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【閲覧注意】ほーら、リストカットだよ。の先輩の話

☆今日は夫が出張のため、1人です。

本当は溜まってる仕事があるのですが、気分転換にnoteを無性に書きたくなりました。

なお、今回の話はOL時代に可愛がってくれた先輩の話です。今はどこにいるかわからないのですが、彼女の元気と幸福を祈ってnoteを書きました。

OL時代、私には可愛がってくれる先輩が2人いた。1人は、今も仲良しのN先輩。もう1人は、今は行方不明疑惑のあるT先輩である。

行方不明の理由は、離婚した夫の両親が金を貸せとせびりにくるので子供抱えて逃げているなどという噂だった。しかし、真実は未だにわからない。

当時の私は、まだ20〜22歳。T先輩は30代前半だった。面倒見もいいし、性格も優しい。私からすれば、仕事のできる大先輩。しかし、職場では気性が激しすぎてメンヘラと扱われていた。

見た目は目も大きくて、スタイル抜群の美人。笑顔も可愛らし人。時には「私、バツイチなの」と、自分のことを明るく話すこともあった。

しかし、明るい声の裏には常に負のオーラがつきまとっているような人だった。

私は、T先輩とは営業所の場所は違うので年に数回しか会うことはなかった。会うのはいつも新年会、社員旅行、忘年会、全体会議くらいだ。

私にはいつも「みくさんは、目を整形して歯を矯正したら絶対美人になれるのにね。」「みくさんは、ショートが絶対似合うよ。前髪もね、切るといいよ。」など、容姿に対するアドバイスをくれた。礼儀やマナーのようなことで注意されたことはない。

ただ、いつも「目を整形するといいよ」という訳の分からないアドバイスをくれた。こういうところが、おかしな女だとオジサン達に扱われる原因なんだろうな、と思いながら聞いていた。

T先輩は、いつも会うたびに男の話をしていた。誰も聞いてもいないのに「今の男はね」から話がスタートする。

ある時は、イタリア旅行に行った先でナンパされたイタリア人と交際をスタートした話だった。

世間知らずの私は、「イタリアの男とロマンスなんて凄いですね!ドラマみたいで羨ましいです!」と、目を真ん丸にして聞いていた。

私はT先輩が大好きだったが、職場では「あの人はマジでヤバイ」などと噂があった。しかし、若者の面倒は良く見るので20代の社員には慕われていたように思う。

ただ、ある日を境にT先輩が本当に受け付けられなくなったことがある。そして、T先輩に本当に酷いことをしてしまった。

それは、ある社員旅行の日だった。T先輩と私は、なぜかホテルの部屋に2人きりだった。その頃は、既にT先輩も鬱疑惑が出てきており目つきはうつろ、静かに下をジッと凝視する様は恐怖絵図のようだった。

やがて、T先輩が「ほぅら」と言って、手首の裾をスッとずらした。私は、恐怖のあまり声を失った。

T先輩の手首には、無数の傷跡があった。

実は職場で「あの人、自殺未遂何度もしてるらしいから」という噂を聞いたことがあった。でも、私の知るT先輩は面倒見が良く、明るい姿しか知らない。それは嘘だろうと思っていた。

おい、まさか本当かよ。足がガクガク震えた。早くこの場を立ち去りたい。でも、人間は本気で恐怖を感じると、動けないし声も出ないらしい。

「ねえ、凄いでしょう?こんなにあるのよ。ウフフフフフ」

T先輩は、うすら笑みを浮かべて笑っていた。まるで、岡田あーみんの世界である。なぜ、自傷行為の跡を人に見せて笑ってるのか?意味がわからないよ、セニョリータ。

この日から、私はこの人を心で「手首さん」とあだ名をつけた。

私は、昔から自分のことを頭おかしい女だと思っていた。私は周囲の人からも、「変わってるね」と言われていた。しかし、そんな変わり者の私でさえ「本家には勝てない」と思うほど、先輩は変わっていた。

よく「私、変わってるって人に言われるんですよ〜」とか、「自称メンヘラが語る!」などといった話ってあるけど、本家になると、もう自分のこと変わってるとかメンヘラとかすら言わない。人を黙らせるほどの恐怖を無言で与えてくるのだ。

そして、この自傷行為自慢は翌年の社員旅行でも起きた。嫌なら断ればいいんだけど、先輩に誘われてヘコヘコまたついていってしまった。先輩は、リストカットの跡を見せるだけで満足するらしい。

私は「凄いですね」とも「やめたほうがいいですよ」とも声をかけなかった。ただ、静かにじっと先輩の傷跡を閲覧した。その方が、彼女の気は晴れるんじゃないかと思ったのだ。

私が出会った頃のT先輩は、髪も綺麗でスタイル抜群の美人だった。

しかし、年を追うごとに髪も洗っていないような雰囲気、肌はボロボロ、目は死んでいった。一体何があったのかは、わからないが確実に鬱になっていた。

私は社員旅行でお酒を注いでいた時、T先輩を面白おかしく話す上司と一緒になって話をしてしまったことがある。

聞かれてないと思っていたが、T先輩の体は固まっていた。涙を浮かべた横顔を見て、ハッと気づいた。

どうしよう。本当なら、可愛がってもらっていた私は庇うべきだったのかもしれない。

なのに、私も一緒になって上司達と一緒に笑ってしまった。

それから、T先輩とはほとんど話をしていない。その後、T先輩はすぐにできちゃった結婚をして辞めてしまった。

世の中には、自然と幸せを引き寄せる人と不幸を引き寄せる人がいる。10代の頃に不幸が多かった私は、世の中は不公平だとずっと思っていた。

しかし、私はT先輩と出会ってある一つの法則を見つけたのである。T先輩は、リストカットの傷跡を誇らしげに見せてきた。まるで、傷の数を勲章のように思っているような感じだったのだ。おそらく、彼女にとって不幸は勲章であり、喜びだったのではないだろうか。

普通なら、手首の傷見せる時って泣きながらとか、「こんな辛いことがあって」って話をするよね?って思っていたのだけど。それとも、辛い思いを召喚して喜びに変えているのだろうか。

でも私なら、本当に辛いと思う出来事なら墓場まで持っていくと思う。というか、そんな話は私も持っているよ。

あえて人に言わないのは、自分で自分の首を絞めたくないから。

なぜ、T先輩は自分で自分の首を絞めようとするのだろうか。なぜ、私に見せてくれたのか。なにか心のうちをわかってもらいたかったのだろうか。もし、そうだとしたら。あの時、裏切ってしまってごめんなさい。

私は、当時20代前半。過去にはいじめを受けて自殺を考えたことなど何度もあるけど、本気で自殺したことはない。本気の人を見て、色々と頭がショートしてしまった。

その後のT先輩の行方は、元職場の方々もわからないそう。ただ、離婚して夫の両親に追われているという噂だけが一人歩きしていた。

「なぜ、いつもあの人はああいうクジを引くのだろうか。あえて引いてるんじゃないのかと。」と、みな口を揃えていた。彼女の幸福を、影ながら祈っている。

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