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8.人物・伝記

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書評:童門冬二『小説 上杉鷹山』

書評:童門冬二『小説 上杉鷹山』

徳を以て治むるとは?今回ご紹介するのは、童門冬二『小説 上杉鷹山』という伝記小説。

上杉鷹山は江戸中期に財政破綻の危機に瀕した米沢藩の再建を成した偉大な藩主として知られる人物。
明治期に内村鑑三が『代表的日本人』の中で、偉大な日本人の1人として取り上げ功績を讃えた人物でもある。

*内村鑑三『代表的日本人』は過去投稿にて紹介済。
*かつてジョン・F・ケネディは、日本人記者を相手にした記者会見で「

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書評:内村鑑三『代表的日本人』

書評:内村鑑三『代表的日本人』

西洋的価値に暁通した文化人が選んだ日本人とは?
内村鑑三『代表的日本人』は、明治期のキリスト教徒として名高い内村鑑三が、日本の歴史上の偉人を諸外国、就中西欧列強に向けて紹介せんとして著したものである。

現代でも多くの読者を魅了して止まない名著であり、読まれたことのある方も多いのではないだろうか。かく言う私にとっても、本著は座右の書の1つに数えられる。

自身の怠惰や環境の不幸に耐えかねるような弱

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書評:加藤文元『ガロア - 天才数学者の生涯』

書評:加藤文元『ガロア - 天才数学者の生涯』

数学史に偉大な功績を遺した天才数学者の数奇な人生今回ご紹介するのは、加藤文元『ガロア - 天才数学者の生涯』という著作。

天才の名を欲しいままにする人物というのは、歴史上そういるものではありません。数学者ガロアは、その中に間違いなく数えられる人物だと言えるのではないだろうか。

しかしながら、そんな才能溢れた彼の生涯は、順風満帆どころかおよそ不幸の連続であり、その死すら悲劇的なものであった。数学

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書評:北方謙三『楠木正成』

歴史小説家による楠木正成の半生の物語
皆様には好きな歴史上の人物などいるだろうか。
私の場合日本史上では、上杉鷹山、及びこの楠木正成、いわゆる大楠公だ。

私はあまり歴史小説は読まないほうであるが、北方流の楠木正成像というものに興味を持ったため、本作を手にしてみた。

楠木正成は、鎌倉末期から南北朝時代にかけて各地に出現した「悪党」と呼ばれる種類の人物の一人である。「悪党」とは、幕府の支配下にある

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