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短編428字 | その一歩先

 大雨が降っている。私はひとり、傘をさして歩いている。視界が悪く、目の前には白一色しか見えない。
 いつも渡っている橋を渡り始めた。先を急ぎたいのだが、風が吹いて思うように前に進めない。身をかためながら、何とか歩き続けた。

 橋の半ばまで歩を進めた。するとそのとき、突然雨が止み、私は立ち止まった。足元を見た。私の進む一歩先の橋脚も橋桁も、きれいにそのまま真下に沈んでいることに気がついた。

 危なかった。雨が降り続いていたならば、私は落ちていたかもしれない。
 さて、どうしよう?このまま前に進むことはできない。辺りを見回した。ふだん通っていない橋がすぐとなりに見えた。その橋では、大勢の人が、何事もなかったように行き来している。

 仕方ない。となりに見えたその橋を初めて渡ってみようと思った。Uターンして、来た道を引き返し、私以外は誰もいない橋を渡り終えた。そして、となりの橋を渡り始めて、さっきまで私がいた橋のほうに視線を向けると、そこにはもう何もなかった。
 


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