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「今日は何の日?今日も本の日!」 逢坂肇と流泉書房の仲間たち

「自分たちが楽しくないことはお客様も楽しめない。仕事の熱量は思っている以上に伝わっているのだ。」



「今日は何の日?今日も本の日!」 逢坂肇と流泉書房の仲間たち



今までありそうでなかった、本のオススメ、本屋さんの本です。


本屋の店頭にある黒板に、本にまつわる「今日は何の日」を書き、本の紹介をしている神戸市垂水区にある「流泉書房」さん。


たとえば


1月10日の「今日は何の日?」ですと、小説の中ではこんな日だったんですね。


明治38年1月10日、二弦琴の御師匠さんの家に行った猫の「吾輩」は、三毛子が亡くなったことを知る(小説『吾輩は猫である』第二話より)。

|『吾輩は猫である』(夏目漱石/角川文庫/1989)


こんな感じで1月1日~12月31日まで、物語であったり、本の著者であったり、マンガであったり、あるいは歴史であったり、トリビアであったり、流泉書房の書店員さんがオススメする本で「今日が何の日」だったのかを教えてくれます。


流泉書房の書店員・逢坂肇(おおさかはじめ)さんのことを、社長の大橋崇博さんが本の巻末でこう語っています。


逢坂はただ本に詳しいだけではなくて、お客様とお話しして、聞いて、お客様にオススメの本をご案内するのがうまい。


たしかに


これほど本の興味深い「事件」や「事象」や「作家の生誕」などが次々に出てくると、読んでいて楽しいだけでなく感心してしまいます。


ほんの少しだけですが、読んでいて目に留まった「今日は何の日」を以下に紹介させていただきますね。


3月15日

1961年、『宴のあと』でプライバシーを侵害されたとして有田八郎が三島由紀夫を訴える。

|日本初のプライバシー侵害訴訟。『宴のあと』(三島由紀夫/新潮文庫/2020)

4月5日

1943年、サン=テグジュペリの小説『星の王子さま』の初版がニューヨークで刊行される。

|2005年1月22日に著作権保護期間が満了となり、さまざまな出版社から新訳が刊行された。新訳を何種類か読んだが、やっぱり最初に出た岩波書店の内藤訳が一番好きだ。

『星の王子さま オリジナル版』(サン=テグジュペリ著 内藤 濯訳/岩波書店/2000)

5月17日

1951(昭和26)年、金田一耕助が修善寺のホテル松籟荘に投宿(横溝正史『女王蜂』より)。

|何回か横溝ネタを投稿していたら、作品の聖地巡礼をされている横溝マニアの方が来店された。うちの店の文庫棚に横溝作品が全点並んでいることに興奮されていた。

『女王蜂』(横溝正史/角川文庫/1980)

8月30日

2122年、ドラえもん、ネズミに耳をかじられる。

|そして黄色かったドラえもんは青くなる。

『ドラえもん 11』(藤子・F・不二雄/てんとう虫コミックス/1989)

11月17日

宇宙世紀0059年、シャア・アズナブル生まれる。

|シャアの生年月日は諸説あり(たとえば安彦良和『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN 24 特別編』では宇宙世紀0057年生まれ)。ここではWikipediaの記述を採った。

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(富野由悠季/角川スニーカー文庫/1988)

12月1日

1936年、怪人二十面相と明智小五郎が初めて対面。

|『怪人二十面相』(江戸川乱歩/ポプラ文庫/2008)

12月9日

1916年、夏目漱石が『明暗』執筆中に自宅で死去。

|『明暗』(夏目漱石/新潮文庫/2010)


これらは本書のごくごく一部であり、本書の「本の紹介」は多種多様で、出典も記載されていますので、興味のある本はお求めやすいです。


それだけでなく、本や本屋が好きな方でしたら、本屋の1日がエッセイとして綴られる、《書店員9to5》が楽しい読み物となっております。


町の本屋が日々なくなってきている今、町の本屋はどんどんおもしろくなってきていると感じています。


今や「本」のソムリエのように、くわしい書店員さんが全国にたくさんいるので、書店員さんに本のことを訊ねてみると本当に求めている「本の世界」へと誘ってくれます。流泉書房さんもその書店の1つです。


本屋で選ぶだけだった本が、今や付加価値としていろんな発見や情報や本との出会いにつながる場になっているんですね。


流泉書房さんは、外観や店の中はどこにでもある町の本屋さんなんですが、本が好きなオーラが漂っている本屋だと感じます。


黒板の「今日は何の日」や、「本日のオススメ本」があったり、本が好きなスタッフの空気感が、何度も足を運びたくなる感覚にさせてくれるのです。


逢坂さんが「まえがき」で語っていること。その話に共感しました。


それが


仕事全般に通じる仕事のやり方。長く続ける方法なのであります。


ここまでお気づきの通り、うちの店の「今日は何の日?」は、基本的にウィキペディアからネタを拾っている。

そう、誰でもできることなのだ。

それがなぜ新聞から取材され、本を出版するまでになったのか。

それは、「とりあえずやり始めた」ことでも、試行錯誤を重ねある程度の期間、「楽しみながらやり続けた」からだと思っている。

自分たちが楽しくないことはお客様も楽しめない。

仕事の熱量は思っている以上に伝わっているのだ。

何事も失敗を恐れずに、とりあえずやってみるのはいかがだろうか?

もちろん、楽しみながら。


流泉書房さんは、垂水センター街という商店街の中にあるのですが、とてもレトロな雰囲気で、歩いていると、なんともいえない良い感じの癒し空間になっています。


ぜひ商店街を歩いて、ときめく空気を吸ってから、本の世界へと入ってみてはいかがでしょうか。



【出典】

「今日は何の日?今日も本の日!」 逢坂肇と流泉書房の仲間たち 苦楽堂


P.S.

流泉書房さんでこの本をお買い上げの方には、限定小冊子「苦楽堂だより」が付いています。流泉書房・書店員の黒木さんのお話が掲載されています。本屋が好きな方には興味深い内容です。楽しく読ませていただきました。ネットショップもあります。サイン本も充実していますよ。


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