中編小説「押忍」(59)
「冗談に聞こえませんよ、それ。母への最初の告白はどんな風に?」
「オマエが入門した日の週末、スナックに行って、香さんの前に群がる野郎どもを掻き分けて前に座ったら、岡本先生今後ともタクミを宜しくお願いしますと可愛く頭なんか下げてくるもんだから、惚れてしまったようです、と」
「どこまでが本当の話ですか」
「全部だよ」
「母の前に群がる男ってのは」
「あの人目当てであのスナックに土曜ごと通ってたオヤジが何人いたと思ってんだ。俺が月イチしか行かなかったのも、それが理由よ。この見てくれ