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【Sesstion2】対話型アート鑑賞と鏑木清方の描いた美人に贈る花束のワークショップ

開催日時:2023年6月
場所:花やチセ(辻堂)
参加者:8名

2回目のWSは地域の美術館とタイアップを

 なんと、大変有難いことに辻堂の花やチセさんにて2回目のワークショップの開催が叶いました。
 1回目の開催を終えた時に、参加されたお客様が「このまま美術館へ行きたい!」とおっしゃっていたことが印象深く残っていたので、近い場所にある美術館とのタイアップを考えました。
 そこで、鎌倉にある「鎌倉市鏑木清方記念美術館」さんにご相談をして清方作品を扱わせていただくことになりました。色々な申請など初めてのことばかりでしたが美術館の方や関係者の皆様のお力とご理解を得て開催が叶ったのです。

 今回は定員を超える8名の方がお申し込みくださり、嬉しいことに1回目に続いて2回目のご参加という方もいらっしゃいました。
 鎌倉在住の方もいらっしゃって、鏑木清方記念美術館を既にご存知の方、初めてその存在を知る方とたくさんの視点が混ざった鑑賞会となりました。

◎アイスブレイク

 今回もアートカードを使用したのですが、選ぶカードのテーマを「もう一人の自分」に設定しました。完全オリジナルの手法です。
 みなさん、内なる気持ちと向き合って、心に潜む願望やこうありたいという理想とともに自己紹介をしてくださいました。
「私は色に意識が行くんです」と安井曾太郎の描いた青いドレスを着た女性を選ばれた方は、どことなく上品な雰囲気が絵の中に描かれている女性と重なっていました。

◎対話型アート鑑賞

1枚目はウィリアム・ホガース「当世風結婚2」を鑑賞。

「当世風結婚2」を鑑賞中。


2枚目は鏑木清方「嫁ぐ人」を鑑賞

「嫁ぐ人」を鑑賞中。

自分だけではどれほど時間を費やしても得られない発見がある

 印象的だったのは1枚目のウィリアム・ホガース「当世風結婚2」をお見せした時の第一声、「この人は猫の化身です」という一言。
 度肝を抜かれました。
 私はWS前に必ず作品研究を行い、気づくと2時間以上の時間を1枚の絵の鑑賞に費やしているのですが、自分一人で何時間かけて絵画を鑑賞しようとも、思いもよらない視点というのが飛び出してくることがとても愉快で痛快でした。
 やはり、人と話したり、意見交換をするということは自分の視野も広げてくれるのだと実感しましたし、対話型アート鑑賞の醍醐味を味わった瞬間でした。

洋画と日本画を比べて見えてくるもの

 一方で、日本画に取り組んだのは今回が初めてでしたが、お着物に詳しい方もいらっしゃって、ご自身の知識や経験からヒントを得て絵画の世界に入り込まれているような印象がありました。
 西洋画に比べると、日本画の方が人物の関係性や背景にあるストーリーが描きやすいのかもしれません。
 自分の知識や経験の引き出しと絵画の世界とを行ったり来たりしやすいのも日本画の良いところです。
 美しい清方の作品をたっぷりと味わうことができました。

◎実践としてのイメージワーク・鏑木清方の描いた美人へ贈る花束

 今回のイメージワークは「鏑木清方の描いた美人へ贈る花束」ということで、鏑木清方記念美術館で販売されている清方の美人画のポストカードを参加人数分用意しまして、見染めた一人を選び、その美人へ持たせる、あるいは贈る花束を制作していただきました。
 制作した花束はお持ちかえりいただくのですが、その横に清方の美人画も合わせて飾っていただき、アートと花の組み合わせをお家の中へ気軽に取り入れていただけなればいいなあと持ったことが、この企画の原点です。

今回もポイントとしては
1、自分の好きな花ではなく、美人が好きな花を選ぶ
2、描かれている人物をよく観察し、対話から始めること、人物のもつストーリーを描くこと

でした。

 チセさんが用意してくださったたくさんの種類のお花の中から自分で花を選んでいきます。
 洋風モダンなお花から、まだ開花前の芍薬など色もバラエティも豊かな花々が並んでいて、みなさんポストカードを片手に悩ましそうにされていました。お花を選んだ後は、束ね方のコツなどはチセさんが教えてくださいます。

こちらはご用意いただいたお花の一部です。もっともっとたくさんありました!
花の束ね方をチセさんが教えてくださいました。

 みなさん思い思いの美人をイメージした花束を制作されていました。

花束のイメージをお話しいただきました。

 なんと、チセさんお計らいで私もイメージワークに挑戦させていただくことに…!自分で考えたアートワークでしたが、なかなか難しいものでした。私は紫の着物からしっとりとした女性像を想像して、紫系の花を選びました。艶のある女っぽさに惚れた男が贈った花束…なんて大人な想像も繰り広げました。


 実は対話型鑑賞にはポートレート的な素材はあまり好まれないのですが、みなさん一生懸命にご自身が見初めた美人を凝視しながら(笑)対話してくださっていました。
 もっと詳しいお写真などは、Instagram @sakanatsuk1でも公開しております。

【イメージワークの感想】

「イメージを膨らませてその女性の毎日や暮らしぶりなどを色々と考えました」
「好きな花ではなくその絵を想像してつくることで価値観の幅が広がった」
「絵の中の人に贈る花束なのでいつもは選ばない花を気兼ねなく選べました」
「あえて自分の感覚と距離を置いて自分で選ぶという行為がとても面白かった」
「絵と花という新しいマッチングに楽しい時間を過ごせた」

【対話型鑑賞のご感想】

「日常にはない集中力と想像力を使って楽しく「美しいもの」に触れられました。日本画の女性がこんなに美しいと感じたことはなかった!」

「感じたままをありのままに話す機会がないので心を自由に広げられた気がする。一枚の絵でこんなに五感と気持ちを広げられるなんて驚きました 」

「美術館やアートに興味があっても楽しみ方が分かりませんでしたが、自由に楽しんでいいことにきづきました」

「日々慌ただしくて見過ごしてしまうものが多い中、じっくり絵画を鑑賞できる時間は貴重でした」
 
「こんな見方があるんだ、感じ方があるんだという意外性や面白さが目白押しでした」
 
「見えていたはずなのに、見えていないものがあって、いつも見たいものだけみている?だなあと気付かされた」

「自分の中の考え気持ちを発展させていくよい勉強法だと感じました」
 
「自分が感じたことを言語化することで自分がどこに注目して絵を見ているのかという部分を楽しめました」

忙しいミドルエイジのみなさんには短くとも息つくひと時を

 私にとって大きな気づきがたくさんあった2回目のWSも無事に終了しました。
 ご参加くださった方の中には育児されている方もいらっしゃり、みなさまお仕事と家庭との間で多忙な日々を過ごされていましたが、WSの時ばかりはゆっくりと絵画とお花に触れる非日常的な時間でリラックスしていただけたかなあと思いました。
 私のワークショップでは年齢別に目指すポイントをざっくりと定めています。
 ミドルエイジ世代の方々を対象とした時は、忙しい日常から少し解放された空間で自分自身と向きあう時間をもつこと、心を解放してリフレッシュしていただくことを目指しています。
 初対面の方と、予定調和のない会話となるとなかなか身構えてしまう方も多いと思いますが、目の前の絵画という共通の話題を共有する時間の中で肯定も否定もない世界を体験していただくと、日々の生活の中でもつい力の入ってしまう肩の力が少しだけ抜けるのではないかと思います。
 それぞれの内面が表された花束や言葉のひとつ、ひとつが尊重され、自分の美意識を肯定的に捉えられる、WSがそんなきっかけになれば嬉しいと考えています。

新しいご縁ができてライフステージの変化も楽しめるようになった

 WSへご参加してくださったことが縁となり、SNSで繋がった方もたくさんいらっしゃいます。
 私は湘南の方に引っ越してきて、未だに近所で飲みに行くような知り合いや友人はいないのですが、鎌倉や大船で別のWSに招いていただいたり、お茶に誘っていただいたりするようになりました。まだ実現できていない方もいらっしゃいます。
 チセさんとの出逢いも含めて、私の中で少しずつ変わっていく何かに胸が高鳴る日々です。
 30代になると、結婚や出産、育児などライフステージの変化の中で昔のように気軽に友人と付き合えないこともあるかと思います。独身の私もそう感じる時があります。
 しかし、こうして自分で何かを始めてみると、新しい出会いがあって退屈することはありません。新たな自分の居場所や、新たな自分との出会いが待っています。WSを通じて私は私の人生を生きている、そう思わせてくれる出逢いが広がりました。
 「また季節が変わる頃に開催しましょう」と言ってくださったチセさん。  
 紫の花束に入れ込んだ芍薬も数日後に見事な大輪の花を咲かせました。
 次回もまた、みなさんに楽しんでいただけるように精進したいと思いました。

来年の芍薬の季節もまた楽しみです。

*花やチセさんの詳細はあこちらをご覧ください
https://hanaya-cise.com/

*鎌倉市 鏑木清方記念美術館の詳細はこちらをご覧ください
http://www.kamakura-arts.or.jp/kaburaki/

Vol,3につづく

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