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歌舞伎座

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歌舞伎を見に行った感想です。
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スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』千秋楽で、大人の礼装をウォッチング

スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』千秋楽で、大人の礼装をウォッチング

あれもこれも、初めてづくしの新橋演舞場。千秋楽なので、客席へ挨拶をして回る礼装姿の女性を幾人も見かけた。この日は札止めだったそうだ。1回目のカーテンコールは花道から、團子丈が登場。2回目は米吉丈とおふたり。米吉丈の手を取り、團子丈からの「お疲れ様でした」の仕草があって「ああ! 大阪では壱太郎丈とやるんだもんね」と客席の観客は思ったに違いない。スタンディングオベーションも初めて、見たけど、かかげた掌

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歌舞伎・演目覚書④『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』

歌舞伎・演目覚書④『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』

三月の京都・南座は中村隼人丈が壱太郎丈と『女殺油地獄』をやっているそうだ。

有料チャンネルがハシリの頃に『パーフェクトデイズ』のベンダース監督の『都会のアリス』や、なぜか、結婚する動機に繋がった『ポンヌフの恋人』を盛んに放送していた。思えばこの頃が私の真の映画デビューで、モノクロの日本映画を見るようになったのも、有料放送からの映画館通いの流れだった。

テレビの画面で観た『女殺油地獄』は1957

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歌舞伎・演目覚書③『伊勢音頭恋寝刃』

歌舞伎・演目覚書③『伊勢音頭恋寝刃』

急に秋らしくなった。江戸研究の田中優子先生の『きもの草子』には「新暦になって、年中行事がややこしくなった」と書かれていた。例えば、カレンダーの三月三日に祝う桃の節句も、旧暦では、カレンダーの四月二十二日。桃は、桜より後に咲くのだ。重陽の節句「菊の節句」は旧暦九月九日。2023年のカレンダーでは、十月二十三日にあたる。浅草寺では十月十八日に、菊供養とお練り行列、奉納の舞が行われる。

昨年、お稽古し

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歌舞伎・演目覚書②『京鹿子娘道成寺』

歌舞伎・演目覚書②『京鹿子娘道成寺』

私が歌舞伎座で初めて観た演目は、玉三郎の歌舞伎舞踊『娘道成寺』だった。憧れはあったものの、まだ、三味線を始める前の話で、結末、鐘供養に訪ねて来た白拍子(しらびょうし)が大蛇に変化し、鐘に取り憑くという程度の知識で、約一時間の演目がスタート。

お坊さんたちのリクエストに応え、烏帽子(えぼし)をつけて現れた白拍子花子(はなこ)が「中啓(ちゅうけい)の舞」でする、ハリセンみたいな形の扇を胸元でグッと握

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歌舞伎・演目覚書①『白浪五人男』

歌舞伎・演目覚書①『白浪五人男』

日本橋三越で『石田節子のきものでおでかけ』で紹介していた歌舞伎の名作『白浪五人男(しらなみごにんおとこ)』の衣裳の展示があったので、ちょっと、寄ってみた。五人の盗賊の衣裳を、三越所有と松竹所有を比較して見られる。個々の経歴を象徴するモチーフが、紫の縮緬にこれでもかと描かれていて、私は長唄を習っているので、弁天小僧菊之助のどデカい琵琶が面白かった。舞台ではプロフィールに合わせて、着付けも変えてあるそ

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シネマ歌舞伎『阿弖流爲』は、劇団⭐︎新感線の大活劇だった!

シネマ歌舞伎『阿弖流爲』は、劇団⭐︎新感線の大活劇だった!

阿弖流為(アテルイ)は松本幸四郎の役名。新橋演舞場で上演された新作歌舞伎のタイトルです。上演は2015年なので、まだ、染五郎の時代。こうした過去の舞台映像を「月イチ歌舞伎」という縛りで、シネコンで観られるそうで、約180分の上映時間のうちに10分間の休憩がありました。

太陽が水瓶座なので(おっと、関係ないか?)イヤフォンガイドのアプリもダウンロードしてみました。スマホのイヤフォンの収音マイクから

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猿若祭二月大歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒』で雨ゴートをウォッチング

猿若祭二月大歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒』で雨ゴートをウォッチング

『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』勘三郎丈の十三回忌。勘九郎丈の佐野次郎左衛門と兵庫屋八ツ橋を七之助丈。いやらしい悪役に松緑丈、仁左衛門丈の魅了みたっぷりで、ハラハラ見守る女房おきつは時蔵丈。おっちょこちょいの下男に橋之助丈。その他、あのお役も、このお役も、豪華豪華。

今まで見てきた歌舞伎と違ってた。始まりは暗転。真っ暗な中に幕を引く音が聞こえ、バッとライトに照らされた舞台はお馴染み

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壽 初春大歌舞伎『五人三番叟』で新年の歌舞伎座をウォッチング

壽 初春大歌舞伎『五人三番叟』で新年の歌舞伎座をウォッチング

昼の部、一幕目の歌舞伎舞踊『當辰歳歌舞伎賑(あたるたつどしかぶきのにぎわい)』の『五人三番叟』を観て、私はふたつの発見をした。

五穀豊穣を祈る舞踊『五人三番叟』は若手俳優の躍動感が魅力だ。赤・白・黒の揃いの衣装を身につけた五人が飛び跳ね、舞台を踏み鳴らす。この足拍子という振り付け、土の中にいる邪気を封じ込める浄化の意味を持つそうだ。ただのステップではなく、例えれば、太い丸太に持ち手を付けた「蛸胴

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十二月大歌舞伎『爪王』着物と道行コートをウォッチング

十二月大歌舞伎『爪王』着物と道行コートをウォッチング

十二月の歌舞伎座は三部構成。一部に初音ミクがあるせいか、それとも、正統派コーデの着物好きさんは三部の玉三郎に集まってしまうのか、二部の『爪王』『俵星玄蕃(たわぼしげんば)』はカジュアル着物の方が目について、地下のお土産売り場で、熱心に根付を選んでいらした。着物ウォッチング、以上。

今月は幕見席で勘九郎・七之助兄弟の『爪王』を観劇。動物文学の作家・戸川幸夫の原作を平岩弓枝が脚色した舞踊劇で、鷹の吹

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11月歌舞伎座『吉例顔見大歌舞伎』夜の部で、羽織りをウォッチング

11月歌舞伎座『吉例顔見大歌舞伎』夜の部で、羽織りをウォッチング

夜の部の終演は、9時近く。一幕目の『松浦の太鼓』の小道具に羽織りが出てくるから、というわけではないけれど、館内には羽織り姿が多く、よく見ると薄手のコートだったりして、歌舞伎座に入るには帯つき厳禁というムード。あの、灰色がかったピンク地の縮緬の、肩にだけ手のひら大の葵の葉を散らした羽織りは、着物を直したものかしらと、気になる。

『鎌倉三代記』

さてさて、今回はテレビで見たことのある演目が多かった

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錦秋十月大歌舞伎『天竺徳兵衛韓噺』で秋単衣の着物ウォッチング

錦秋十月大歌舞伎『天竺徳兵衛韓噺』で秋単衣の着物ウォッチング

『天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)』の舞台は、室町時代。序幕の二番は、佐々木桂之助(ささきかつらのすけ)のお家騒動。彼が窮地に至るまでの経緯、すなわち、足利将軍の宝剣が盗まれる場面である。

北野天神の鳥居の前に、宝剣の見聞のためのメンバーが集まって来る。豊後国の若殿で、刀の管理者である桂之助、本日の段取り役、刀の見聞役とその家来、蛇使いの大道芸人のふりをした怪しい人物。そして、桂之

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秀山祭九月大歌舞伎『祇園祭礼信仰記/金閣寺』で残暑の夏着物ウォッチング

秀山祭九月大歌舞伎『祇園祭礼信仰記/金閣寺』で残暑の夏着物ウォッチング

歌舞伎座で、夏着物ウォッチング。盛夏とは別の九月の夏着物。小物より、着物を変えれば安心ね!

はて、さて。一幕目の演目は中村歌六・米吉丈の『金閣寺』。桜の木に縛られた雪姫が、地面に集めた花弁に、爪先で、サササッと描いたネズミが現れて、縄を噛み切るというアレである。

人形浄瑠璃を元に創られた「義太夫狂言」。三色の定式幕が開くと、ドンと中央に二階建ての金閣寺。大ゼリにのっていて、最後のくだりで、建物

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八月納涼歌舞伎『新・水滸伝』お盆休みの歌舞伎座で、夏着物ウォッチングしてみた。

八月納涼歌舞伎『新・水滸伝』お盆休みの歌舞伎座で、夏着物ウォッチングしてみた。

先に、着物の話をサクッと書くと、歌舞伎座の夏着物はハードルが高かった。冷房のきいた部屋から、ドア・ツー・ドアで来られるような、つまりは車で来ているような人しかいない感じで、水色やレモンイエローの無自っぽい着物に、涼しげな絽のお太鼓柄の帯。汗もかかないような、スレンダーなボディばかり。当然、私はワンピース♪

演目の感想については、南座もあるので、ネタバレありとしておきます。

最初に、牢獄中の林冲

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壽祝桜四月大歌舞伎『義経千本桜』明治座の桜と着物をウォッチング

壽祝桜四月大歌舞伎『義経千本桜』明治座の桜と着物をウォッチング

三年ぶりに楽しんだ花見の宴も、そろそろ、終わりという四月の十一日、明治座の創業百五十周年記念講演『壽祝桜四月大歌舞伎』にて、片岡愛之助の『義経千本桜』を見ることができた。気分は桜づくし。

さっそく、着物ウォッチング。

ビッグヒットは桜の花弁の訪問着姿の女性。濃い地の着物に、コントラストで描かれた花弁が、襟元から、ハラハラと散らされている。名残惜しむような桜吹雪が、浜町公園の並木とタイミングがば

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