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詩『おさかなエレジー』#シロクマ文芸部

桜色。はるを彩るさかな、桜鯛。花吹雪。はなびらが風に舞う。

※1

昨夜、死んだはずの桜鯛が皿の上でわらった。俺の眼を見つめながら、喰えるものなら喰ってみろ、と啖呵たんかを切った。売られた喧嘩は、買わなくちゃなんねえ。腕まくりして、一膳の箸を掴んだ。生きた魚は『ひとつのいのち』で、死んだ魚は『たべもの』になっちまう。いつか海水浴にいったおいらたちも、巨大な鮫に食べられちまうかもしれねえな。そんな映画もあったな、な?な?おいらに色々と絡んできやがるから、桜鯛の目玉を一気に口へ放りこんで、頭をぶった切ってやったのさ。食道を通過するとき、まだ負けず嫌いの目玉が抵抗して、ピチピチ跳ねてやがった。すとん、と胃に落として、KOさ。どんなもんだい、おととい来やがれ。お次は骨だけを綺麗に残す食べ方自慢さ。魚の食べ方はちっちゃな頃から、厳しく躾けられたんでい。成仏できるように、しっかり頂かせてもらうからよ。

図1参照 >°))))彡

※2

さかな、さかな、さかな、
さかなのさかさまはなにさま
さかな、さかな、さかな、
とのさまのさかなはなにさま
さかな、さかな、さかな、
さかなやがまさかいいだした

さかな、さかな、さかな、
さけのさかなにひとつどうですかい
さかな、さかな、さかな、
さけのさかなをさかさまにして
さかな、さかな、さかな、
さかさまにころんださかなやどもが
さかな、さかな、さかな、
さかなにさかんにわらわれちまった

さかな、さかな、さかな、
さかさまのさかなをたんとたべると
あたまがさかんにまわりだすのかい
さかな、さかな、さかな、
さかなにさかさまにたべられるのと
さかなをさかさまにたべちまうのは
はてさて、はてさて、はて、さてな
はたしてどっちがおりこうなのかい

喰ってるうちが花か
喰われてるうちが花か
喰う部分があるうちが花

丁か半か
お控えなすって
よござんすか よござんすね
とのさまをさかさまに
さかなやをさかさまに
一緒にふるって ふるって
下克上、下克上、下克上

さかな、さかな、さかな、
とのさまもさかなやもいっせいに
さかなのかみさまにいのりなさい

※3

魚は今日も目玉で叫んでいる
しずかににぎやかに
にぎやかにしずかに

釣られるために生まれたんじゃねえ
捌かれるために生まれたんじゃねえ
喰われるために生まれたんじゃねえ

俎板のうえで魚が喘ぐ
食器のうえで命が喘ぐ
食卓のうえで箸が喘ぐ

たべものもいのち
大なり小なり生命の声明 
みんな、みんな、喘いで、喘いで

魚は今日も目玉で叫んでいる
にぎやかにしずかに
しずかににぎやかに


photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、Yoshiさん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾

#シロクマ文芸部
#桜色

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