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モーニング・ルーティーン【小説・750文字程度】

   0

 ひかる気持ちとともに。

   1

 朝。目覚ましよりも先に目が覚めて、アラームが鳴らないようにリセットする。

 隣で寝ている息子がふとんを蹴っ飛ばしているので肌がけをかけてやり、そのまましばらく天井を見つめる。見慣れた木目に、人の顔のように見える場所を探しながら、頭が冴えてくるのを待つ。

   2

 むっくりと起き上がり、先に起きている妻にあいさつをする。おはよう。おはよう。それから、うがいをしに洗面所へ行く。

(それにしても鏡に映った寝起きの顔のぼさぼさ加減は、どうだろう。みんなそれぞれのぼさぼさ顔と朝は向き合っているに違いない)

   3

 口がさっぱりしたところで、朝ごはんの支度をする。深めの器にコーンフレークを入れ、はちみつをたらし、牛乳をかけて食べる。

(いただきます、は、声に出すときと心の中で唱えるときと、両方ある)

   4

 食べ終えたら珈琲を淹れる。電気ケトルで沸騰直前までお湯をあたため、そのお湯でカップ等をあたためてからペーパーフィルターをセットする。

 珈琲豆は粉のものを少し贅沢に多めに入れて、少量のお湯で全体を湿らせてふくふくとしてくるのを待つ。

 それから、円を描きつつ、大体珈琲豆から1センチくらいの高さになるようにお湯をかけていく。ゆっくり、ゆっくりと。

   5

 珈琲が美味しくできたので嬉しい。

 詩集や短歌、小説を読みながらゆったりと飲む。きょうは谷川電話さんの『深呼吸広場』。自分とは違う感性を呼吸しているみたいで面白い。

(短歌は共感よりも驚いたり畏敬の念を抱くことのほうが圧倒的に多い。だから自分の好みにフィットする短歌集はほとんどなくて、むしろ好みに合わないからこそ読んでいる気がする。)

   6

 珈琲を飲み終えたら、ルーティーンはおしまい。ここから先はその日の自由にして良い。外に出るなり、文章を書くなり、お好きにどうぞ。

 了

   ◯

 読んでいただき、ありがとうございました。
 佳き一日となりますように。

 しんきろう