noristan

編集者、ライター、校正者、ときどき翻訳者。幼い頃から移住が多く、放浪癖がついて「旅する…

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編集者、ライター、校正者、ときどき翻訳者。幼い頃から移住が多く、放浪癖がついて「旅するように生きたい」がモットーに。中央アジア〜ペルシャ辺りの民族文化が大好きです。◆姉妹サイト:https://notabene.hatenablog.com/

マガジン

  • 詩の世界

    詩のエチュード(練習曲)を書いています。

  • 旅の記憶

    国内外の旅日記を書きます。以下は掲載予定: 飛騨古川~高山(2016年) シンガポール(2017年) カンボジア・アンコールワット(2018年) 中国・西安~敦煌(2019年)

  • 芸術の雑想ノート

    映画、音楽、文学などに関する雑感を書いています。

  • コトバの灯

    cover image/自由学園明日館 Jiyugakuen Myonichikan <タイトル画について> 1931(昭和6)年、自由学園10周年記念に当時の生徒たちによって描かれた壁画。『旧約聖書』の「出エジプト記」の一節、「主は彼らに先だって進み、昼は雲の柱をもって導き、夜は火の柱をもって彼らを照らされた」というくだりが題材になっています。

最近の記事

【詩作】名無し草

光を知らない陰がある 花の咲かない花もある 誰の目に入ることなく 散るべき時を待つだけ 踏まれても踏まれても 名もなき葦はペンでありたい ここに生きた証として コトバだけを遺します

    • 【詩作】壁の向こうに

      嘆きの壁に向かって 嘆くがいい 噴火する憤怒も 刹那の報復も 力だけで 正義が勝つ かつての被害者が いま加害者になる 絶えることのない 憎しみの連鎖 そんなに 力が欲しいのか そんなに 悲しみが欲しいのか 歴史の流れを 追わなければ 到達し得ない 真実がある 民草の視座で 語らなければ 見えない世界がある 遠くで 涙を枯らす人々よ 見えざる友よ 新たな憎しみに 加担しないことが 非戦という 我が戦い方 愛という 生きものの叡智が 人類に 訪れる日が来るまで 殺伐と

      • 【詩作】海へ

        寄せては返すさざ波で 静かに私を満たす海 少しばかり恥じらうように 水面を小刻みに揺らしながら 淡く囁く波の音は 次第に熱を帯びてゆく やがて最も高みに達した波濤は 荒々しく私の洞穴を貫き 迸る真白な飛沫は 未知なる宇宙の奥へ―― 悶え叫ぶ呼吸が尽き果て 再び碧い静けさが訪れた時 大理石のような煌めきで あなたの水面は光り輝く ああ 海よ 私の愛しき海よ あなたの歓喜の汗と 愛に溢れた接吻を以て もう一度 私を慰めてください

        • 【訳詩】マクベスのTomorrow Speech

          明日も、明日も、また明日も 人生最後に記録されるその瞬間を目指して のろのろと日ごと歩みを進めてゆく。 我々が生きたあらゆる日々は 愚か者が塵芥に帰すまでの道を照らしただけだ。 消えろ、消えてしまえ、そんな短い蝋燭など! 人生は歩く影法師、惨めな役者だ。 舞台の上で見得を切ったり、おろおろしたり やがては見向きもされなくなる。 所詮はバカの話さ、怒り狂って騒がしいだけで あとは何の意味もない。 《原詩》 Tomorrow, and tomorrow, and tomorr

        【詩作】名無し草

        マガジン

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          17本
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          14本
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          8本
        • コトバの灯
          6本

        記事

          【詩作】忘れな草 -Forget-me-not-

          悲しめる母なる大地の子守歌を聴け 雛鳥たちは 虚空を舞う翼を求めて 春の訪れを 心待ちにさえずり 夏には 蒼穹の天を仰ぎながら 向日葵が お日さまと笑っている やがて 麦の穂の実る秋は過ぎ 真白に広がる雪の絨毯を 橇が走る頃 調子のよい 勇ましい軍靴の音は 地響きを立てて やって来た 踏みしめられた 黒い土の下に まことを知る 春の蕾は かたく口を閉ざされて とうとう 涙も枯れてしまった 胎盤と結ばれた臍の緒を 銃剣で引き裂かれ 母は 泣かぬ子を抱きしめて 人知れず 

          【詩作】忘れな草 -Forget-me-not-

          【食レポ】焼きビーフンに取り憑かれた人間の末路

          プロローグ「ケンミンの焼きビーフンに、ピーマン入れんといてやー」 大阪弁でしゃべる可愛げのないガキや婆さんやおばちゃん達やオッサンの独特のセリフ回しと、視聴者への媚びをことごとく排除した、ほとんどトラウマになるほどの不気味さで見る者を洗脳する、ケンミン食品株式会社のCM。 さんざんテレビに流されてきたこれらのCMにより、あまりの恐怖とダサさに震撼させられた元大阪人こと筆者は、子どもの頃に心底「ケンミンの焼きビーフン」が嫌いになったのでした。あの悪名高き「●通大阪」が手掛け

          【食レポ】焼きビーフンに取り憑かれた人間の末路

          【詩作】止まった季節

          詩作の集まりに積極的に顔を出すようになって約1年。職業柄、日頃は無味乾燥なお役所文書やら商業用の文章ばかり扱っているので、「言葉に対する感覚を麻痺させないために」という、いささか不純な動機から(?)せっせと通っているわけですが。 もちろん、詩は小さい頃から、手の届かない憧れの世界でした。「詩人になるか、そうでなければ、何にもならない」と言って神学校を脱走したヘッセの人生、かっこいいですねえ……。かくいう私も三十路をとうに過ぎ、そろそろ「もう自分の夢に遠慮するのはやめよう」と

          【詩作】止まった季節

          【詩作】名前たちの歌

          紙とペンがないので 歌にして 彼らは記憶した 一つひとつの名前に 刻まれる 生きた証を 在りし日の想い出を 忘れ去ることのないように かの地で 奪われた尊厳を 取り戻すために 看守の目を欺き 人知れず 唇を震わせ 嗚咽にかすれた声で 亡き人の名を呼ぶとき その旋律は 祖(おや)から授かりし 幾世紀もの歴史を流れて 永遠(とわ)へと響く ― dedicated to the film "The Song of Names" ―

          【詩作】名前たちの歌

          【詩作】小さき苗木 ―アッシジの聖クララに捧ぐ―

            一 サン・ダミアーノの小さな園に 兄弟の手で植えられた 一本の苗木 いつしか 慎ましやかに 大地に根を張り いくつも伸びた枝の先には 美しい花が咲いて 数多の実を結びました   二 貧しい食卓の周りには 豊かに燃えている心の 奇跡の火 パンの上に 刻まれた十字は 献身のしるし 降誕日に響きわたった 歌とオルガンの調べは 深き慰め   三 あなたは 大いなる光 この世の軛(くびき)から解き放たれし 自由な魂 姉妹たちの行く手を照らす 愛の炎

          【詩作】小さき苗木 ―アッシジの聖クララに捧ぐ―

          【随想】結局、女の敵は男ってこと? ―映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』が提起した歴史の新解釈―

          世にもドラマティックな女の戦いを、現代に再現する意義今をときめくアイルランドの女優、シアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)にどハマリして2年目。昨年日本で公開された映画『アンモナイトの目覚め(原題:Ammonite)』(2020年)を観て以来、彼女が出演している作品という作品を見まくってきました。 そして遅ればせながら、今回観たのが『ふたりの女王 メアリーとエリザベス(原題:Mary Queen of Scots)』(2018年)。シアーシャがスコットランド女王

          【随想】結局、女の敵は男ってこと? ―映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』が提起した歴史の新解釈―

          【詩作】愛の証

          畢竟、人は一人でこの世に生まれ、一人で去る。 この偉大なる命の理(ことわり)。 今、私がこの世に在るのは、愛したことを確かに証しするため。 だからこそ私は謳おう、 人生は素晴らしく、生きるに値するのだと。

          【詩作】愛の証

          【旅日記】実は悲哀に満ちた湘南の浜辺(1) ―プロローグ―

          湘南っていずこ?私は湘南が好き。悲しい歴史の記憶が、美しい風景とともに息づいているから――。 とまあ、少しばかりカッコよく書いてみましたが、筆者が神奈川県の湘南エリアに移住してきたのは、今からほんの5年前のこと。正真正銘のフェイク地元民です(苦笑) ひとくちに湘南といっても、該当する地域はかなり広範囲にわたります。 相模湾に面した「湘南」と呼ばれる一帯 「湘南で有名なのは何?」と聞かれたら……そうですね。サーフィンの聖地? サザンオールスターズのお膝元? 確かに、『勝

          【旅日記】実は悲哀に満ちた湘南の浜辺(1) ―プロローグ―

          【随想】秋の夜長にホラーな歌をあなたに…… ~「あわて床屋」をめぐる一考察~

          泣く子も黙る、日本一怖い童謡はなぜ書かれたのか?昭和を生きた日本人なら、誰もが一度は聴いた(かもしれない)童謡の、名曲中の名曲。 そう、「あわて床屋」です。作詞は北原白秋、作曲は山田耕筰。1923(大正12)年に発表されました。大正デモクラシーの華やかなりし時代に創られた、奇跡のような一編ですね(マジか)。 Wikipediaには、「カニの床屋と、客であるウサギのユーモラスなやりとりが面白おかしく描かれており、子供達にとって親しみのもてる内容」という記述があります。まあ、

          【随想】秋の夜長にホラーな歌をあなたに…… ~「あわて床屋」をめぐる一考察~

          【旅日記】カンボジアの旅(3)美しきクメールの伝統織物

          「勉強しまっせ」を狙いに行けば…… ~ローカルの市場巡り~普段から体を鍛えて、体力に自信のある人ならともかく、運動不足でメタボ予備軍の代表みたいな私(苦笑)が、午前中いっぱいアンコール遺跡群を満喫すると、マジで疲労困憊します。 そこで、午後から元気に旅の続きを楽しみたいなら、少し午睡をとるのが一番の近道。できれば、宿に戻って速攻バタンキュー(死語⁉)ではなく、ゆっくり湯舟に浸かって、疲れた筋肉をほぐしたいものです。なので、下着や簡単な着替え類は、やや多めに用意していった方が

          【旅日記】カンボジアの旅(3)美しきクメールの伝統織物

          【旅日記】カンボジアの旅(2)雨のアンコール・ワットもまたよろし

          潤いたっぷりの(?)アンコール・ワットさあ~シェムリアップ到着の翌朝から、もうメインディッシュに参りますよ。早朝3:45amに起床し、4:45amにはオプションで別途予約しておいた「アンコール・ワット半日ツアー」が始まります。 Ayaさんという、とても明るい感じの若い女性のガイドさんが、ロビーで待機してくれていました。政府公認のガイドで、黄色い制服を着ています。 雨の降りしきる中、ホテルから一行は、一路アンコール・ワットへ。入場券売り場に着いても、まだ辺りは未明のほの暗さ

          【旅日記】カンボジアの旅(2)雨のアンコール・ワットもまたよろし

          【旅日記】カンボジアの旅(1)ハノイ経由で、いざシェムリアップへ

          旅立ち新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって、はや2年。思うように外出さえもできない日々が続き、600日以上も経ちました。毎年、海外への旅を人生のルーティーンにしている人間からすると、もはや禁断症状が出て脳味噌がイカレてしまいそうな頃合い(?)ですが、心の鎮静剤的にもよろしいかと思い、この機に過去の旅を振り返って、旅日記にまとめてみようと思います。 さて今回は、2018年9月に訪ねた、カンボジアはアンコール・ワット。当時の仕事柄、9月にしかまとまった夏休みが取れな

          【旅日記】カンボジアの旅(1)ハノイ経由で、いざシェムリアップへ