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『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』小原晩

『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』小原晩

先月、母と姉と京都に行った。

朝イチで豆大福を買いに行き、近くのベンチで食べて、京都の町をぶらぶらとし、夜は先斗町で水餃子を食べた。

京都は、いつ行ってもイイ。
私は1年に少なくとも2〜3回は訪れるほど、京都の町が好きだ。

終わりの期限がきちんと定められた大学生活を、京都で過ごせば良かった、と半分くらい本気で後悔している。

豆大福を二個食べた後バスに乗って向かった、恵文社一条寺店。

本と

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『僕の姉ちゃん的生活 明日は明日の甘いもの』益田ミリ

『僕の姉ちゃん的生活 明日は明日の甘いもの』益田ミリ

大好き益田ミリさん☺️

ほとんどの作品を持っているし、何回も読み直している。

優しい絵柄と、クスッと笑える台詞や人間の中の率直な感情。
益田ミリさんの作品はどれも、大丈夫だよ、と優しく背中を押してくれて、頑張りすぎないでね、と寄り添ってくれる。

そんな益田ミリさんの作品の中でもユーモアに寄っていて、姉ちゃんにハッとさせられる『僕の姉ちゃん』シリーズ。

松本に家族旅行に行った際に、泊まった宿

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『もぎりよ今夜も有難う』片桐はいり

『もぎりよ今夜も有難う』片桐はいり

「しんかんせんは、うんてんしゅさんがうんてんしてるの?」
「ながれぼし、みえないね」
「みえないね」

アパレルのバイトで朝7時半から17時まで働いた後に、彼氏に会いに行くために飛び乗った新幹線の中で、後ろの席から聞こえてきた会話。

お母さんと、小さな子二人。
新幹線を運転する仕事があること、流れ星はそんなに頻繁には見られないこと、そもそもこの暗闇は夜空じゃなくてトンネルであることなど、この子た

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『ポイズンドーター・ホーリーマザー』湊かなえ

『ポイズンドーター・ホーリーマザー』湊かなえ

久々に湊かなえさんの著書を手に取った。

直訳すると「毒娘・聖母」。
題名とウラスジに惹起されて、ブックオフで購入した。

小学生の頃は、赤川次郎さんのミステリーを片っ端から読み漁っていた。

殺人やシリアスな要素を携えるストーリーでもどこかコミカルさが滲むサッパリとした文体で、張られた伏線の回収だったり、ユーモラスなキャラクターたちのおかしな行動だったりに夢中になってページを捲っていると、いつも

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『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』島本理生

『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』島本理生

実は、この本を手に取るのは二度目だ。

一度目は、姉に借りて。
二度目は、長い夏がようやく終わり、読書の秋・食欲の秋が到来した、10月。
食思が刺激されるような本が読みたくなり、何か良い本ないかな〜と出向いた地元の図書館で再会した。

私の地元の図書館では、
通常借りられる冊数の上限は6冊に設定されているが、貸出カウンターに「10月は、10冊まで借りられます」と張り紙がしてあって、なんだか嬉しくな

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『砂漠』伊坂幸太郎

『砂漠』伊坂幸太郎

本書の解説を手掛けた吉田信子さんによる、「大学生活とは」における見解である。

私はこの意見に、大賛成だ。

近年は就職活動の早期化に拍車がかかり、大学1、2年の頃からインターンに参加する学生が増え、「早期選考」なんてものも存在する。

早い段階で「就活に有意義な活動」に取りかかり勤しむ人たちに、すごいなあと思いこそすれど、私は自分自身が「それがしたい」とは思わなかった。

インターンなんて、大学

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『東京百景』又吉直樹

『東京百景』又吉直樹

10月2日の月曜日、私は東京へ行く。
内定先の会社の、内定式に参加するためだ。

私が来春から所属する会社が執り行う内定式は、
受身型ではなく、内定者たちが主体性を持って参加する。
4〜5人一組のグループになり、定められたテーマに沿った創作物を、内定式当日に4分間の中で発表するのだ。

私は内定先の人事の方から8月にその旨を聞かされた時、「正気か?」と思った。

時はもう既に8月で、内定式は10月

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『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭

『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭

前期に取っていた授業の中で、一番おもしろかった仏教美術史の教授の言葉。

その教授は、仏教美術のために中国語を勉強したり、実際に作品が展示されているドイツに行ったりの活動を「推し活」と表現する、なんともユーモラスな先生だった。

毎授業後に提出する生徒の感想や質問に、次の授業で30分〜1時間弱かけて答えてくれて(授業時間90分)、
他大学の教授だったため授業形態はオンラインだったが一番双方向性を感

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『軽薄』金原ひとみ

『軽薄』金原ひとみ

金原ひとみさんについて知ったキッカケが、
映画『蛇にピアス』だった。

中学生か高校生の頃に初めて観てから何度か観直していて、先週『軽薄』を読み終えてから久しぶりにNetflixで開いた。

今考えると、なんであの時期に『蛇にピアス』を選んで観る選択をしたのか、自分でも謎である。

愛と暴力とセックスと身体改造がテーマの作品は中高生にはヘビーすぎるし、実際に観た時も自分とはかけ離れた世界のストーリ

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『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』辻村深月

9月に富士山に登る。
母と、私と、私の友人三人で。

友人と二人でおぼんdeごはんで食事をしている時に
何気なく、
「私ずっと富士山に登ってみたくて、学生の内にやりたいから今度お母さんと登るんだ〜」
と話した。

「いいな〜」とか、「大変そう」といった類いの相槌が返ってくると予想していたら、
友人の返答は「私も行きたい!」だった。

「わ、私も行きたい????」とハテナマークでいっぱいになった。

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『4TEEN』『6TEEN』石田衣良

『4TEEN』『6TEEN』石田衣良

先日、めちゃくちゃ久しぶりに中学の同級生達に会う機会があった。
中学時代も学年の中心にいたような男の子が皆を集めて、私にもラインをくれたのだ。

成人式以来だから、3年半ぶりくらい。
成人式の時にも皆大人になったな〜と思ったけれど、そこからまたそれぞれ大学を卒業して仕事に就いたり、同棲を始めたりしていて、次のステップに進んでいるように感じた。

お調子者のキャラクターだった子が会社を興して運営して

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『ひとりずもう』とさくらももこ展②

『ひとりずもう』とさくらももこ展②

さくらももこ展への熱が冷めやらないので、
さくらももこ展で購入した『ひとりずもう』についても記録しておく。

さくらももこ展のグッズ販売では、
『ちびまる子ちゃん』の漫画のワンシーンをモチーフにしたTシャツやトートバッグ、
文房具やコジコジグッズの他に、
さくらももこさんの著書も置いてあった。

その中で私は、『ひとりずもう』を手に取った。
「ちびまる子ちゃん」の後の、さくらももこさんが送る中学や

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『もものかんづめ』とさくらももこ展①

『もものかんづめ』とさくらももこ展①

さくらももこ展に行った。
控えめに言って、サイコ〜だった。
もう一回行きたい。

展示品はほとんどが撮影NGで、
ゆっくりゆっくり見るしかなかった。
『ちびまる子ちゃん』の原画や、
さくらももこさんがパーソナリティを務めていたオールナイトニッポンの音声、
息子と一緒に作った絵本など、
盛りだくさんで大満足の内容だった。

展示の中には、さくらももこさんが書くエッセイの原稿用紙の原本もあった。
ちょ

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『こちらあみ子』今村夏子

『こちらあみ子』今村夏子

先日、約2年ぶりに映画『花束みたいな恋をした』を観た。
一度目は2021年2月、上映中の映画館で。
二度目は就活が終わった大学4年生の初夏、家のリビングで。

作中のセリフで何度も登場する「今村夏子さんのピクニック」が印象的で、そういえば読んでみたいと思ってたんだっけ、と思い出し、探すことにした。

ネットで検索すると、『ピクニック』は
『こちらあみ子』というタイトルの短編集の中に収録されている単

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