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【十二国記 感想】①〜

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十二国記シリーズ全部読んだ上で、感じたこと考えたことを書いています。特に天ついて、考え出したら止まりません。
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【十二国記 感想】 「白銀の壚 玄の月】に描かれたもの

#読書の秋2020 のための改稿 ネタバレあり 18年待ち続けた「十二国記」最新刊。発売から半年ほどたってやっと書けたものだ。それからさらに半年ほど過ぎて読み返してみると、興奮が醒めやらぬ感じでテンション高めだ。続き物の感想の一記事なので、別の前書きがあったがそれは削った。そのため始まりは少し唐突な感じになったが、書いた当時の気配を消さぬよう、最小限の手直しだけした。 十二国記「白銀の壚 玄の月」に描かれたもの 物語の縦糸と横糸まず、縦糸。これはもう、泰麒と李斎が戴国及

「十二国記」王様妄想、反省の書

先日私は、「十二国記」の予告されている短編集が待ち遠しすぎて布団の中で妄想フェーズに入り、十二国記の中の王様になってみたという中学二年生のような記事を書きました。 「十二国記」の王に おれはなる! とか言ってました。 この記事の中で私は、登極した直後は王がいない間に好き勝手をしていた悪辣家臣どもに手を焼くので、そいつらを紙切れ一枚で国官の地位と仙籍から除くことはできないだろうかという、お手軽人事整理を思いついたのでした。 詳しくは上の記事を読んで下さい。 それから一週間

「十二国記」妄想、再び発症 王座に登ってみた

「十二国記」の成分が足りないのです。 ちょうど2年前、2019年秋に出た最新刊の興奮もろもろを黙っておけずにnoteを始め、10を超える記事を書いたところで一応気が済んでいたのですが、そろそろもう我慢ができません。 もう「十二国記シリーズ」が出版されないと引導が渡されているならともかく、短編集が出ると予告されてそろそろ3年・・・前回18年待ったことを思えばまだまだですが、それでも待ち遠しさが募ってきました。 19年の最新刊購入時のプレゼントである短編1篇を先行で読めるサイト

【十二国記 感想】⑩ 短編「幽冥の岸」を読んで

李斎の心象風景は、いつも戴の厳冬の風景だ。 人々の暮らしを閉ざす白い吹雪。 荒れ果てた茶色の土地。 焼かれた家々や枯れた里木の黒。 その李斎が王と麒麟を国に取り戻し、泰麒を蓬山に託し、帰路の途中に報告に寄った慶で陽子主従に温かく迎えられ、そして桂桂に飛燕を亡くしたことを労わられ、彼女は初めて、意図せず、自分に悲しむことを許した。 初めて見も知らぬ景王を訪ねたときに李斎が目にした色、また今回の再訪で再び目に入ってきた慶国の国土の色・・・雲海を透かして見える翡翠のような翠、

【十二国記 感想】⑨ 大妄想後のどうでもいい「よくある疑問」

 GWが終わりました。元々「十二国記」について思う存分書きたくて始めたnoteですが、最近思うところあって毎日投稿に挑戦しています。昨日の投稿を振り返ると、明らかにGW終了にうろたえています。我ながら分かりやすいメンタルで笑いました。  毎日投稿しているとこうやって、本来書きたいことにスッと戻れる効果はあるのかな、とあまり性に合わないけれど、だからこそもう少し頑張ってみようと思います。  でないと、こんなしょうもないけど誰しも一度は思うであろう「十二国記よくある疑問」を、今

【十二国記 感想】⑧ 妄想 十二国記世界裏設定

 以前、麒麟通信だと思うのですが、新刊(白銀の壚 玄の月)発表を記念して、作者小野不由美先生の過去のインタビューを期間限定で読むことができました。(「波」に掲載された記事だとうろ覚え。ネットではもう読めません。)  その中で小野先生は、《この十二国記の世界は「魔性の子」の裏設定として作り上げたもの。その世界を舞台に書いてみたくて「月の影 影の海」が生まれた。》といったことをおっしゃっていたと思います。  結構しっかりした設定をなさっていた様子。だからこそ十二国記シリーズがこ

【十二国記 感想】⑦ 王は「神」ではないということ

ネタバレあります  OH MY GOD! などと寒いダジャレを思わず放つようなタイトルですが、そもそも十二国記の「神籍」「神獣」という言葉が曲者です。  それ以外「神」という言葉はそれほど出てこない気がします。麒麟を通じて王を選ぶのは「天」です。天勅を王と麒麟に授ける儀式で最初に刻まれる世の始まりにも、「天帝」が乱れた世を憂いてリセットし、「条理をもって天地を創世し綱紀をもってこれを開かん」とあります。  十二国記の頂点にあるのは、天もしくは天帝。神という言葉はあまり出て

【十二国記 感想】⑥ 急にうろたえ!園糸どうなる?!

ネタバレあります    先日投稿した感想⑤の暑苦しい長文の中で、「白銀の壚~」のラストシーンについて書きました。いいラストシーンだとやはり思います。  しかしその時に『戴史乍書』の直前の一文に少し引っかかったのです。 園糸が、眩しく輝かしい晩夏の光の中でお守り石を探す我が子に、その石は誰のため?と項梁を思いながらも、口にできないでいる場面。その最後の一文は 「——じきに来る戦乱の予兆など欠片もなく。」  この最後の一文は、次の『戴史乍書』に続く繋ぎとしてさらりと読ん

【十二国記 感想】⑤ 「白銀の壚 玄の月】に描かれたもの

ネタバレあります  粘着質な性格の故、天にばかり気を取られています。大局観はないんか?と、自分に言いたい。  そこで、タイトルに挙げた本書をどう感じたか書いておこうと思います。これだけ楽しませてもらって、それが筋というものです。  発刊からそろそろ半年、今さらかもしれませんが自分自身の言葉で、自分の感じたことを書きます。 物語の縦糸と横糸 まず、縦糸。これはもう、泰麒と李斎が戴国及び驍宗を救う道のり。  これがなければ始まりません。初読では、4巻目の残りページの厚さが5

【十二国記 感想】④ 天と王の意思と麒麟の角

ネタバレあります  ずっと天について考え続けて、まだ天です。  ここまであれこれ考えた結果、天は「王と麒麟しか見ない」と考えるようになりました。   「天下は仁道をもってこれを治むべし」と天綱は王に言います。けれど天は、自身で民に仁道の政治が行き渡っているか確認するわけではない。王が、「そうしているかどうか」しか見ないのです。民の様子は麒麟によって分かる。極論すれば、天は民そのものには関心がない。王と麒麟が天綱に従っているかどうかだけを問題視していると思うのです。  だか

【十二国記感想】③ 琅燦の誤算

 ネタバレあります  「白銀の壚 玄の月」を読み進めると、阿選については、「そーかそーか、じゃ、ま、しかたないやね。」となるわけですが、逆にますます分からないのが、琅燦です。そして阿選ではなく、琅燦に言いたくなります。  「何がしたいちゅうねん!」    「王と麒麟をめぐる天の摂理を知りたいが、誰も教えてくれないから試した。」  ここで琅燦の知りたい「天の摂理」とは、簡単にまとめると次の二つだと思います。  1、国には王がいなければならない。その王は麒麟を通じて天が

【十二国記感想】② 天を試す人々

ネタバレあります  「私はこの世界と王の関係に興味があるんだ。何が起こればこれはどうなるのか。それを知りたい。」  「王と麒麟をめぐる摂理に興味があるが、だれも答えは教えてくれないからね。知るためには試してみるしかないんだ。」 (「白銀の壚 玄の月」十三章6 琅燦の言葉)  天を試しています。  "琅燦お前は何やねん"問題もあるわけですが、そもそも十二国記の世界の人々は「天」をどうとらえているのでしょう。  仙となって朝廷に仕える人も含めてほとんどの人は、「何となく

【十二国記感想】① 天の仕組みを暴いてほしかった!

ネタバレあります  最新刊が出そろって4ヵ月弱。4冊を3回読み直して、勢い余ってそれまで手を出さなかったアニメまで見てしまいました。  けれどもまずは最新刊が出るまで。 「麒麟通信」の更新情報を求めて、ボタンがすり減るほど?ポチりながら、「黄昏の岸 暁の天」の続きがどうなるのか妄想に妄想を重ねました。当然ですね。(以下待ち遠しさのあまりつもりに積もった大外れの妄想が、今さらながら書き連ねてあります。さらっと笑ってやってください。)    "とにかく泰麒にはもう少し