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シン・映画日記『ヒトラーのための虐殺会議』

ヒューマントラストシネマ有楽町にてドイツ映画『ヒトラーのための虐殺会議』を見てきた。

1942年1月21日にドイツ・ベルリンの高級住宅地、ヴァン湖(ヴァンゼー)畔にある親衛隊所有の邸宅で行われたナチス・ドイツのユダヤ人政策に対する「最終的会議」を途中休憩10分と数回の中座を含めておよそ90分をかなり忠実に再現した。
一応、劇映画だが、限りなくドキュメンタリーに近く、再現度が高いもの、と考えられる。

今や人種差別はもちろん、安楽死や労働問題などについて取り上げている会議であり、ナチス・ドイツの軍、党、ドイツ政府のそれぞれの次官、それと当時ナチス・ドイツが統治していたチェコ、ラトビア、ポーランドの総督や担当者、担当者代理も出席している。
で、会議の議長が直前までいたチェコ・プラハから来ていたこともあり、
ポーランドやラトビアの担当の人が「うちは色々大変なんだけど、これなんとかしてくんない?」というのを、
「君たちが大変なのは分かるがチェコも大変だったし、他も大変なんだよ」という論調で諭したり、
お金がかかるとか「労働問題的にヤバくない?」とゴネてくる所を巧妙にかわす。

その中で政府サイドのある人が、
「同じユダヤ人でも優秀なやつがいたら損益になる」とか「法律的におかしくない?」とイカれた考えを持つ奴らの中では比較的まともなことを言って、一時この人の意見が通りそうになるが、
ここでも議長の戦術と会議のタクティクスの上手さでどうにか己の持っていきたい方向に持っていく。

全体的に非人道ではあるが、
そこが最高のブラックユーモア。
そして、この会議テクニックの上手さにこの脚本の上手さが相まっている。

けど、これ、映画というよりはやっぱり会議なんだよね。リアルだけど、どうにかエンターテインメントもあればなー、と思ってならない。
密室劇で男たちの論議といえば『十二人の怒れる男』がまず真っ先に思い浮かぶ。この手の作品ってだいたいはこれを参考にしてるのではないだろうか?
これも論議だけで作品を展開し、ロシア版なんかはラストがそれなりに衝撃がある。
邦画では三谷幸喜が『12人の優しい日本人』や『清須会議』で近いものをやってるし、
法定・裁判が中心になる作品もこれに近い。
それを踏まえたとしても、やはり「事実を忠実に」ということから逃れられないからドキュメンタリー作品でないにも関わらず堅い映画になっちゃったかな。


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