中学でもわかる浪漫数学

いつか理数系の物語を、数式入りで映像化するのが夢。 不定期ですが、主に理数系400字シ…

中学でもわかる浪漫数学

いつか理数系の物語を、数式入りで映像化するのが夢。 不定期ですが、主に理数系400字ショートショートもやっています。 400字はコチラ → https://short-short.garden/author/808121 理数専門の学習塾経営 数理十九

マガジン

  • 5次方程式になぜ解の公式が存在しないのか?

    家庭教師の竹村と天才小学5年生森田君のやりとりを通して、なぜ5次以上の方程式に解の公式が存在しないのかに迫ります。数式や記号の羅列にならないよう、なるべく日常の言葉で書くことにしています。 気付いたら投稿記事を修正しています。 なお、本文はアーベルの証明のアイデア(累乗根の添加や対称性の破壊など)の紹介に力点を置いており、数学的な厳密性は割愛しています。 (参考文献) 『代数学概論』高木貞治著 『不可能の証明』津田文夫著 内容はアーベルの証明を、現代的な視点を加味して簡潔に書いたもののようです。 アーベルの原論文は以下を参考。 『群と代数方程式』守屋美賀雄訳・解説 『アーベルの証明「解けない方程式」を解く』ピーター・ペジック著、山下純一訳 原論分は式変形がかなり複雑になっています。 また、後期ではガロアの証明も紹介します。大学のガロア理論ではなく、ガロアのアイデアの解説です。

  • ショートショート集

    理数系ショートショートもあります。不定期ですが、こちらでも理数系400字ショートショートなどをやっています。 400字はコチラ → https://short-short.garden/author/808121

  • 理数系ショートショート集

    理数系のショートショート集です。数学的な内容ですが、中学~高校レベルで分かる物語にしています。

記事一覧

(まとめに図版追加)『体(たい)』について

 ここでは、「体」という新しい概念と、本文で何度も述べてきた「累乗根の添加」について解説します。前半は、本シリーズ (18) の(注3)(注4)で述べた内容を、体を用…

2次対称群で、剰余群が巡回群になることの復習

2次対称群について これまでは、3次方程式を扱うために、3次対称群  $${S_3=\{id, \rho_2, \rho_3, \tau_1, \tau_2, \tau_3\}}$$ を主に扱ってきました。ここで…

(図版追加)『巡回群』について、および剰余群が巡回群になること

巡回群について ここでは、重要な巡回群について解説します。巡回群とは「すべての要素が、あるひとつの要素だけを用いて表すことのできる群」です。具体的には、これま…

中学でも分かるガロアの証明⑤正規部分群の縮小について

(復習)左剰余類による類別 前回までは、3次対称群(3つの文字の入れ替えをすべて集めた群)  $${S_3=\{id, \rho_2, \rho_3, \tau_1, \tau_2, \tau_3\}}$$ の正…

(追記有り)中学でも分かるガロアの証明➃『剰余群』について

 ここでは、剰余類どうしに新たに演算を定義して、その演算に関して剰余類の集合は群(これを剰余群という)になることを証明していきます。ガロアによる偉大な発見です。…

(追記有り)中学でも分かるガロアの証明➂『剰余類』及び『正規部分群』について

 ここでは剰余類、及び正規部分群について解説をします。この考えは、「5次以上の方程式に解の公式が存在しない」ことを証明する上での重要なアイデアです。  置換の積…

中学でも分かるガロアの証明➁『部分群』について

 前回(本シリーズ (28))では『集合』と『群』を説明しました。ここでは『部分集合』と『部分群』について解説していきます。  前回、3次置換全体の集合  $${S_3=\{i…

中学でも分かるガロアの証明①『群』について

 ガロアは『群』という数学的概念を用いて、5次以上の方程式に解の公式が存在しないことを証明しました。ここでは、その『群』について簡単に解説します。 (追記)あま…

(大幅修正)(追記有り)もっと分かりやすく⑩ そもそもなぜ存在しないのかを『巡回置換』から紐解く

 そもそもなぜ5次以上の方程式に解の公式が存在しないのかについて、『巡回置換』との関連で解説していきます。結論的なことは、本文最後の方で述べています。  3次方…

数式ミステリー『数学者のメモ』Page2

a=1-1+1-1+1-1+…… Let's try a=1-1+1-1+1-1+…… =(1-1)+(1-1)+(1-1)+…… =0+0+0+…… =0 easy a=1-1+1-1+1-1+1-…… =1+1-1+1-1+1-1+…… =1+(1-1)+(1-1…

数式ミステリー『数学者のメモ』

a=b a+b=b+b a+b=2b a+b-2a=2b-2a b-a=2(b-a) (b-a)÷(b-a)=2(b-a)÷(b-a) 1=2 Why? No, no, no Try again! Let a=b Add b. a+b=b+b a+b=2b Subtract 2a. a+b-2a=2b…

(追記あり)もっと分かりやすく➈「カルダノの方法」と「対称性の破壊」の関連について

 「カルダノの方法」による3次方程式の解の公式の導出方法を、差積とラグランジュ・リゾルベントに関連付けながらもう少し深掘りします。カルダノの方法は「ラグランジュ…

(誤字修正)もっと分かりやすく➇「カルダノの方法」による3次方程式の解の公式の導出

 3次方程式 $${ax^3+bx^2+cx+d=0}$$ を考えます。簡単のため、係数 $${a, b, c, d}$$ の範囲を有理数とします。係数の範囲は複素数まで拡張できますが、まずは有理数…

もっと分かりやすく➆「定数 ω」について復習

 ここでは、本シリーズでたびたび現れる定数 $${\omega}$$ について解説します。主に本シリーズ (2) の復習です。 定数 ω の定義 $${\omega}$$ とは、「3乗して $${1}…

もっと分かりやすく➅「対称式ではない解の公式を基本対称式で表す」には?

(初めに)ここでは、分かりにくいと思った本シリーズ (11) の内容をもう一度解説していきます。  なお、本シリーズ (11) では便宜的に「係数の置き換え」を行っています…

もっと分かりやすく➄「解の和と差の連立」による2次方程式の解の公式の導出

(初めに)ここでは、分かりにくいと思った本シリーズ (11) の内容をもう一度解説していきます。  なお、本シリーズ (11) では便宜的に「係数の置き換え」を行っています…

(まとめに図版追加)『体(たい)』について

(まとめに図版追加)『体(たい)』について

 ここでは、「体」という新しい概念と、本文で何度も述べてきた「累乗根の添加」について解説します。前半は、本シリーズ (18) の(注3)(注4)で述べた内容を、体を用いて新たに書き直したものです。
 後半では、具体的な2次方程式の解について、前半で述べた「体」と「累乗根の添加」を応用させていきます。

『体(たい)』について まずは有理数の集合を考えてみましょう(数の分類については(注1))。
 

もっとみる
2次対称群で、剰余群が巡回群になることの復習

2次対称群で、剰余群が巡回群になることの復習


2次対称群について これまでは、3次方程式を扱うために、3次対称群
 $${S_3=\{id, \rho_2, \rho_3, \tau_1, \tau_2, \tau_3\}}$$
を主に扱ってきました。ここでは、3次対称群で辿ってきた道のりを、2次対称群(2次置換を要素とする集合)に当てはめてみます。
 後に2次方程式でガロアの証明を扱うための準備と、より簡単な2次という構造で、剰

もっとみる
(図版追加)『巡回群』について、および剰余群が巡回群になること

(図版追加)『巡回群』について、および剰余群が巡回群になること


巡回群について ここでは、重要な巡回群について解説します。巡回群とは「すべての要素が、あるひとつの要素だけを用いて表すことのできる群」です。具体的には、これまで何度も現れた、3次対称群
 $${S_3=\{id, \rho_2, \rho_3, \tau_1, \tau_2, \tau_3\}}$$
の正規部分群である3次交代群
 $${N=\{id, \rho_2, \rho_3

もっとみる
(追記有り)中学でも分かるガロアの証明➃『剰余群』について

(追記有り)中学でも分かるガロアの証明➃『剰余群』について

 ここでは、剰余類どうしに新たに演算を定義して、その演算に関して剰余類の集合は群(これを剰余群という)になることを証明していきます。ガロアによる偉大な発見です。

 ますは、本シリーズ (28) ~ (30) でやった定義、重要事項を記していきます。

(復習)群の定義 空でない集合 $${G}$$ の任意の要素 $${a, b, c}$$ の間に1つの演算 $${*}$$ が規定されていると

もっとみる
(追記有り)中学でも分かるガロアの証明➂『剰余類』及び『正規部分群』について

(追記有り)中学でも分かるガロアの証明➂『剰余類』及び『正規部分群』について

 ここでは剰余類、及び正規部分群について解説をします。この考えは、「5次以上の方程式に解の公式が存在しない」ことを証明する上での重要なアイデアです。

 置換の積に関して、3次対称群
 $${S_3=\{id, \rho_2, \rho_3, \tau_1, \tau_2, \tau_3\}}$$
の部分群には、全部で以下の6通りがあります(本シリーズ (29))。
 $${\{id,

もっとみる
中学でも分かるガロアの証明➁『部分群』について

中学でも分かるガロアの証明➁『部分群』について

 前回(本シリーズ (28))では『集合』と『群』を説明しました。ここでは『部分集合』と『部分群』について解説していきます。

 前回、3次置換全体の集合
 $${S_3=\{id, \rho_2, \rho_3, \tau_1, \tau_2, \tau_3\}}$$
は、置換の積(合成)という演算に関して群となることを解説しました。この集合 $${S_3}$$ を『3次対称群』といい

もっとみる
中学でも分かるガロアの証明①『群』について

中学でも分かるガロアの証明①『群』について

 ガロアは『群』という数学的概念を用いて、5次以上の方程式に解の公式が存在しないことを証明しました。ここでは、その『群』について簡単に解説します。
(追記)あまり推敲せず、厳密でないところがあるので修正しました。分かりやすさと厳密性の狭間でもがいております。現状アバウトに読んでください。

集合について 数学的な意味での集合とは「範囲のはっきりしたものの集まり」です。そして集合を作っている個々のも

もっとみる
(大幅修正)(追記有り)もっと分かりやすく⑩ そもそもなぜ存在しないのかを『巡回置換』から紐解く

(大幅修正)(追記有り)もっと分かりやすく⑩ そもそもなぜ存在しないのかを『巡回置換』から紐解く

 そもそもなぜ5次以上の方程式に解の公式が存在しないのかについて、『巡回置換』との関連で解説していきます。結論的なことは、本文最後の方で述べています。

 3次方程式の解の公式の導出において、それが
 「累乗根を取ることによる、解の置換の対称性の破壊」
とつながっていることは、全章の本シリーズ (26) でやりました。そのときの(図解)を改めて再掲します。平方根、3乗根と次々と累乗根を取ることによ

もっとみる
(追記あり)もっと分かりやすく➈「カルダノの方法」と「対称性の破壊」の関連について

(追記あり)もっと分かりやすく➈「カルダノの方法」と「対称性の破壊」の関連について

 「カルダノの方法」による3次方程式の解の公式の導出方法を、差積とラグランジュ・リゾルベントに関連付けながらもう少し深掘りします。カルダノの方法は「ラグランジュ・リゾルベントによる方法」(本シリーズ (6)、(7))につながっていることの大まかな解説です。
 まずは、3次方程式の解の公式の導出(カルダノの方法)の流れを再掲します。

3次方程式の解の公式の導出の流れ(復習) 前章 (25) でやっ

もっとみる
(誤字修正)もっと分かりやすく➇「カルダノの方法」による3次方程式の解の公式の導出

(誤字修正)もっと分かりやすく➇「カルダノの方法」による3次方程式の解の公式の導出

 3次方程式 $${ax^3+bx^2+cx+d=0}$$ を考えます。簡単のため、係数 $${a, b, c, d}$$ の範囲を有理数とします。係数の範囲は複素数まで拡張できますが、まずは有理数の範囲で理解できれば、複素数まで拡張することは容易です(注1で数の分類)。また、3次方程式なので当然 $${a\ne 0}$$ です。
 なお本記事は、本シリーズ (3) の復習です。さらに詳しく

もっとみる
もっと分かりやすく➆「定数 ω」について復習

もっと分かりやすく➆「定数 ω」について復習

 ここでは、本シリーズでたびたび現れる定数 $${\omega}$$ について解説します。主に本シリーズ (2) の復習です。

定数 ω の定義 $${\omega}$$ とは、「3乗して $${1}$$ になる数のうち虚数である定数」、つまり「1の3乗根のうち虚数であるもの」を表します(注で数の分類)。具体的には

$$
\begin{align*}
\omega=\dfrac{-1+\sqr

もっとみる
もっと分かりやすく➅「対称式ではない解の公式を基本対称式で表す」には?

もっと分かりやすく➅「対称式ではない解の公式を基本対称式で表す」には?

(初めに)ここでは、分かりにくいと思った本シリーズ (11) の内容をもう一度解説していきます。
 なお、本シリーズ (11) では便宜的に「係数の置き換え」を行っていますが、ここでは行っていません。置き換えるか置き換えないかの違いだけで、本質的には同じです。
 本記事は『天才数学者はこう解いた、こう生きた』(木村俊一著)から引用を得るなど、大きく参考にしています。

(本文スタート)解の公式とは

もっとみる
もっと分かりやすく➄「解の和と差の連立」による2次方程式の解の公式の導出

もっと分かりやすく➄「解の和と差の連立」による2次方程式の解の公式の導出

(初めに)ここでは、分かりにくいと思った本シリーズ (11) の内容をもう一度解説していきます。
 なお、本シリーズ (11) では便宜的に「係数の置き換え」を行っていますが、ここでは行っていません。置き換えるか置き換えないかの違いだけで、本質的には同じです。

(本文スタート)
 2次方程式の解の公式について、「解の差積 $${\boldsymbol{\alpha-\beta}}$$ を添加する

もっとみる