毎週一帖源氏物語 第十三週 明石
このシリーズ第二週の「帚木」で、私は現代語訳で『源氏物語』を読もうとした過去の取り組みに触れて「須磨・明石くらいまで辿り着きはしたものの、帚木巻で勢いをそがれた」と書いた。しかし、実はそこまで行かずに挫折したのではないか。しばらく前から、そんな気がしていた。明石巻まで読み終えた今となっては、自分の記憶を上書きしていたことを認めざるをえない。明石の上について、私には何の印象も残っていなかったからである。『源氏物語』の成立過程について、まず須磨・明石の巻の構想があったという説に