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COVID-19

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新型コロナウイルス関連の記事をまとめました
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記事一覧

新型コロナウイルス感染症の重症度分類の問題点

 まず東京都の約1年間の新規陽性者数、死亡者数、重症者数をお示しします。このグラフを見て不思議に思いませんか?

 デルタ株優勢期(第5波)とオミクロン株優勢期(第6波)を比較すると、新規陽性者数は後者の期間で圧倒的に多く、そのために重症化しにくいと言われるオミクロン株でも死亡者数が多くなっています。その割には重症者数が少なすぎるように見えませんか?

 これは、今の重症度分類が重症度を正確に反映

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日本の感染者数が世界最多?

日本の感染者数が世界最多?

日本の感染者数が世界最多?マスクしてるのに?マスクも行動抑制もない国の方がどうして少ないの?にわかには信じられなかったので、データを集めました。

最初の図を見てください。ここ1年の人口100万人あたりの新規感染者数と死亡者数を、日本とフランスで比較したものです。

確かに瞬間的には(上のグラフの右端)、日本の新規感染者数はフランスより多くなっていますが、オミクロン株が優勢になったここ7ヶ月を比べ

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東京都のここ1週間の年代別新規陽性者数の動向       

東京都のここ1週間の年代別新規陽性者数の動向       

東京都のここ1週間の年代別新規陽性者数のグラフです(下図の左)。7日移動平均を自然対数にしてプロットし、直線回帰していますが、傾きが増加率を表していると考えてください。ここ1週間の増加がそれ以前に比べて大きいので解析してみました。データは東京都新型コロナウィルス感染症対策サイトからダウンロードして、解析しています。

20歳代と10歳代の増加が大きく、30歳代、40歳代、50歳代の増加がそれに続き

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小児におけるLong-COVIDについてLong-COVID in children and adolescents: a systematic review and meta-analyses

小児におけるLong-COVIDについてLong-COVID in children and adolescents: a systematic review and meta-analyses

小児における新型コロナウイルス感染症の長期的な影響(Long-COVID)について懸念しておりましたが、NatureのScientific Reportsにシステマティックレビューの論文が掲載されたのでご紹介します。

Long-COVIDはまだ定義も確定していない概念ですが、今回ご紹介する論文では、National Institute for Health and Care Excellence

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東京都の新規陽性者数の動向 4月以降の年代別解析

東京都の新規陽性者数の動向 4月以降の年代別解析

4月以降の新規陽性者数の年代別データ

4月以降、75日間の新規陽性者数の年代別移動平均を示します。今回75日としたのは、デルタ株の流行期と比較するためです。

20歳代で増加→すぐに10歳代増加→少し遅れて10歳未満のピーク→その後10歳未満も含めゆっくり減少というパターンだったのが、ここ1-2週間は、20歳代までの若年者の割合が多いままに、すべての世代で横ばい(もしかしたら増加)となっています

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東京都の新型コロナウイルス感染症 新規陽性者数の動向 何が起こっているんだろう? 

東京都の新型コロナウイルス感染症 新規陽性者数の動向 何が起こっているんだろう? 

東京の新規陽性者数の動向です。年度末~年度初め、GWにより一時的な増加はありますが、ゆるやかな減少傾向です。ここから後はただの仮説、あるいは問題提起といってもいいかもしれません。今日は、さきほど厚労科研の報告書を提出したところで頭がはたらきませんので、だらだらと書きます。適当に読み流してください。

右の図は1月以降の東京都の新規陽性者数、7日移動平均です。左は現時点では仮説です。厳密に計算したわ

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ノババックス製のワクチン

ノババックス製のワクチン

先日、日本でもノババックス製のタンパクワクチンが承認された。それについて気になる人も多いと思うので、免疫学的な側面からこの製剤を見てみよう。

海外では先んじて承認されていたので、以前から資料は見れたのだが、日本でもPMDAに審査結果報告書が公開されていた(https://www.pmda.go.jp/drugs/2022/P20220415001/400256000_30400AMX00192_

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イスラエルにおけるコミナティ4回接種の効果について NEJMの論文から

イスラエルにおけるコミナティ4回接種の効果について NEJMの論文から

ファイザーのmRNAワクチン、コミナティの4回接種の効果についての論文です。以下、結果だけを要約してわかりやすく書きました。

感染予防効果は短期間で減弱

・4回接種後4週間の時点で、感染率は3回投与群の1/2 (171 cases per 100,000 person-days vs 340 cases per 100,000 person-days)
・その後は6~8週と経過するにつれ、3回

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mRNAの話 新型コロナウイルスワクチンに関連して

mRNAの話 新型コロナウイルスワクチンに関連して

はじめに

 最近、小児のワクチンについての質問が増えています。外来で新型コロナウイルスワクチンの説明をするのですが、mRNAとは何かをご存じでない方が多いです。どういうものか知らないのに、「遺伝子が組み換えられる」などと信じている方もいらっしゃいます。もしかしたら、知らないから怖いのかもしれません。そこで、今さらですがmRNAの話。わかりやすくするため、かなりはしょっていますが、ご容赦を。

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東京都の新型コロナウイルス感染症の動向アップデート 新型コロナウイルス感染症はインフルエンザなみになったのか?

東京都の新型コロナウイルス感染症の動向アップデート 新型コロナウイルス感染症はインフルエンザなみになったのか?

2022年1月以降の東京都の新規陽性者数の動向(4/9 アップデート)

 2022年1月以降の東京都の新規陽性者数の動向です。今日はその他に、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザ並みになったかについても少し書きます。

 新規陽性者の7日移動平均のグラフです。新規陽性者数が横ばい(あるいはわずかに増加傾向)であることがわかります。年代別にみると、どうでしょうか。10歳未満は減ったのでしょうか

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東京都の新規陽性者数の動向 第7波? 今後注視すべきこと

東京都の新規陽性者数の動向 第7波? 今後注視すべきこと

 1/1~3/31の東京都の新規陽性者数の動向です。図の左は1/1~3/31の東京都の新規陽性者数の7日移動平均、右が年代別新規陽性者の移動平均(年代別人口で標準化)のグラフです。年初の増加よりはゆっくりですが、増加傾向が始まっています。

 次のグラフで、ここ10日ほどの詳細を見てみましょう。グラフはここ11日間の年代別新規陽性者の変化です。高齢者の陽性者がまだ少ないので、右に0~50代のグラフ

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東京都の新規陽性者数の動向 年代グループによる傾向の違い

東京都の新規陽性者数の動向 年代グループによる傾向の違い

 今年に入ってから今週末までの、東京都新規陽性者の動向です。左のグラフように、ゆっくりですが減少傾向です。前の記事にも書きましたが、感染力の増加、再感染、子ども→成人への感染の増加などが影響しています。真ん中と右は年代別のグラフです。右はY軸が対数目盛です。これまでと同様、10歳未満が多く、また減少が遅いのがわかります。

 次の図をみると減少の仕方によって、3つの年代グループに分けられることがわ

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3回目のワクチンは遅かったのか? 東京都の新規陽性者数の動向 2022/1~

3回目のワクチンは遅かったのか? 東京都の新規陽性者数の動向 2022/1~

 今日は、東京都の新規陽性者数の動向をお示しするとともに、オミクロン株の流行による第6波対策の問題点について考えてみたいと思います。

2022年1月以降の新規陽背者数の動向

 まず、図をお示しします。図1の左のグラフを見てください。低下傾向にありますが、他国と同様に低下速度はゆっくりです。子ども→成人の感染が増えたこと、不顕性感染者や軽症者が増えたこと、ワクチンの感染予防効果が低下していること

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オミクロン株に対するT細胞応答 ー 抗CD20モノクローナル抗体で治療中の多発性硬化症患者での研究 ー

オミクロン株に対するT細胞応答 ー 抗CD20モノクローナル抗体で治療中の多発性硬化症患者での研究 ー

 今日はこの論文をご紹介します。少し免疫について復習したあと、論文の解説をいたします。この論文から得られるいちばん重要なメッセージは、抗体が作られない状況でも、ワクチンによって新型コロナウイルスと戦うT細胞ができるということです。しかも、抗体より長続きするようです。

抗体が減少すると?

 ワクチンによって作られた中和抗体が血液中にたくさんあると、侵入してきたウイルスが抗体により排除されるため感

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