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国際法

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宇宙関連の国際法を3分で解説しています。
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記事一覧

3分でわかるISSの法律



ISS民営化?米国が、2025年に国際宇宙ステーションの予算を打ち切る方針であることを発表しました。
国際宇宙ステーション(International Space Station:ISS)は、地上約400kmの高さにある有人宇宙実験施設で、約90分で地球を1周する速度で周回しています。大きさはサッカーのフィールドくらいで、複数のモジュールから構成されています。大きく特徴的な太陽電池は、常に太陽

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国連スペースデブリ低減ガイドラインから学ぶルールメイキング

国連スペースデブリ低減ガイドラインから学ぶルールメイキング



スペースデブリロケットの打上げをはじめ、衛星コンステレーション、宇宙建築、宇宙葬等、様々な宇宙ビジネスが展開されている中、厄介なのが宇宙空間を漂う大量の衛星の部品に関する問題、いわゆるスペースデブリ(宇宙ごみ)問題です。
スペースデブリは、地球上から観測できる10cm以上のもので約2万個、1mm以下のものも含めると推定で5兆8,000億個以上あると言われています。その速度は秒速7〜8kmで、回

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日米交換公文から学ぶ決断力

日米交換公文から学ぶ決断力



アメリカの輸出規制緩和昨年の記事ですが、アメリカが宇宙開発の国際連携強化策として、同盟国への輸出規制を緩和する検討に入ったとのニュースが報じられました(なお、中国への輸出については厳しい規制を維持)。中国との関係は気になりますが、同盟国間の協力によって宇宙開発がより加速することが期待されそうです。
日本は、今でこそH-Ⅱロケットやイプシロン、きぼう、こうのとり等をはじめとした技術を提げて宇宙開

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3分でわかる国連スペースデブリ低減ガイドライン

3分でわかる国連スペースデブリ低減ガイドライン



今月10日、政府は、スペースデブリ(宇宙ごみ)を除去する技術の実用化に向けた財政支援を検討することを発表しました。エンジニアの方々からは様々な意見が出ており、デブリに関する「世間一般」の認識と現場の認識との間には少々差があるようにも思えます。

以前、デブリに関するルールメイキングから得られる学びを取り上げましたが、今回は、そもそも国連スペースデブリ低減ガイドラインはどのようなことを規定してい

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3分でわかる宇宙エレベーターの法律

3分でわかる宇宙エレベーターの法律



エンデュミオンの奇蹟「宇宙に行く」というフレーズを聞いたときに、どのような手段を思い浮かべるでしょうか?まず思い浮かべるのはロケットだと思いますが、他の選択肢として宇宙エレベーターという構想があります。「とある魔術の禁書目録」にも出てくる宇宙エレベーターには、どのような法律上の課題があるのでしょうか?

宇宙エレベーターとは宇宙エレベーターは、まさに地球と宇宙空間とを結ぶエレベーターです。日本

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3分でわかる宇宙資源をめぐる法律

3分でわかる宇宙資源をめぐる法律



水の発見宇宙には、レアメタルや水などの資源があるとされますが、昨日、小惑星リュウグウの地表から水成分が発見されたことが明らかになりました。水からは水素を生成できるため、将来的に液体燃料としての活用が期待されます。宇宙には他にもレアメタルなどの資源があるとされますが、今回は、宇宙資源をめぐる法律上の考え方を取り上げます。

宇宙資源は誰のものかそもそも宇宙資源を獲得できたとして、それは誰のものに

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3分でわかる宇宙食のルール

3分でわかる宇宙食のルール



Space Food X3月27日、JAXAと民間企業が連携して宇宙と地球の食料に関する課題解決を目指すという「Space Food X」プロジェクトが発表されました。参画メンバーを見るとまさにオールスター感があり、今後の展開が楽しみなプロジェクトとなっています。
ところで、地球上の食品に関しては食品衛生法をはじめとした様々なルールがありますが、宇宙食に関しては何かルールがあるのでしょうか?

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3分でわかるCOPUOS

3分でわかるCOPUOS



COPUOSとは?宇宙条約をはじめとする宇宙関連条約(宇宙条約、宇宙救助返還協定、宇宙損害責任条約、宇宙物体登録条約、月協定)は、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS : United Nation Committee on the Peaceful Use of Outer Space)で作成されました。COPUOSが国連で初めて召集されたのは1958年で、翌年に正式な委員会となり、20

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マンガで分かる宇宙法体系



宇宙法という名の法律はない「宇宙法」というと、どのようなイメージを持つでしょうか?
「法律」というただでさえよくわからないものに「宇宙」というもっとわからないものを掛け合わせているのだから、全く意味不明のものに違いないという印象を持たれるかもしれません。
実は「宇宙法」という名前の法律があるわけではなく、宇宙に関するルールを定めた条約や国連決議、声明文、法律などをいろいろまとめて「宇宙法」と呼

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マンガでわかる宇宙法のニーズ

マンガでわかる宇宙法のニーズ



宇宙ビジネス戦国時代だからこそ今日、国内外を問わず、ロケット打上げサービスや衛星データ活用といった、宇宙に関わる数々のサービスが生まれています。

もっとも、宇宙空間は誰のものでもないことや、個人単位を超えて国単位の話となり得ること、活用している技術が最先端であることといった事情から、今までは(地球上のビジネスでは)考えられてこなかった問題も多く生じてきます。
そうであればこそ、必要になるのは

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3分でわかる宇宙のサイバーセキュリティ

3分でわかる宇宙のサイバーセキュリティ



人工衛星に対するサイバー攻撃人工衛星は、通信やGPSはじめ広く民生技術としても活用されていますが、使い方によっては人の生命をも奪い得る能力を秘めています。
例えば、複数の衛星が同一地点に向けて電波を発すれば巨大な電子レンジが出来上がりますし(殺人兵器になり得ます)、GPSの信号に誤りを生じさせて自動運転車の事故を発生させることも可能でしょう。
そうだとすれば、人工衛星あるいはその設備をハッキン

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3分でわかるクロスウェーバー

3分でわかるクロスウェーバー



7月16日、JAXAシンポジウム2019 「JAXA Begins New Era」が開催されました。
パネルディスカッション「宇宙開発とサブカルチャー “宇宙と創造力のランデヴー”」の中で、「宇宙開発は性善説」という文脈で「クロスウェーバー」という用語が飛び交っていました。JAXA國中理事がわかりやすく解説されていましたが、具体的にはどういうことなのでしょうか?

クロスウェーバー=お互いに

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3分でわかる宇宙空間と犯罪

3分でわかる宇宙空間と犯罪



6月にISSから帰還したNASAの宇宙飛行士が、別居中・係争中の配偶者の銀行口座にISSから不正アクセスをした疑いで調査を受けている事件が話題になっています。
口座へのアクセス自体は認めているものの、「家計をチェックしただけ」であり、不正行為であることは否認しているようです。
いずれにしても真実は今後明らかになるとして、「宇宙空間での犯罪行為」ということで注目されています。

ISS政府間協定

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3分でわかるコスモス954事件

3分でわかるコスモス954事件



宇宙損害責任条約は本当に使われているのか人工衛星が地球上に落下した場合に備えたルールはいくつかあります。
しかし、そのようなルールが活用された事故はこれまで起きているのでしょうか?
今回は、宇宙損害責任条約が活用された唯一のケースであるコスモス954事件を取り上げます。

どんな事件か?ー放射能に汚染された人工衛星部品が散乱1978年1月24日、ソ連が登録する人工衛星「コスモス954」がカナダ

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