヴィスと悪夢――「死者の国」再訪/伊藤計劃『虐殺器官』読解

クラヴィスと悪夢――「死者の国」再訪/伊藤計劃『虐殺器官』読解

 死者の国とは悪夢であり、中盤以降のクラヴィスには心休まる存在でない ――そんな記事を以前書いた。
 本稿はその続編にして増補版であり、全編を通してのクラヴィスと「死者」の関係を取り上げるものだ。

   ・

『虐殺器官』を通読して分かるのは、死者の国はあくまで全体の一エピソードということだ。そもそも「死者の国」とは、作品中盤までにのみ現れる言い回し」なのだから。

 注意深く読めば、「死者の国

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【雑文】ノベライズ版『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』感想/伊藤計劃読解

・原作を知らない立場から率直に書いてるので、思い入れある人はたぶん回避推奨。

・なぜこう書くのかというと、遠からず「知らない状態」ではなくなる予定なので、印象が変わる可能性もあるからですね。

・んでは、何回目か読んでみての感想です。

   ・

・純粋な事実として、作家の作品としてこのノベライズが語られることは(『虐殺器官』『ハーモニー』の二作品と比較したならば)少ない。

・なぜか。第一に

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ETMLが持つ「真の意味」とは何か。 『ハーモニー』読解/伊藤計劃研究

ETMLが持つ「真の意味」とは何か。 『ハーモニー』読解/伊藤計劃研究

基本に立ち返った話をしよう。すなわち、

「なぜ『ハーモニー』でETMLは表示されているのか?」

刊行から今年で15年。あまりに当たり前過ぎて、これまで見過ごされて来た観点だ。

   ・

ETMLは現実のHTMLに想を得ている。

ある意味、当たり前の話ではある。本文冒頭のETMLからして、HTMLに加筆される形で表現されているのだから。

〈!DOCTYPE 「〜」〉は〈「〜」形式で書くと

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飛火野耀 生誕70周年に寄せて

飛火野耀 生誕70周年に寄せて

 以前の記事 からの引用も交えてです。

 私事でしばらく原稿を仕上げるまとまった時間がとれそうにないため、ひとまず「存命なら70歳」と書き残しておこうと思います。
 数年前にあるいは、と思ったときは空振りでして、消息は変わらず不明。何とかご身内やお知り合いと連絡がつかないものでしょうかね……。

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『ハーモニー』における「語り」の重奏構造/伊藤計劃研究

『ハーモニー』における「語り」の重奏構造/伊藤計劃研究

要旨:『ハーモニー』本編は複雑に時間軸が絡み合っている。本稿では、記述の時間軸について簡易的に扱う。

   ・

『ハーモニー』本編の構造は、整理すれば以下となる。

 明示的な過去描写――たとえば〈recollection〉タグ内の記述――もあるが、それだけではない。
 本編の記述は必ずしもリアルタイムではないため、各々の描写には微妙な齟齬が存在している。

 分類のヒントは作中にある。それも

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ノベライズ版『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』研究のための手引き /伊藤計劃読解

ノベライズ版『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』研究のための手引き /伊藤計劃読解

 オリジナル長編『虐殺器官』『ハーモニー:』と比較し、ノベライズ長編『メタルギアソリッド ガンズオブザパトリオット』(以下、N版『MGS』表記)の研究は現状ほぼ成されていない。時期上は『虐殺器官』と『ハーモニー』の合間に位置し、一時中断していた『ハーモニー』の完成にも寄与した可能性が高いのだが。

 残念ながら、N版『MGS』の謎は『ハーモニー』の謎よりなお知られていない。私事でしばらく忙しくなる

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