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統計学が最強の学問である ビジネス編③:エビデンスに基づくGoogleの人材採用プロセスとは?

読書ノート(148日目)
さて、本日も昨日に続き
「統計学が最強~」シリーズ3冊目、
「ビジネス編」です。

この本は、
統計学をビジネスに活用するには?
を目的に書かれた本です。

本書の中では
・経営戦略のための統計学
・人事のための統計学
・マーケティングのための統計学
・オペレーションのための統計学

と、4つのビジネス領域に対して
統計学をどう活用できるかが
解説されています。

その中でも今日は
・人事のための統計学
について紹介していきます。

まずは前半で
優秀な人を採用する重要さ
良いリーダーは状況次第で、
一貫した特徴は見つけられなかったという
人事の先行研究を紹介し、
後半で具体的な分析手順を紹介します。

・第2章:人事のための統計学
・アメリカの心理学者フランク・シュミットとジョン・ハンターは
 1998年に過去85年にわたる人材の採用に関する定量的な
 研究を収集・分析するシステマティックレビュー論文を出版
・彼らによれば、上位16%以上の優秀な従業員は、平均的な従業員と比べ、
 特に専門性を必要としない仕事でさえも生産性が19%ほど高い。
 これが専門性を要求する仕事や管理職になれば48%も高いと示した
・この他にも、プログラマーに関する調査で、最も優秀なプログラマーは
 ダメなプログラマーの10倍、平均的なプログラマーと比べ5倍
もの
 生産性を示す調査結果もある
・つまり、優秀な人材を採用できるかどうかは大きなインパクトをもたらす

・科学的なエビデンスに基づくGoogleの採用プロセス
採用後の業績のバラつきのうち29%をワークサンプルテストの成績が説明
一般認知能力テストと組み合わせると業績の40%を説明できるとのこと
質問内容が設計され構造化された面接は業績の26%を説明できる
 (分析結果の詳細は以下の図をご参照ください)
・一方で質問内容が設計されていない非構造化面接は
 14%しか業績を予想できないという結果
・以上のエビデンスから、Googleでは構造化面接、ワークサンプルテスト、
 一般認知能力テストを組み合わせて採用する方針をとっている
・学歴、年齢といったものは数%しかその後の業績を説明しない

・リーダーシップの研究者たちが発見した状況適合理論
・1960年代後半に行われた20の研究成果の中で指摘された
 「良いリーダーの特徴」は全部で80近くあり、その結果は一貫性がなく、
 「良いリーダーの特徴とは何か、まとめてみるとよくわからない」
 という結論だった
・その後、「良いリーダーとそうでもない者の違いはどこか」ではなく
 「どのような状況では、どのようなリーダーが機能するのか」という、
 状況とリーダーシップの相性問題に研究の関心が向けられた
・その背景には、1980年代に心理学者によりビッグファイブという
 性格特性の見方が確立したことも大きい
状況適合理論の代表例(パス・ゴール理論)
 ・「良いリーダー」となるか否かは状況次第で4タイプある
  指示型:やるべきタスクを整理し達成方法を具体的に指示
  支援型:親しみやすく部下の希望に配慮
  参加型:部下に相談し彼ら彼女らの提案を活用して意思決定
  達成志向型:達成困難な目標を示し部下に全力を尽くすよう要求

ということで、
Googleの採用プロセス検討
となった分析結果はこちらです。

ちなみに…ワークサンプルテストというのは、採用選考を受けている求職者に、
採用された場合の職務に似た仕事を体験してもらうことです

では後半は
この本の本題である
具体的な分析手順についてです。

ここで得られるアウトプットは
以下のようなイメージで、
「似たような職種内で、優秀な社員
 であるか否かはどこに差があるか」
を分析したものです。

分析結果が「-」で数値なし表記となっているのは、
分析したものの、p値が0.05以上で偶然でた数値の可能性が高いため
記載されていないのだと思います

そして、この結果を得るための
分析計画書はこちらです。

そして最後に
具体的な手順の紹介です。

・手順①:分析対象の設定
・「収益を上げてくれる人とそうでない人の違い」を分析する場合
まったく異なる職種の人を一緒くたに分析するのは下策
・状況適合理論に基づけば、営業パーソンとエンジニアを
 混在させて分析しても共通的な一般認知能力(IQ)が高い
 という程度の当たり前の結果しか得られないかもしれない
・分析するならば、社内の収益を大きく左右する職種について、
 同じような環境で同じような仕事に携わる従業員を
 数十名以上(できれば数百名以上)で分析
する
※ただし、自社内のデータだけで分析すると
 「打ち切り」または「切断」という現象が発生する懸念がある
「打ち切り」「切断」とは
 仮に、本来は筆記試験と営業成績に正の相関関係があるとされていても、
 入社試験で筆記試験のスコアが一定以上の人しか採用していない場合、
 採用基準以上の筆記試験の得点範囲では営業成績との相関が見られない
 ということが発生することがある
・営業成績は入社後にしか分からず、採用試験で不合格となった
 応募者のデータは「切断」され存在しないため

・手順②:変数のアイディア出し
・人事のアウトカムの設定の難しさ
・非生産的な行動を誤ってアウトカムにしてしまう懸念
・アメリカのある地域の警察署では、
 「警察官のパトカーの走行距離で評価」していたため、
 勤務時間は高速道路をひたすら走り回るという「数字上だけは高評価」
 という話もあった
・売上だけを評価すれば、必要以上のコストをかけたり
 値引きをして赤字を出してでも売上をつくる懸念
・定型的な仕事の効率化についてのアウトカム設定も工夫が必要
・ベテランの優秀な経理スタッフは難易度が高くて多くの時間を要する
 伝票処理が多く割り当てられ、新人スタッフはシンプルで短時間で終わる
 伝票処理を任される職場の場合、「処理した伝票の数」をアウトカムに
 すると間違った結論を導いてしまう
・理想的な答えは「評価・調査のための一定期間、処理する伝票の分担を
 ランダムに行う」またはスタッフのスキルを「上級・中級・初級」に
 分けて、それぞれの階級内で優劣を分ける要因を探すことが挙げられる

・手順③:必要なデータの収集
・データ不足をうまく補う
・例えば、個人別の営業成績を分析したくても営業担当者の欄に
 空欄が多くて紐づけできないなど
・その場合、個人別の営業成績が分からないから
 「上司からの評価」を使う場合は注意が必要
・「営業パーソンの営業成績」と「上司からの評価」を比較した
 メタアナリシスでは「優秀」とされる要素が異なることが分かっている
・「営業成績」には、「達成性」・「セールス能力テスト」が重要だが
 「上司からの評価」では、「一般認知機能(IQ)」、「経歴の立派さ」が
 重要であることが分かっている
・せめて上司の評価以外にも、部下や同僚、取引先の評価の平均値などを
 取る360度評価のような指標を作って使う方が望ましい
・また従業員が回答するデータは直接的な利害が関わる者もいるため、
 意識してかせずか、偏った答えが出てくるということも想定しておく

・手順④:得られたデータの分析
・相関の強い説明変数は「縮約」し、
 多数の変数を少ない数の変数にまとめ直す
・アウトカムが売上や粗利金額、業務件数という
 連続値の数値データの場合は重回帰分析
・「優秀か否か」という定性的なものや、
 2値の場合はロジスティック回帰で分析する

手順⑤:分析結果の解釈
・「経験や直感に反する結果」はないか?
・今回の結果からは、男性より女性の方が、誠実性が高い人の方が、
 新聞図書費の使用額が高い方が優秀である確率が高いと分かる
※重回帰分析もロジスティック回帰も、分析結果の説明変数同士は
 「互いに相乗効果が存在していない」という仮定のもとに、
 説明変数とアウトカムの関連性を推定している
・つまり、性別以外が同じ場合なら男性より女性の方が優秀である確率は
 高いといえるが、「女性で誠実性が高く読書家な従業員が最も優秀」
 であるかどうかは全く推定していない

・変数を「変える」アクションとしては、
 新聞図書費の使用額が増えるための施策の実施などが挙げられる
・変数を「ずらす」アクションとしては、性別は変えられないが
 今後採用する従業員の割合を女性を多めにするなど、
 1人1人は変えられなくても、会社の従業員全体として、
 より優秀な者がいる確率が高い組織に変えることはできる

・A/Bテスト、ランダム化比較実験の実施
・その後の施策効果の検証のためにも、「変える」アクションの場合は、
 一定期間は従来の施策を実施するグループをつくり、
 新たな施策を実施したグループと従来施策のグループの両者で
 どれだけ業績に差が出るかを統計検定する
・また、「ずらす」アクションの場合の一例では、
 一方の採用グループでは女性を多めに採用する指示を出し、
 もう一方は従来通りの採用活動をする。
 一定期間の後、採用グループ別で業績に差があるかを検定する

また最後に、
興味深い内容が補足されていました

・人的資源管理の施策の候補となる「HPWP」
・欧米企業の人的資源管理では、
 High Performance Work Practice (HPWP)が注目されており
 システマティックレビューでもその有用性が実証されている
・自社の仕事に適した優秀な人材へどのような方法でアプローチし、
 どのような選抜方法や評価方法を使って本人の能力や適性、
 モチベーションや現在の仕事ぶりを判断して採用したり、
 昇進させたりするのか・どう業務内容やワークライフバランスを設計し、
 従業員に必要な権限や研修をしチームを作り、どのようなスキルの獲得や
 業績に連動させてボーナスを支払うのかということ

・HPWPの構成は一般に、採用活動、人材選抜、業績評価、昇進、
 職務設計、社内情報共有、教育訓練、態度アセスメント、権限委譲、
 (従業員からの)苦情処理手続き、チーム作業、インセンティブ給、
 ワークライフバランス管理への従業員の関与など

どのような国、地域、業界でもHPWPの取組みを強く行っている企業ほど
 業績が良い
ということがシステマティックレビューの結果から示された
・例えば、企業利益を従業員とシェアする仕組みの方が、
 企業の状況によらず従業員のパフォーマンスを向上させるということも
 システマティックレビューの結果から支持されている

自分のための備忘メモ用とはいえ、
かなりの文章量になってしまいました…

具体的な手順の中に
人事データを扱う際の懸念点まで
あれこれと残しておこうと思うと、
本書での約80ページの文章量を
約4000字に整理するのがやっとでした。

次は「マーケティングのための統計学」
を紹介予定なのですが、文章量は
今回と同じくらいかそれ以上の可能性も…

ということで、お時間ある時に
またnoteを読んで頂けましたら幸いです!

ところで、
今日で私の年末年始休暇は最終日です。
当初目標としていた、「統計学が最強~」
シリーズは数学編を除く3冊は読了
したので
努力目標は2日前に達成することができました!✨

いま手にしているのは、2024年の予測など
将来予測に関する本を読み始めています。

今後はそれらの将来予測に関する本も
こちらのnoteで紹介できたらと思っています。
それではまたー!😉✨

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