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笑える子育て

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ワーママ的な雑記(19.11月内容に合わせてマガジンタイトルを変更しました)
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#エッセイ

80歳

80歳

たとえばの話だ。

私は今80歳で、夫に先立たれ、たった1人で暮らしている。1人で暮らす一軒家は、しーんと静まりかえって、途方もなく広い。娘は市内に家庭を持ち、息子は飛行機に乗らなければ会えないほど、遠く離れて暮らしている。

幸い、体はまだ元気だが、時々ひどく寂しい。この頃は、子ども達がまだ幼かった日を思い出す。ふわふわの頬、私を取り合う声、ぐちゃぐちゃに取り込まれた洗濯物、本読みの丸つけ。

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パンと夫婦

パンと夫婦

朝のキッチンは戦場だ。

「明日の朝は、ピザトーストをつくるよ」
昨晩、夫がにこにこしながら食パンを買って帰ってきた。私がLINEで頼んだのだ。

私たちの夫婦LINEは、パン、ヨーグルト、などの買い物リストとなっている。仕事帰り、文句も言わずに買ってきてくれるのはありがたい。

しかし、ピザトースト、作るのか…
一ミリも悪気なんてない。
だけど、朝は学童クラブのお弁当を作るので忙しい

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曇天の祝日を忘れない

曇天の祝日を忘れない

「ねえ…ぼくきのうおふろに入ってないんじゃない?」
夕方、息子が眉間に皺を寄せてやってきた。

前日は私の帰りが遅かったから、どんな風に過ごしていたのか詳しくは知らない。でも、うちの夫は真面目だし、熱もないのにお風呂に入らないということはまず無いだろう。

入ったと思うよ、どうしてそう思うの?と聞くと、息子はますます険しい表情でこう言った。

「だって、ふくがきのうとおんなじじゃない」
息子は

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世界一可愛い朝の起こし方

世界一可愛い朝の起こし方

日曜の朝、私はなかなかベッドから起き上がれない。急ぐ用事が無いのなら、気が済むまで寝ていたい。子どもたちも大きくなったので、結構粘れてしまう。6時、7時、8時…目は覚めるが、そのまま夢の世界に逆戻り。

そうすると、おなかがすいた!と息子が起こしにやってくる。

家の中の短い距離でも全力ダッシュする4歳児なので、本当は足音でとっくに気づいているけれど、目を瞑ったままじっと耐える。来る来る、来るぞ。

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バカと天才は紙一重だけど、息子は天才だと思う

バカと天才は紙一重だけど、息子は天才だと思う

世界中の親が思っていることだが、うちの息子は天才だと思う。今日はこんな歌を歌っていた。

「はっぱのおひめさまー はっぱのおひめさまー まま、はっぱのおひめさまってなにかわかる?むしだよ、むし。はっぱのおひめさまー」

頭の上からつま先まで、自分の世界に住んでいるのだ。私には、どうしてそんな思考回路になるのか、理解できない。

新しい箸はいったん鼻の穴にいれてみる
(だってどういうかたちかわ

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さあ、家に帰ろう

さあ、家に帰ろう

長いトンネルを抜けて、私たちは自宅へ向かう。長い長い1日のはじまり。空は雲ひとつなく晴れていて、息子も娘も口を開けて寝ている。

私は子供の寝入る横顔がすきだ。目が少しずつ細くなり、開き、また細くなり、ついには閉じる。頭がゆらゆらと揺れ、魚のようにぱく、と開いた口から寝息が聞こえてくる。

小さな手を握り、その温かさを感じながら私も目を閉じる。

「ねえ、まま。うんち。」

子どもの覚醒は早いし、

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仕事はカツ丼、育児はラーメン

仕事はカツ丼、育児はラーメン

「仕事と家庭の両立」なんて、こどもを産む前から軽々しく言うもんじゃない。キレイなママも、おしゃれなパパも、日常のほんの一部分を切り取ったニセモノだから。

ママは半泣きで雨の中子どもを迎えにいくし、パパは帰宅後スウェットに着替えて不機嫌にスマホを見ている。
私といえば、家に帰ったら仕事用のスカートが汚れないように脱いで、でも部屋着に着替える余裕がなくて、ストッキング姿でキッチンに立つことすらある。

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