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本の話

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最近読んだり、むかしから好きな本の感想や書評、あとはpodcastで話した本の紹介をしているので、よかったら読んでみてください。
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記事一覧

水中で息をする練習/永井玲衣『水中の哲学者たち』

水中で息をする練習/永井玲衣『水中の哲学者たち』

わからないことって、じっさい、恥ずかしい。

例えばこういうとき

「ジム・ジャームッシュ監督の映画が好きなんです」と僕は言った。
「ふむふむ」映画好きの人がにやりと呟いた。
「ジャームッシュの中でも、結局最新作の『デッド・ドント・ダイ』が傑作ですよね。あれは革命的だった。わかるなー」
僕はやばい、見てない。と思った。しかし、
「ですよねー」と僕は言った。

みたいな。
ジャームッシュが好きと言っ

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【Podcast】「視線」と「名付け」【第170回芥川賞まとめ】

【Podcast】「視線」と「名付け」【第170回芥川賞まとめ】

幸せな人しかたどり着けない場所では3回に渡って第170回芥川賞について話してきました。
#2 九段理江「東京都同情塔」の話
#3 安堂ホセ「迷彩色の男」と川野芽生「Blue」の話
#4 小砂川チト「猿の戴冠式」と三木三奈「アイスネルワイゼン」の話

全体を通して、私たちの話を簡単に、選評みたいにまとめると、「視線」と「名付け」というテーマが裏拍として流れているような選考でした。

そんなつな

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眠れない夜の、ひとりを知るおまじない / ジュンパ・ラヒリ『わたしのいるところ』

眠れない夜の、ひとりを知るおまじない / ジュンパ・ラヒリ『わたしのいるところ』

ジュンパ・ラヒリという作家の『わたしのいるところ』という小説の話をします。とても好きな本です。

新潮社クレスト・ブックスから出版されていて、
訳者は中嶋浩郎です。

「眠れない夜の、ひとりを知るおまじない」

小説や本のことが好きな人には、得てして「お守りみたいな本」があるのではないでしょうか。

例えば僕にとってのお守りのような本は、ミラン・クンデラという作家の『存在の耐えられない軽さ』だった

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【Podcast】#2 九段理江「東京都同情塔」の話

【Podcast】#2 九段理江「東京都同情塔」の話

今回のPodcastでは、第170回芥川賞記念ということで、受賞作と候補作について三回にわけて話しました。

その第一回は受賞作の「東京都同情塔」について話しました。

作品の感想についてはここにも書くより、話し言葉として話していること、そしてその雰囲気のほうが多くが伝わると思うので、ぜひ聴いてみてほしいです。

と、言ったときに、それは、その言葉は、こういう形しか取らない意味を持って、それを伝え

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