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《 幸せの蒼狐 》

《 幸せの蒼狐 》

青い狐を捕まえた。
蒼狐ではあるのだけれど、それにしても青いこの狐は
やたらと懐っこく、何か幸せを運んでくれそうだ。

しばらくすると、俺は仕事を失った。
怪我した足から菌が入って
どうにもこうにも動くことが出来ず。
仕事を失い、身動きも取れないが
なんと狐が
食べ物を運んで来てくれた。
やはりこいつは、幸せの青い狐だ。

寝ている間に薬草も運んでくれていた。
傷は徐々に回復したが、
今度は冬の蓄

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《 緑色のモンスター 》

《 緑色のモンスター 》

緑色のモンスター
こねくり回して、作られた。
ぼく、ねんど。
こねくり回して、伸ばして揉んで
緑色のモンスター
ガオー!
火を吹いて、叫んだ。
ぼくは、モンスター。
そうして、誰も、いない。
ぼく、ねんど。
緑色のモンスター
押入れの、もっと向こう側へ
旅に出ようと思ったら
陽がさして
君の懐かしい、お手て。
ぼくはモンスター
どこにも行けない
ぼくは、君の、ねんど。
離さないでいてよ。
ぼくは、

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《 黄色い花 》

《 黄色い花 》

世界が母を傷つける事があると、知った。
それは幼い記憶の中で
他とは違う、姿かたちをしていたから
馴染めない街で、
明るく黄色い花のように
笑っていた。
「 泣いているの?」と、問う私に
「 大丈夫。大丈夫だからね。」と
やっぱり笑顔で答えていたから
私の記憶には
母の泣き顔さえも
笑顔のように、すり替えられていたんだ。

私も同じように傷ついて
だけれど泣きたい時には母の胸に飛び込んで
花のよう

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《 オレンジ色のクスリ 》

《 オレンジ色のクスリ 》

コロコロと転がって

天井を見ていたら

コロコロと転がって

転げ堕ちて

でも、

舌先の苦味は

ドラッグをするのは、怖くて

舌先の苦味は消えないけど

オレンジ色のオーロラが

私に「 いいよ。」って、言うから。

誰も許してくれないような世界なのに

違法な事なら許してくれるなんて、

そんな事をしている間に

コロコロと転がって

転げ落ちて

でも、私には

オレンジ色のオーロラが

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《 さよなら、桃色。 こんにちは、桃色。 》

《 さよなら、桃色。 こんにちは、桃色。 》

桃色の思い出が
私の記憶にはあった筈なのに
いつの間にか
思い出すのも困難で
なのに、
時折、懐かしいあの桃色の感情が
私の中を掻きむしる。
「 君が、僕にとっての桃色だからじゃないの?」
私はハッとして
主人の桃色になれた事が
思い出にならないように
生きなければいけない、と
手を伸ばしかけた桃色の口紅を
そっと仕舞った。
「 私を無色にしてくれた事、絶対に許さないんだから。」
「 はははは。上

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《 赤ワイン 》

《 赤ワイン 》

この液体を飲んだらば

何かを飲み込めるような

そんな気がしたのです。

赤い液体を飲んだらば

赤く染まるような

そんな気がしたのです。

怒りや涙や儚さを

閉じ込めたような赤色を飲んで

私は

怒りも涙も儚さも

全て

吐き出していたのです。

気がつくと、ここに居ました。

赤い液体が

私を呼んでいたのです。

殺したのでは、ありません。

壊しただけで、ありまして、

あの、

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