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ちょっとブレイク 「花のおにぎり野草の冷奴」

先日の「菊を食べる」の記事を読んでくださったかたと、懐かしい玉川神社の菊まつりの話ができた。自己満足で書く他愛もない話から懐景を共有できたことがうれしく、まずは感謝を。文字というものは、みんなに聞こえる「文字のひとりごと」

30年以上も前の話で恐縮だが、美大の助手が「作品はつくっておしまいではない」「いかに物語を説明できるかだ」と言った。

当時、特に陶芸界は、寡黙にドンと作品を置いて「どうだ」というスタンスの職人が多かった。助手の言った通りの時代になり、今ではプレゼンテーションは周知の業だが、下手をするとそれがうっとうしく仇になり「作品のひとりごと」が聞こえなくなることさえある。

「どうだ」と無愛想に出される料理も同じ。萎縮したら舌もひっこむが、うんちく然り、過剰な装飾や演出は、舌の想像力をなくす。「いい香りなんですってば」などと「料理のひとりごと」が聞こえるくらいのシチュエーションが聞きたい。

イタリアはヴィンチ村の友人宅でつくったおにぎりと豆腐。料理とはいえないものだが、妹みたいな存在の友に姉さんぶって一緒につくった。米を炊き、酢を散らし、持参した桜の塩漬けと白ゴマを和え、友が育てたカイワレを乗せ、豆腐型のフタの上に乗せて出した。なんてことのない「おにぎりのひとりごと」が聞こえる。

もう一品は自家製豆腐。ないからつくる。(⇒前記事「自家製納豆」参照)以前、息子が豆腐づくりに夢中で、その時に使いやすかった豆腐型を、数年前お土産で持っていったもの。友は愛用してくれており、完璧な豆腐をつくり上げた。

豆腐には、眼前の大地に生えているヒベリヒユをちぎって添える。モロヘイヤのようにネバネバするそれは、南イタリアの舗装された道端にも強く生存していたし、東京の我が家の近くの川辺にも生えている。はびこる野草、いわゆる雑草の一種で大好物。塩ひとつまみ、彼女が搾ったヴィンチのオリーブオイルを垂らして食す「豆腐はとってもおしゃべり」だった。


友は来週からオリーブ収穫をはじめる。バイオダイナミック製法で育て、収穫し、油を搾る。遠方の友に、この「文字のひとりごと」を、安全と豊作を祈って贈りたい。


個展まで一ヶ月を切り
制作は佳境に入りました。

INFORMATION

我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition

Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
※21日休廊
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F


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