うちだあつこ

「濁世ノ事、此ノ如シ。長大息スベキナリ」 とはいえ、生きてて楽しいこともあります。 国…

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「濁世ノ事、此ノ如シ。長大息スベキナリ」 とはいえ、生きてて楽しいこともあります。 国文学、特に和歌、古今集、貫之のこと、 現では仲間が見つけにくいこれらの趣味達を ここで語らせてくださいませ。

最近の記事

言挙げ2024

昨年夏からnoteを始めて、学びのある記事に出逢えたり、自分の考えをそれなりに言語化して記事にしてみたりで、実りの多い半年を過ごすことができました。 noteの新年企画の〆切が迫っているので、ここらで今年〜長期の夢を言挙げしておきたいと思いました。 有言実行、コトバにすればマコトになると信じて! ①「和歌レイヤー論」(仮)をまとめる。 名称も決まっていない拙論ですが、やっと自分のやりたいことが見えてきて、然るべき場所に連れてきてもらえた感じがします。 もちろん微調整はこれ

    • 和歌とはレイヤーの重なり

      前回は、俵万智さんの「サラダ記念日」の一首の推敲過程を例に、短歌(和歌)の詠み方(+読み方)について探ってみました。 前記事の最後に挙げた「分析方法」は、このようなものです↓ (2)のパーツ分解を、「サラダ記念日」の完成形にあてはめると、こうなります↓ それぞれ、ⅰ〜ⅲの項目は全て、「(主語)が(述語)」の形になっています。今回はたまたま、目的語を持つものはありませんが、結局、主語も目的語も名詞なので、パーツ分解の際には、述語を核としながら、「動詞(述語スル)+名詞(主

      • 短歌(和歌)のよみかた

        年末実家に帰ってぼんやり紅白歌合戦を観ていたところ、審査員として俵万智さんが出ていらしてびっくり。お変わりなく可愛らしい人、というイメージ。 ちょうど俵さんの『短歌をよむ』を再読中だったのです。有名な「サラダ記念日」の歌の推敲について書かれている箇所が、今読むと示唆に富み過ぎている! ①試作その1 ・工夫してカレー味の鳥のからあげを作ってみた ・「イケルね」と言ってもらえたことが嬉しかった ・その日を記念日と名づけたい気持ち →カレー味のからあげ君がおいしいと言った記念日六

        • 自動詞か他動詞か

          貫之のように和歌が詠みたいな…、とか書くと、正岡のノボちゃんに唾棄されそうですが、本心からそう思います。 以前の記事でも触れたとおり、これまでの貫之研究の主流は出典の指摘(比較文学的研究)でした。でも、もし私が同じように漢籍や万葉集の表現をふまえて和歌(短歌)を作っても、貫之のようには作れません。また、同じ出典をふまえた古今集時代の和歌を並べてみても、貫之の歌にはそれとしての良さがある(=他の歌人の歌にも良さがあるのと同等に)。古今集時代の和歌はみんな同じ、「手弱女ぶり」「理

          研究目的

          最近、YouTubeでさまざまな研究者の講義を視聴するのにハマっています。 和歌や古典文学に関する講義に最も興味があるのですが、意外と理系の分野が心に刺さったりします。公開講座だと、理数苦手な人間にも分かりやすく、魅力的なエッセンスを伝えてくれるものが多いので、量子力学やIUT理論みたいな、正体不明級に難しい内容でも、むしろ「分からなすぎて楽しい」まであるのですよね。 そしてそれらを視聴していて感じることは、その道を究めた研究は、「この世界はどんなものか」「人間とは何か」とい

          歌群「ウインカー光って」

          和歌の研究のため、創作者の気持ちを知りたくて、下手っぴなりに短歌を詠んでいます。 ちょっと溜まってきたので記録しておきたくなりました。 ****************************************  ウインカー光って右折する先の夜道を走るこの生いつまで  目に入る駅名すべてにさんずいをつけたくなる今日さようなら、あなた  耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えたその先に、風のない海  しあわせと言っておきます熱帯夜寝汗の子らのひっついてく

          歌群「ウインカー光って」

          デジタルネイチャーと貫之って|推し活(4)

          関係あるのかなあ、という話。 たまたま落合陽一さんの動画を見ておりましたら、未来館に貫之の浮世絵が展示されていることを知りました。 「和歌は人間の心の記録なんです。」 と彼に語らせている。 (仮名序の「やまとうたは、人の心を種として…」というところを意訳したのかな。) 確かに、人間の心を直接言語化したもの、という意味で、和歌は貴重な記録・資料になりうるかもしれない。私が大好きな『短歌で読む 昭和感情史』という新書は、その意味で短歌に注目して「感情史」という試みに挑んだもので

          デジタルネイチャーと貫之って|推し活(4)

          更科の月

          秋の和菓子はシックな色合いのものも多い中、先日店先で目を奪われたこのお菓子。 とらやさんの「新更科」というお羊羹、普段遣いには勿体ないですが、美しさに一目惚れして思わずハーフサイズを購入してしまいました。 山に月の絵柄、菓銘からも明らかですが、    我が心なぐさめかねつ更科や姨捨山に  照る月を見て  (『古今集』巻十七〈雑上〉詠み人知らず 878) に因んだものでしょう。この歌、大学の演習の授業で、友達が発表したものだったので思い出深いのです。というのも、竹岡全評釈に

          手も触れぬ白真弓|秀歌を紐解く(5)

          和歌は本来的には恋をうたうものです。が、正直に言って、『古今集』の恋歌はそれほど面白くない。やはり恋歌(相聞)と挽歌は『万葉集』が抜きん出ていますので。といいつつ、今回はあえて、『古今集』の恋歌を紹介したいと思います。 ※今回の一首を秀歌と称すのは、「推し」への贔屓目が多分にある点をご了承くださいませ! 「白真弓」  手も触れで月日経にける白真弓  起き臥し夜はいこそ寝られね 『古今集』巻十二〈恋ニ〉605番、紀貫之の歌です。上の句は「手も触れることなく、月日が経ってし

          手も触れぬ白真弓|秀歌を紐解く(5)

          推し短歌|推し活(3)

          中秋の名月でした(9/29)。  溜息が零れていつかこの月を見たはずの人  我が生を支える 短歌、上手く詠めるようになりたいです。

          推し短歌|推し活(3)

          月草の衣|秀歌を紐解く(4)

          季節の変わり目って何だか心が弾みます。秋を先取りしたくて、最近は『古今集』の秋歌を眺めています。紅葉、月、萩、女郎花…、春歌と同じく、秋の巻は上下巻になっていて、その分詠まれている景物もいろいろあります。中には、これって秋の物なんだ!?とびっくりするものも。今日はそんな意外な秋歌を紐解いていきます。 ツユクサを詠む秋歌  月草に衣は摺らむ朝露に濡れての後は  うつろひぬとも 巻四〈秋上〉の詠み人知らずの一首です。「月草」は、現代で言うツユクサのこと。幼稚園で色水遊びなん

          月草の衣|秀歌を紐解く(4)

          かたへ涼しき風|秀歌を紐解く(3)

          まだまだ昼日中は暑いばかりですけど、朝晩はすこ〜しだけ、寝苦しさも和らいできたように感じます。平安人は秋を「風で知る」と言いますが、まあ確かに、風も少し秋めいてきたような。日がまだ高くない朝のうちは、蝉の代わりに秋の虫の音が聞こえて、あ、この静けさは秋だな!とか、スーパーの鮮魚売り場に「秋鮭」「秋刀魚」が並び、お菓子棚には「お芋」「栗」の限定味が目立ち始め…、というように、風情があるかどうかは別として、何だかわくわくする時期がやって来ました。 そういえば今日はこんなお菓子もい

          かたへ涼しき風|秀歌を紐解く(3)

          マルチメディアショック|推し活(2)

          皆様、八月も終わりますけど、推し活捗ってますか? 日々研鑽を積まれている皆様の「推し」様はそれぞれだと思いますが、もちろんその御方の「ビジュアル」は大切過ぎる要素ですよね? ええと、ここからはだいぶ特殊な推し活に励まれている方々にしか刺さらない話になります。たとえば歴史上の人物(とりわけ森蘭丸とか沖田総司とか天草四郎とか、ね…)、小説の登場人物等を対象にしている方々にはぴんと来ていただけるかも。 マルチメディアショック はい、そうなんです。「我々」は推しのビジュアルを直接

          マルチメディアショック|推し活(2)

          ぼやく貫之|推し活(1)

          自己紹介にも書いたんですが、私が古典を好きになったきっかけは、高校の時に紀貫之の和歌「桜花散りぬる風の名残には水無き空に波ぞ立ちける」に出逢ったことです。国語の教科書はゲットした初日にわくわくしながら目を通すタイプなので、高2の古文もそんなふうにパラパラ見ていたんですが、そこで見つけたのがこの和歌。そのページの意匠も美しくて(赤っぽい和紙のような柄でした)、一瞬で魅了された覚えがあります。私の人生において「一目惚れ」というのは、もう後にも先にもあの経験だけだろうな…、というぐ

          ぼやく貫之|推し活(1)

          続貂(ぞくちょう)|玄人風用語雑帳

          続貂(ぞくちょう)【名】自分がぜひ取り組みたいと熱を入れている研究テーマが、よく調べてみると超絶有名な先人によって既に論じられていて、ああもうだめだ、これについて研究するなんて神に楯突く所業じゃん、テーマ変えなきゃ…、と青ざめるものの、とはいえ次の学会はこれで発表しようと考えていたので、再スタートも厳しいという時の、じゃあ敢えて神様の肩に乗っちゃえ!的な起死回生の発表題目や論文名(に付ける語)。 「『〇〇考』続貂」 「貂」とは、古代中国の高官が冠に飾るテンのしっぽのこと。出

          続貂(ぞくちょう)|玄人風用語雑帳

          花の頬杖|秀歌を紐解く(2)

          私が和歌を愛する理由はいくつもあるのですが、中でも素敵だな、と感じるところは、和歌が普段づかいの連絡手段でありながら、同時にその文学性の高さゆえ、はるか後世にまで作品として伝わっている点です。 現代で無理やり喩えるなら、友人や恋人とのLINEで面白いやり取りがバズったりすることがありますけど、あれが1000年後の人の目に触れるということです。うーん、やっぱりLINEでは厳しそう。 今回は、そういった友人同士の気の置けないやり取りを紐解いていきたいと思います。 躬恒と貫之の「

          花の頬杖|秀歌を紐解く(2)