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ありのす
2019年11月12日 14:38
たとえばの話だ。私は今80歳で、夫に先立たれ、たった1人で暮らしている。1人で暮らす一軒家は、しーんと静まりかえって、途方もなく広い。娘は市内に家庭を持ち、息子は飛行機に乗らなければ会えないほど、遠く離れて暮らしている。幸い、体はまだ元気だが、時々ひどく寂しい。この頃は、子ども達がまだ幼かった日を思い出す。ふわふわの頬、私を取り合う声、ぐちゃぐちゃに取り込まれた洗濯物、本読みの丸つけ。
2019年8月6日 07:01
朝のキッチンは戦場だ。「明日の朝は、ピザトーストをつくるよ」昨晩、夫がにこにこしながら食パンを買って帰ってきた。私がLINEで頼んだのだ。 私たちの夫婦LINEは、パン、ヨーグルト、などの買い物リストとなっている。仕事帰り、文句も言わずに買ってきてくれるのはありがたい。 しかし、ピザトースト、作るのか…一ミリも悪気なんてない。だけど、朝は学童クラブのお弁当を作るので忙しい
2019年7月16日 06:47
「ねえ…ぼくきのうおふろに入ってないんじゃない?」夕方、息子が眉間に皺を寄せてやってきた。 前日は私の帰りが遅かったから、どんな風に過ごしていたのか詳しくは知らない。でも、うちの夫は真面目だし、熱もないのにお風呂に入らないということはまず無いだろう。入ったと思うよ、どうしてそう思うの?と聞くと、息子はますます険しい表情でこう言った。「だって、ふくがきのうとおんなじじゃない」息子は
2019年7月9日 06:22
日曜の朝、私はなかなかベッドから起き上がれない。急ぐ用事が無いのなら、気が済むまで寝ていたい。子どもたちも大きくなったので、結構粘れてしまう。6時、7時、8時…目は覚めるが、そのまま夢の世界に逆戻り。そうすると、おなかがすいた!と息子が起こしにやってくる。家の中の短い距離でも全力ダッシュする4歳児なので、本当は足音でとっくに気づいているけれど、目を瞑ったままじっと耐える。来る来る、来るぞ。
2019年5月27日 22:19
世界中の親が思っていることだが、うちの息子は天才だと思う。今日はこんな歌を歌っていた。「はっぱのおひめさまー はっぱのおひめさまー まま、はっぱのおひめさまってなにかわかる?むしだよ、むし。はっぱのおひめさまー」頭の上からつま先まで、自分の世界に住んでいるのだ。私には、どうしてそんな思考回路になるのか、理解できない。新しい箸はいったん鼻の穴にいれてみる(だってどういうかたちかわ
2019年5月4日 09:17
長いトンネルを抜けて、私たちは自宅へ向かう。長い長い1日のはじまり。空は雲ひとつなく晴れていて、息子も娘も口を開けて寝ている。私は子供の寝入る横顔がすきだ。目が少しずつ細くなり、開き、また細くなり、ついには閉じる。頭がゆらゆらと揺れ、魚のようにぱく、と開いた口から寝息が聞こえてくる。小さな手を握り、その温かさを感じながら私も目を閉じる。「ねえ、まま。うんち。」子どもの覚醒は早いし、
2018年2月11日 21:10
「仕事と家庭の両立」なんて、こどもを産む前から軽々しく言うもんじゃない。キレイなママも、おしゃれなパパも、日常のほんの一部分を切り取ったニセモノだから。ママは半泣きで雨の中子どもを迎えにいくし、パパは帰宅後スウェットに着替えて不機嫌にスマホを見ている。私といえば、家に帰ったら仕事用のスカートが汚れないように脱いで、でも部屋着に着替える余裕がなくて、ストッキング姿でキッチンに立つことすらある。