見出し画像

鬼滅の刃と同じ時期に起きた福田村事件。関東大震災から100年。

一昨日の9/1、関東大震災から100年が経ちました。

関東大震災では「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「火をつけた」などの根拠ないデマが警察や政府から流され、それを信じた自警団や軍隊、警察の一部により朝鮮人が殺害されました。


朝鮮人と間違われて秋田や沖縄などの標準語を話さない地方出身者、上手く話せない聴覚障害の方たちも殺されました。
日本でルワンダやカンボジアの大虐殺のようなことが起きたのです。

一昨日、この映画を観てきました。


映画館は満席で、予約していなければ危うく観れないところでした=3


福田村事件とは、関東大震災の発生から5日後に、千葉県にある福田村というところで実際に起きた虐殺事件です。
大正時代なので、鬼滅の刃と同じ時期です。


利根川沿いに、香川県の讃岐から薬の行商に来ていた人たちが、地元の自警団によって殺害されました。

あらすじ
時代は大正時代。
海外ではシベリア出兵など戦争が行われており、1910年の韓国併合後、併合に抵抗する朝鮮の人々を激しい武力で抑えこんでいました。

新聞などのメディアは、何か事があるたび、「・・・いずれは社会主義者か鮮人かはたまた不逞の輩の仕業か」
と世論の不安を煽っていました。

そんななか、澤田智一は朝鮮の京城から故郷である千葉県の福田村に、朝鮮で出会った妻静子と共に帰ってきました。
智一は朝鮮半島では教師をしていましたが、ある理由で教師をやめ福田村では農業を始めます。
澤田夫妻は帰郷の汽車で、シベリア出兵で戦死した夫の遺骨を抱いて帰る豆腐屋の島村咲江と乗り合わせます。

村へ着くと、智一の幼なじみの村長と再会します。
村長は、当時広まりつつあった大正デモクラシーの考えをもつ人物でした。
しかし、一方で村では在郷軍人会が力を持ち、戦死者の遺骨が帰るとまた新しい村人が出征するというように戦争が大きな影を落としていました。

同じ頃、沼部新助率いる薬売りの行商団が関東地方へ向かうために四国の讃岐を出発しました。
彼らは幼子や妊婦も含む15人の男女の集団で被差別部落の出身でした。
彼らは関東各地を回って薬を売り、利根川を渡って福田村にやって来ます。


そして9月1日、関東大震災が起こります。
家は倒壊し、大火災が発生して多くの人命が失われました。
そして流言飛語が飛び交い、福田村にも避難民から「朝鮮人が集団で襲っている」「井戸に毒を投げ入れている」との認識が広がってしまいます。
2日には東京府下に戒厳令が施行され、3日には神奈川に、4日には千葉県にも拡大します。それに伴い村人の不安も高まり、自警団が結成されました。

東京では震災後の混乱に乗じてプロレタリア演劇作家平澤計七が警察に連行され殺害されました。

沼部新助らの行商団は村人から讃岐弁を知らない言葉と思われ、朝鮮人と疑われます。
そして殺気だった村人から襲われ悲劇が起こってしまうのです・・・

映画公式パンフレットより


映画の中で、「15円50銭」という言葉がでてきます。
日本人と朝鮮人を識別するために使われた言葉で、発音できるかどうかが生死を分けました。語頭の濁音を発音しない朝鮮語の特徴を前提に、朝鮮人なのか問うものとして生まれましたが、現実には「標準語」を話せる「日本人」なのかを問うものとして機能しました。

殺された行商団が、私と同じ四国の人だったので、見ててつらい気持ちになりました。
(行商団が静子に売った薬は、道後温泉に浮かべた道後湯の花でした。道後湯の花は地元ではとても有名です。)

しかし、この映画の最も伝えたいこと、それは「朝鮮人なら殺してええんか」と行商団の新助が言ったことだと思います。


沼部新助の薬の行商団は被差別部落出身でした。とても差別に苦しんでいます。
「エタは死んでもエタ」「死ぬまで幸せにはなれん」と言いながら、それでも大正デモクラシーや人間皆平等をうったえた水平社宣言に希望を見出します。
新助はあらゆる差別をゆるしません。

ちなみに私の通っていた公立の小学校には、人権集会という行事がありました。
それは元々部落の人たちが、自分たちのことを知ってもらうことで始めた授業だったのですが、いじめ問題や障がい者問題、環境問題などあらゆることを扱っていました。

それは、部落の人たちはあらゆる人々への暴力や人権侵害をなくさなければ、差別はなくならないと考えたからです。

誰かが差別されている社会では、いつ自分たちが差別される側に立たされるか分かりません。

関東大震災後も、殺される対象は朝鮮人から、地方の人々、共産主義思想の人、障がい者まで多岐にわたりました。

自分たちだけが差別されないればよいと部落の人たちは考えなかったのです。


ルワンダ、カンボジア、ユーゴで聞いたような虐殺の話が日本でも起きたのです。
頭では知っていてもいざ映画でその流れを観ると衝撃的でした。
そしてそれは日本で今後も起こりうるなあと思いました。

現代でよく見る光景や態度、こういうやつおるわー、って場面がたくさんでありました。
だから歴史は繰り返しかねない、繰り返さないようにしなきゃと思いました。


それを明確に自覚させてくれる映画の力ってすごいなあと思いました。

戦争から差別が生まれる。
反戦や反差別のリアリティーのある意志を感じた映画でした。



また、映画のパンフレットを買ったのですが、なんと映画の脚本が掲載されていました!

映画公式パンフレット



これを使って劇ができたり、劇をしてyoutubeで流したりとかつて日本で起きたことを広めることができるようになっています。

不都合な歴史はどんどん消されていきます。
福田村事件が2度と起きぬよう、教訓になるよう伝えていくことは大切です。


このnoteで書ききれてない映画の観点、バックグラウンドや映画中に出てきた史実がたくさんあります。
ぜひ皆さん観に行ってほしいです!!🙏




執筆者、ゆこりん、ハイサイ・オ・ジサン


参考資料
映画『福田村事件』公式パンフレット
2023/9/1第一刷

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?