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「やりなさい」は「いっしょにやろう」にかなわない

燻製が趣味です。ベランダで食材を燻すのですが、冬は雪が降るほど寒いので、燻製に最適な季節です。鮭をサクで買ってきて、仕込み、乾燥させて煙をかける・・・スモークサーモンがこれまた旨いのなんのって・・・Mr.チキンです。燻製については今度またnoteにまとめますね!
さて、今日は子どもと同じ方向を向くための言葉についてのお話です。

給食をみんなで食べられなかったAくん

いきなりですが、2つのエピソードを紹介させてください。
ある年に出会ったAくん。低学年の男の子です。

みんなで給食を食べるのがイヤだ

と言う悩みがありました。
他のこともあり、通常学級で過ごすのが辛くなってしまい、
特別支援学級へ通うこととなりました。
特別支援学級担任で話し合い、

  • 無理やり誘っても良いことは無い

  • 「一緒に食べる」が目標じゃない、「食べたいな」と思うことが目標

  • 待つべし、ひたすら待つべし

という方針を決め、Aくんは別室で担任と給食を食べることにしました。
最初は担任とも同じ空間にいたくなかったようです。
教室の中でホワイトボードなどを使って一所懸命壁を作っていました
月日が経って、一緒に語れる思い出が増えてきたころ、少しずつ壁は減っていきました。そんな時です。高学年の男の子が

そろそろ卒業する子がいる
だから、Aくんもみんなで食べるようになって
思い出を作ってほしい

と教員に相談しに来てくれました。
最近のAくんの様子から考えると、ひょっとすると?と思い、
誘ってみることを提案してみました。
高学年の子は

Aくん、卒業まであとちょっと。
会えなくなっちゃうじゃん。
一緒に給食食べようよ

高学年の男の子の言葉

と伝えました。
すると、Aくんは「うん。」と言って、
次の日からはバリケードありですが、同じ教室で食べることができたのです。
時期的なこともあったかもしれません。Aくんの心の成長や努力もありました。
それでもやはり、高学年の子の「一緒にやろうよ」は
Aくんのドキドキする心を前に進めるためのキーワードだったのだろうと思います。

クレヨンをにぎることすらできなかったBくん

また、別の年にはBくんという男の子と出会いました。
1年生の男の子です。
Bくんは色々なことに苦手意識があり、いつも不安そうな表情をしていました。
図工の時間です。

クレヨンで絵を描こう

という課題を出したのですが、
Bくんはクレヨンをもつことができません
いつまで経っても画用紙は白いままです。
この状態については、いくつかのことが考えられました。

  • 描く内容がわからない

  • 描き方がわからない

  • 今までの経験で絵を描いたらバカにされたことがある

  • 初めてのことで不安

  • クレヨンで手が汚れるのがイヤ

  • 学校が始まったばっかりで場に慣れていない

  • おなかがすいている、眠い

その段階では何が原因か探ることは難しいものでした。
ただ、わかることは、Bくんは不安そうな表情をしているということでした。
私は、先ほどの「給食をみんなで食べることができなかったAくん」の表情を思い出しました
そして、高学年の男の子が教えてくれた言葉を使ってみようと考えました。

Bくん、一緒に描いてみるかい?

Bくんは「うん」と言って私の膝に乗りました。
そして、私にクレヨンを持たせて、その手を動かして描き始めました
何が原因かは分かりませんでしたが、
Bくんの不安が解消されたということは確かなようでした。
それからしばらく私といっしょに描く期間がありましたが、
ほどなくして、中休みに一人で絵を描くくらい、絵を描くのが好きになりました。

同じ方向を向く魔法のことば

2つのエピソードをお話ししました。
2つのエピソードに共通することは

いっしょにやろう

という声掛けです。
いっしょにやろう」には、
君が頑張っていること、分かるよ。」や
同じ方向を向くから、やってみようよ。」というメッセージが込められているのかもしれません。
それが、ドキドキする子の背中を押してくれるのかもしれませんね。

まとめ

今日は、「いっしょにやろう」という言葉についてお話ししました。
この言葉を使わず、私が教員という立場を利用して、

「給食はみんなで食べなさい
「時間が無いよ。クレヨンで描きなさい

と伝えていたらどうなったでしょう。
上手くいくかもしれませんが、その子の心の成長までは保証できません
やはり、自分から「やってみよう」となるためには、
やりなさい」は「いっしょにやろう」にかなわないのです。
教員の仕事は、「いっしょにやろう」が出るクラスづくりや
「同じ方向を見てやっていこう」という雰囲気づくり
なのかもしれません。
指導するとき、「やりなさい」になっていないか、チェックしてみるのもよいかもしれませんね!
では、またね~。

(給食指導については私の特別支援学級の他の子がたまたま落ち着いていたことと、教員数が十分に確保できたことからできたことです。学級によってできることには差があります。また、「できるから良い学級」というわけでもありません。)

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