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【6】発達障害の私が翻訳者になって気ままな在宅で自由に生きるまで

3つのスキル。藤原和博さん提唱の100万分の1の人材になる方法

発達障害は普通のことが普通にできないので、何かとしんどいことが多いです。過集中でバランスが悪くても、学生時代ならけっこう乗り切れますが、大人になって仕事を初めると、組織のルールに馴染めなくて、二次障害を起こしやすくなります。学校の成績はよかったんだけど、働き出したらトラブル続出というパターンは、発達障害あるあるではないでしょうか。

基本的に世の中はリア充向けに作られているので、発達障害は最初からハンディを背負っており、非常に生きづらいわけです。その結果、「頭はいいんだけど仕事が続かなくてお金もない」状態になりがちです。私は、発達障害者はその過集中能力を生かしてサバイバルする術を身に着けておくべきだと強く思っています。

〜〜 このマガジンの目次です 〜〜

【1】はじめに 〜どんな人に向けて書いたのか〜
【2】発達障害が見つかったきっかけ…それは瞑想の先生
【3】発達障害が判明してからがスタート
【4】5年間のブランクから脱しようとするも、ブラックに落ちる
【5】プログラミングスクールの落ちこぼれ 
【6】3つのスキルをかける。100万分の1の人材になる方法
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【7】日本人が英語を使う仕事をするならTOEICは避けられない
【8】
翻訳者にとって語学力以外に重要なこと
【9】ツールの使いかたを学ぶには派遣はおすすめ
【10】メンタルのコントロール

かつての日本には、「職人肌」と呼ばれる、不器用だけど仕事の腕には自信があり、周囲から一目置かれている人が一定数いました。その中には発達障害の人もおそらくたくさんいたことでしょう。

確かに、昔はちょっとぼんやりしている人や、人間関係が苦手な人も、申し越し世の中に居場所があったように思います。今は、特に対人の仕事の場合、スマートにこなすことが求められます。かつてタバコ屋ではおばあさんが猫といっしょにのんびり座っていたりしたものですが、今のコンビニはテキパキとさまざまな業務を覚えて、こなす必要があります。

マルチタスクが苦手でマイペースな発達障害の人には、(たとえば)コンビニは辛い仕事です。じゃあどういうふうに生きていったらいいんだろうと考えてしまいますよね。私も、人間関係が苦手で、もがき苦しんだりして試行錯誤を重ねました。

おすすめしたいのは、何らかのジャンルで職人っぽく専門性を極めることです。しかも、いくつかの専門を持つことです。かつてはひとつの道を突き詰めればよかったのですが、社会が多様になり、変化の激しい今のような時代には、そのようなスキルを複数持つことで武装する必要があると思います。

今回は、元リクルートの藤原和博さんのインタビューを引用しながら、複数のスキルを掛け合わせることで「この人でなければ」と思われる人材になるための方法を検証してみます。コミュ力に期待できない発達障害者は、スキルを磨くことによって強みを研ぎ澄ませ、生き延びる道を切り開く必要があるからです。

「グローバルというのは英語が使えるということではありません。世界に広がるネット界の大海原の中でも、自分が情報を消費するのではなく、生産できるレアな存在になれるかどうかということなんです」

リクルートを経て、初の民間校長として杉並区立和田中学校校長になった教育改革実践家の藤原和博さんは、100分の1のスキルを3つ掛け合わせて100万分の1のレア人材になることを提案します。レア人材の定義は、「情報を消費するのではなく、生産できる存在になれること」。

100万分の1というと、オリンピック級の人材で、あまりにも遠い話ですが、100かける100かける100だと考えるとぐっと身近になります。おそらく、興味の範囲が狭く、特定のテーマにのめり込みやすい発達障害の人にとって、オールラウンドなジェネラリストを目指すより向いているように思います。

ここから、ビジネス・ブレークスルー大学で開催された「稼ぐ人の武器=プロフェッショナルシンキング」という講演を引用しながらレア人材になるための考え方を説明します。ビジネスマン向けの講演ですが、発達障害にとって大切な経済的な自立に役立つヒントが詰まっています。

「カギは『希少性、需給関係からは逃れられない」

藤原さんがここで指摘しているのは、なぜこれほど人によって時給換算した報酬が違うのかということ。コンビニのアルバイトから、高給のコンサルタントまで、日本の一般的な仕事を時給に換算して、比較すると、約800円から8万円まで、実に100倍も違いがあります。

その違いは何なのか、運や年齢、技術力の差だけでは100倍の違いにはならないのではないか、ということを追求していき、最終的な結論である、「レア人材だから」に着地します。

「情報処理力よりも情報編集力が大事になっていきます」

もはやGoogleが何でも答えてくれるため、暗記は必要ありません。でも、どうすれば欲しい答えにたどり着けるかという道筋は知っておかねばなりません。そのためには、点と点をつなぐ編集力が問われます。

ちなみに、あるテーマについて1万時間くらい集中すれば、100人に一人の人材になれるそうです。過集中しがちな発達障害には朗報?です。

「例えばある会社での経理の仕事でもいいですし、ある会社での販売の仕事、営業の仕事でもいいんですが、どんな仕事でも1万時間訓練しますと人間っていうのは大体マスターするんですよ。人間の脳はそうなってるんですよ。

1万時間ですね。これは世界中でそういう研究があるんですけども、1万時間やり続ければ人間は1つのことをマスターし、その分野において、100人に1人ぐらいにはなれる、と」

1つ目のテーマで100人に一人になったら、次はあまりかけ離れていない、やや隣接したテーマでさらに100人に一人の人材になれるようにします。2つを達成すれば1万人に一人になれます。

面白いのはこの次です。

左足(1つ目)と右足(2つ目)、この両方の軸足を固めますよね。踏み出しますね、この踏み出すところはできたら遠目のほうがいいです。

3つ目のテーマについては、できるだけ遠いところに思いっきり踏み出すほうがいいそうです。そうすれば、3つの点をつないだ総面積がおおきくなります。

総面積が大きい=サバイバル力が高いといえそうです。

この先訪れるはずの大きな社会の変化についても、総面積が広いほど、さまざな状況に対応できる可能性も高まります。

ちなみに私は、「編集したり文章を書きたかった」ので編集の道に進みました(1つ目)。カリスマ編集者はどういう人なのか、天才的な著者というのはどんな人なのか、それなりに知っていますし、会ったことがあります。そして、自分が決してそのようなタイプではないことも…。

自分は編集者として決定的にアウトだと痛感したのが、「コミュ障」です。すぐれた編集者というのは、「人たらし」であり、強烈なカリスマ性と、人間関係における直感力を持っています。これは、発達障害者の対極にいる人たちかもしれません。

とはいえ、編集者として求められる能力は人間関係以外にもあります。たとえば細かい文字校正や緻密で丁寧なプロジェクト進行などは、ディテールに意識が向きがちな発達障害の得意分野です。そんなわけで、それなりに通用する編集者として、100分の1の条件を満たしました。

2つ目の100分の1は英語です。日本語力が問われる編集の世界では、英語力も兼ね備えている人はあまり多くありません。そして、翻訳の世界には、日本語の編集力を持った人はほとんどいません。実は翻訳も、最終的には日本語にするので、実は日本語力が問われる分野なのです。

最後の3つ目の専門は、私の場合はプログラミングでした。プログラマーと名乗ることもできない最低レベルのプログラミングの知識ですが、翻訳の世界は文系の人が多いので、プログラミングの知識に関して言えば100分の1のスキルだったと、かろうじて言えるのではないかと思います。

この3つのポイントが合ったからこそ、素人の私が翻訳の世界に入っていくことができたのだと思います。

〜〜 このマガジンの目次です 〜〜

【1】はじめに 〜どんな人に向けて書いたのか〜
【2】発達障害が見つかったきっかけ…それは瞑想の先生
【3】発達障害が判明してからがスタート
【4】5年間のブランクから脱しようとするも、ブラックに落ちる
【5】プログラミングスクールの落ちこぼれ 
【6】3つのスキルをかける。100万分の1の人材になる方法
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【7】
日本人が英語を使う仕事をするならTOEICは避けられない
【8】
翻訳者にとって語学力以外に重要なこと
【9】ツールの使いかたを学ぶには派遣はおすすめ
【10】メンタルのコントロール

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