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シン映画日記『マネーボーイズ』

シネマート新宿にてオーストリア、フランス、台湾、ベルギー合作の台湾映画『マネーボーイズ』を見てきた。

フライヤーからはいまいち分からなかったが、師匠がミヒャエル・ハネケ監督と聞くとどうしても気になるので見てみた。ミヒャエル・ハネケ監督を師事したC.B.Yi監督長編デビュー作で、台湾の同性愛カップルを中心とした重い青春映画。
いわゆるLGBTのGに特化したタイプの映画だが、ミヒャエル・ハネケ監督の作品で見られるような不穏さと『ヤング≒アダルト』のような鬱屈とした居心地の悪さが常に付き纏う映画で、これらの作品が好きな人のピンポイントをついたような映画だった。

男娼の仕事で知り合ったフェイとシャオライはある客とのトラブルに巻き込まれ、音信不通になる。5年後、フェイはふとしたきっかけで故郷に戻ると、偶然シャオライと再会をする。

映画はゲイのフェイを中心とした青春映画で、感覚的にはごく最近の映画なら日本映画の『エゴイスト』、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』、ロウ・イエ監督の『スプリング・フィーバー』に近い。

欲望赴くままに生きるフェイとその周りで徐々に変化する親友らの心境や立場との軋轢や、両親や親戚との折り合いが悪い断絶する仲を描いている。そのうまく行かない、鬱屈した様子をドラマに反映している。

結婚しそびれ、行き遅れの青年・女性のドラマというと『ヤング≒アダルト』があるが、本作はこれに『エゴイスト』や『ブエノスアイレス』のような性の多様性事情をぶち込み、世間・親類との断絶の根深さを描いている。そういう事情からフェイ以外の主要人物らの変化といつまでも変わらないボンクラなフェイの居心地の悪さと鬱屈を本作はとことん描く。

作中の9割が曇天模様だったり、雨だったり、主人公の心情とシンクロさせ、クラブや飲み会での刹那な楽しみにも怪しい煌めきがある。性的傾向が違っていても、独身男性なら共感度がバリ高な切ないビヨンド青春映画である!

 

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