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猫の話

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ちょっと不思議な夢の話

子供の頃、飼い猫が亡くなった。

ずっと一緒に遊んだり、オヤツを食べたり、一緒に寝たり、机の上のノートに寝られて宿題を邪魔されたり、楽しく過ごしていた。

でもだんだんと遊ぶより寝ている事が多くなり、毛並みにも白い毛が混じりだし、ペット用のオムツをつけるようになった。いつの間にか私よりずっと歳上になっていたのだ。

そしてある日、動かなくなった。

猫にしては長生きな方だと言われたけれど、年老いて

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猫がいる幸せ?

猫がいる幸せ?

寒くなってきました。
朝、ソファに座ると猫が走ってきます。
にゃあにゃあ言いながら膝に乗ります。
ぶぅぶぅ喉を鳴らしながら私の胸元に前脚をかけます。
暖かく柔らかいお腹をぴたりとくっつけます。
私の首を舐めようとします。
「やめて。」
首を動かして拒否します。
ガブッ。
首に痛い甘噛みをされます。いや甘くないよぅ。
首を舐められないように顎を引きます。
ぶぅぶぅ喉を鳴らしながら顔を押し込もうとして

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立方体の思い出 / 毎週ショートショートnote

立方体の思い出 / 毎週ショートショートnote

【段ボール】

急に学級閉鎖になった息子を迎えに急いで実家へ向かう。一人暮らしとなった父にあずけて大丈夫だったろうか。
「何この段ボール!」
玄関を開けると大小の段ボールが散乱している。
「ママだ!おかえりー!」
中くらいの段ボールから息子が出てきた。腰につけた紐を追いかけて「ねこ」も。
「これ全部ねこの家だよ。おじいちゃんと作ったんだ。」
「いや、作りすぎでしょ。」
段ボールを避けて進むと、奥の

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フシギドライバー / 毎週ショートショートnote

フシギドライバー / 毎週ショートショートnote

気がつくとタクシーは森の中を走っていた。
運転手を見ると昔の飼い猫がハンドルを握っている。
「ハッチ元気だった?」
猫のハッチは笑った。
「僕もう死んでるのに元気?だなんて。凛ちゃんは疲れているね。」
こんな夢を見るくらいにね。
「ハッチを撫でたら元気出るんだけどな。戻ってこられないの?」
ハッチはまた笑った。
「無理だよ。だけど、」
ハッチはタクシーを止めて振り向いた。
「凛ちゃんに出会う前に産

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神鯖時計② / 毎週ショートショートnote(裏お題)

神鯖時計② / 毎週ショートショートnote(裏お題)

艶やかで滑らか。ピンと立った耳。長く優雅な尻尾。黒と赤茶色の毛が混じる。
「美しいですねぇ。確かに利口そうだし。」
猫は棚の上に飛び乗ると毛繕いを始めた。
「可愛らしいだけでなく、正確な時間を鳴いて教えてくれるなんて。まさに神鯖時計。」
男の言葉に猫カフェの店主は首を傾げた。
「何の事です?」
「知ってるんですよ、すごいサバ猫がいるって。神レベルに可愛らしくて正確に時間を教えてくれるんでしょう。幾

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ぴえん充電 / #毎週ショートショートnote

ぴえん充電 / #毎週ショートショートnote

私の『ぴえん充電器』は自走式だ。私が『ぴえん』状態にあるのを感知した肌寒い時に近寄り、膝に乗る。

膝の上で本体を安定させると前方部を私の首元に近づけ、胸元に固定する。私の心が安定するようにゴロゴロという心地よい音を立てる。外装がふかふかなのも精神的安定を狙っての事だろう。少し温かく、少し重い。好感度を狙ったデザインの大きな瞳や耳。丸みのあるフォルム。長い尻尾。この『ぴえん充電器』を撫でる事で私は

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秘密屋 ー白雪ー

秘密屋 ー白雪ー

私の店からほんの少し離れた路地裏に『秘密屋』はあった。前回来た時と同じ黒い服を着た細い男が座っている。蜘蛛みたいだ。墓場まで持っていくような秘密を売っていると言う。そんな胡散臭い蜘蛛の巣にわざわざ引っかかりに行くなんて本当に馬鹿げてる。だけど、他に白雪ちゃんの最後の言葉を知る方法は思いつかなかった。白雪ちゃんが亡くなってから半年ほど経つが、家の中にその存在は感じるのに姿は見えないし夢にも出てきてく

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猫の日

猫の日

そろそろ洗濯物を取り込もうとベランダの窓を開けると庭に猫がいた。

「2月22日は猫の日なので特別に人間の言葉が話せるようになりました。」

茶トラ柄の猫は庭の真ん中にちょこんと座ってこう言った。私は少し手を止めただけで、すぐにまたパタパタと洗濯物を払う。こうしないと時々てんとう虫なんかが一緒に家に入ってきてしまうからだ。私が聞こえてないと思ったのか、茶トラはもう一度話しかけてきた。

「あれ?聞

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父の一人暮らし

父の一人暮らし

母が亡くなってからずっと父は一人で住んでいる。「お父さん、どう?ちゃんと食べてる?」と、ほぼ毎日電話してみるが「大丈夫だ、食べてるぞ。」と話す声は特に変わらない。寂しくないように子猫を飼ったり、庭で採れた野菜を食べたりしているらしい。元気そうなので安心していた。当たり前のことなのに、自分の親が老いるなどと思っていなかったのかも知れない。

ところが。

実家に行かなくてはならない用があり、尋ねてみ

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愛ってやつ

愛ってどんなカタチなのか、僕は知らない。それでもサクラへの気持ちは愛だと思う。

サクラに初めて会ったのは、やっぱり春だ。桜の木の下に座っている、その凛とした佇まいに美しさと可愛らしさがギュッと詰まっていて、もう一目惚れだった。あれから3ヶ月、一緒に住んでもサクラが僕のことを好きなのかはいつも不安になる。

無防備に寝ているサクラの寝顔が可愛らしくて、つい頭を撫ぜてしまったら怒られた。キスをしよう

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父と猫

父と猫

父に締め出された。いや、正確には家に入れてもらえない。

姉と母は買い物に出かけている。この時間は父と猫が留守番をしている筈だが、何度チャイムを押しても出てこない。ドアの前から電話してみたが、呼び出し音が虚しく響いているのが外まで聞こえる。しかし父が電話に出ようとする気配は全くない。

再度チャイムを連打しつつ、ポストから覗いていると、タッタッタッタッと軽やかな足取りで、猫がきた。

「にゃんこー

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僕と彼女と小さな娘

僕と彼女と小さな娘

とても嬉しそうな笑顔で、とても小さな靴を履いた小さな足で、辿々しくもしっかりと歩く。立つ事で文字通り視野が広がった事、自由に歩けるようになった事が本当に嬉しくて世界は初めて見る楽しそうなモノだらけだね。なんて饒舌に話す事はまだ出来ないけれど、1歳半の娘はご機嫌で庭を歩いている。片手に雑草を握り、声を上げて笑いながら歩いている。

僕は縁側に座ってみていた。まだ少し危なっかしいものの、すぐに転ばなく

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花嫁に悔いなし

花嫁に悔いなし

思えば、楽しい人生だった。たった30年だけど好きなように生きた。今死んでも残念とは思うけど悔いはない。

そんなに降ってはいないけれど、周囲に遮るものが無く、巻き込むような強風に雪が舞う。窓の外は真っ暗な闇と真っ白な吹雪が、すごい速さで左へ流れてゆく。綺麗だ。

お父さん、お母さん、最後まで自由すぎる娘でした。先に逝く事になってごめんなさい。楽しく生きたから、あまり悲しまないでね。って言っても無理

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猫の散歩と電車ごっこ

猫の散歩と電車ごっこ

風は強いけど天気は良いので庭に出ます。(子供達が)洗濯物を干していると猫が1匹道路を渡って行きました。真っ白で綺麗です。後ろ姿を見ると尻尾だけサバトラ模様でした。可愛い。首輪していたので飼い猫なのでしょうが、子供達の声がしていても動じず落ち着いて歩き去りました。今時は猫を外に出さないのが常識なのでしょうが、散歩する猫を見るとほっこりします。

実家の猫は首輪と紐をつけて外に出ます。普通にタッタカ走

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