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母親と赤ちゃんの分離の危険性、免疫力上がる科学的根拠

『Lancet EclinicalMedicine』に掲載された研究にて、新生児、特に小さすぎる(低出生体重児)または早すぎる(早産)で生まれた赤ちゃんは、出生後に両親と緊密に接触することが非常に重要であることが発表されました。


OECD(経済協力開発機構)、ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関によると、世界的に第1子出生時の母の平均年齢が上がっており、日本含む韓国、ギリシャなどは32歳以上といわれています*1。

それから日本における厚生労働省による発表において令和3年の第1子出生時の母の平均年齢が30.9、そして出産数が全体の3割が高齢出産による出産のため、早産と流産や難産が問題になっており、流産率は30~34歳までは15%、35歳~39歳は17~18%、40歳以上は25~30%という結果があります *2。

そんな中で、早産児の命を救う方法として、Kangaroo Mother Care、カンガルーケアが全面的に適用されることで、最大 125,000 人の赤ちゃんの命が救われる可能性があります。2003 年以来、世界保健機関によって低出生体重児に対して推奨されている科学的根拠に基づくケアです *3。

早産児や低出生体重児で生まれた赤ちゃんにとって、カンガルーケア(早期かつ長期にわたる親との肌と肌の触れ合い、完全母乳育児)は特に重要です。なぜなら、乳児死亡が 40% も減少し、低体温症が 70% 以上減少し、感染症への感染率が 65% 減少したことがわかったからです。

さらに敗血症の(細菌に感染し体内で繁殖することで組織や臓器が正常に働かなくなる生体反応)新生児を救う方法として、母乳または母乳の提供をカンガルーケアと組み合わせたものを行った場合、敗血症疑惑の赤ちゃんが 18%、敗血症関連死亡が 36%、全体の死亡が 25% と、それぞれ減少したことが医学雑誌の「eClinicalMedicine」に先日掲載された研究でわかりました *4。

よって、家族と小さな赤ちゃんが一定期間離れずに一緒にいられるようにするには、新生児ケアの提供方法を​​根本的に変える必要があるという結論が出されました。


母親と赤ちゃんの接触は命に関わるものです。特に新生児との接触は重要ですが、さらに子供の生涯の健康にも影響を与えます。

皆さんも聞いたことが思いますが「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンは子供の社会的感受性を高めます。母親が子供と接触することにより分泌され、乳児の脳の発達にとって最も重要とされています。例えば、感情や自己制御、感情のコントロールを強化することがわかっていることから、オキシトシンは脳の構造と機能に好影響を与えます *5。

以前の記事にて、母親と周囲の環境を整えることで母親の子育ての負担をいかに減らせるのかについて書きましたが、今回はそのワケを書いておきたいと思って数字を踏まえて記事にしてみました。

新生児と母親の接触にフォーカスを当てましたが、母親と子供の関わりにはその子供の一生の健康、それから社会性を育てるための重要な時間です。免疫システムや脳の成長が大きく変化するまでの期間は感染率は上がり、精神障害への可能性も上がります。

ということで、この記事で世間の育児に対する意識がどれだけ重要なのか考えるきっかけになったら嬉しいです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


参考文献:

元論文:
Rao SPN, Minckas N, Medvedev MM on behalf of the COVID-19 Small and Sick Newborn Care Collaborative Group, et al,Small and sick newborn care during the COVID-19 pandemic: global survey and thematic analysis of healthcare providers’ voices and experiences, BMJ Global Health 2021;6:e004347.

引用サイト:

*1
OECD Family Database, https://www.oecd.org/els/family/database.htm, SF2.3: Age of mothers at childbirth and age-specific fertility
*2
厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/

*3

*4

*5 
Scatliffe N, Casavant S, Vittner D, Cong X. Oxytocin and early parent-infant interactions: A systematic review. Int J Nurs Sci. 2019 Sep 12;6(4):445-453. doi: 10.1016/j.ijnss.2019.09.009. PMID: 31728399; PMCID: PMC6838998.

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