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読書暮らし

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#エッセイ

小さくて賢いともだち

小さくて賢いともだち

最近読んだ本に出てくる登場人物のなかでぶっちぎりで友達になりたいのが今回読んだ『小さなバイキング ビッケ』(ルーネル・ヨンソン)に出てくる主人公のビッケだ。

【あらすじ】
スウェーデンやノルウェーの海岸に1,000年ほど前存在していた海賊。「バイキング」と呼ばれた彼らは力を使って、町をおそっては人々から恐れられていました。そんななか、力ではなく知恵を使って戦った小さなバイキングのお話。

海とは

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一緒に暮らしてみたいいきものたち

一緒に暮らしてみたいいきものたち

幽霊やお化けは大の苦手なくせに「なんかちょっと不思議なもの」に異様に憧れる子どもだった。

妖精や、妖怪に会えたらいいのに、とどこかに遊び行けばあちこち覗き込んで予期せぬ出会いを期待していた。

きっとそういう存在のものが人間に対してとは全く別問題で、その土地を守るものであるとわかっていたからだと思う。

今でもいるのかいないのかという話になったら「見えないだけで絶対いる派」のわたしは、たまたま運

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雨と映画館は似ているのかもしれない

雨と映画館は似ているのかもしれない

「映画館」という存在が昔からすきだった。

足を踏み入れた瞬間漂ってくる甘ったるいキャラメルの香り、チケットを購入するときのガラス越しのひんやりとしたやりとり、どこの席にしようかなと悩む少しのドキドキ、期待と感想が入り混じったざわめくロビーと、非現実的な大きさのポップコーン。

もぎられたチケットを手に暗くなった場内に一歩入ればそこはもう、違う世界で。

何をすることも許されず、ただただ二時間スク

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好きなものを守るために/赤毛のアン

好きなものを守るために/赤毛のアン

岡山に旅行に行ったときにたまたま見つけた古道具屋屋さん。どうしようもなくときめいてしまったことをきっかけに古道具っていいな…と思うようになった。

東京に戻ってきてからも、検索しては回り道をしてお店を探して覗いている日々だ。

古道具屋さんに行くといつもほんの少しだけ「おばあちゃんちの匂いがする」と思う。

年季が入りすぎて元の色が何だったかわからないくらいの木材で出来た棚や、ちゃんと閉まるか不安

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ちょっぴりの変化/ふたりのロッテ

ちょっぴりの変化/ふたりのロッテ

小学生のときにひとつ上の学年にふたごの男の子がいた。

ふたりとも背が高くて、足も速くて、少しかっこよくて、やんちゃな子と優しそうな子とどっちがタイプ?なんて、よく女の子たちで盛り上がっていた。

わたしは優しそうな子のほうがかっこいいと思う派だったのに、仲良くなってしまったのはやんちゃな子のほうだった。

わたしもやんちゃ側の人間(?)だったので一緒になって追いかけっこしたり、ぶつかりあったりし

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わたしがほしい「時間」ってなんだろう/モモ

わたしがほしい「時間」ってなんだろう/モモ

過去に起こったことのように話しましたね。でもそれを将来起こることとしてお話ししてもよかったんですよ。わたしにとっては。どちらでも大きなちがいはありません。

『モモ』(ミヒャエル・エンデ:岩波書店)の「みじかいあとがき」に書かれたこの部分を読んだときが、いちばんぞくりとしてしまう。今回も、それから確か前に読んだときも。

初めてこの本に出合ったのはいつの頃だったかな、と思い返す。

たぶんそれは小

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優しい幸せな国でありますように/キラキラ共和国

優しい幸せな国でありますように/キラキラ共和国

『ツバキ文具店」を読んで、鎌倉っていいな、手紙っていいなと思って気に入って何度も読んだ。その続きの物語が今回読んだ『キラキラ共和国』(小川糸:幻冬社)

前作よりも主人公の鳩子が地に足がついたような印象を受ける。

例えば、前だったら仕事をしたら近くのお店にご飯を食べに行っていたこと。

それがそのときにある食材や、旬のものを使って簡単にでも料理をするようになった。小さな変化かもしれないけど、鳩子

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本当にかっこいいのは誰?/エーミールと探偵たち

本当にかっこいいのは誰?/エーミールと探偵たち

いいなあ、と読み終わったあと小さく呟いてしまった。

知らない街で、知らない子と仲良くなって、一日中走り回って、見張りをして、悪いやつをとっ捕まえて。

そんなわくわくするような体験わたしもしてみたかった。その場にいたら仲間に入れてもらいたかった。

だけど、残念ながら今回読んだ『エーミールと探偵たち』(エーリヒ・ケストナー:岩波書店)に出てくる探偵たちはみんな男の子たちで、女の子といえばほんのち

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人にも、自分にも優しくするための料理/気まぐれな夜食カフェ

人にも、自分にも優しくするための料理/気まぐれな夜食カフェ

商店街の外れの、人が一人やっと通れるような細い路地の奥の突き当たり。夜だけ営業している夜食カフェ「マカン・マラン」。

このお店にたどり着くことができる人は、きっととんでもなくラッキーな人。

あらすじとしてはドラァグ・クイーンのシャールが夜だけ開くカフェ「マカン・マラン」に悩め人々が訪れ、少しずつ元気になっていくというもの。

【目次】第一話 妬みの苺シロップ第二話 薮入りのジュンサ

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ほしいのは、こんな友達/あしながおじさん

ほしいのは、こんな友達/あしながおじさん

「あしながおじさんがほしい」なんて、学生のときによく友達とぼやいていたことを思い出す。

例えば「援助交際」がしたいとか、今でいう「パパ活」がしたいとか(同じか)特に深い意味があったわけではなく、ただ単に「定期的に何もしないでお金が欲しい」くらいの他愛もない会話だったと思うけど、いかにあしながおじさんを読んだことがないかがバレる恥ずかしい会話だったなあと今ならわかる。

あしながおじさんは「不幸な

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片手で持てるくらいの小さな存在だけど/図書室のキリギリス

片手で持てるくらいの小さな存在だけど/図書室のキリギリス

こういうのはさあ、ずるいんだよねえ、と思いながら絶対に手を取ってしまうジャンルがある。

それは「本屋」だとか「図書館」「図書室」みたいな単語がタイトルに入ってるもの。多分ほとんど無意識的に手に取っている。

だって本がすきなんだもの、そりゃあすきなものが題材になっていたら気になるでしょうよ。

冒頭を読み出してからだいたい、ああ、またつられてしまった、と気付くのだけど、今回はちょっと気になってし

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「思い込み」の力ってすごい/オズの魔法使い

「思い込み」の力ってすごい/オズの魔法使い

『オズの魔法使い』(ライマン・フランク・ボーム:新潮文庫)は、1900年、100年以上前に生まれた物語だ。

そう思うとかなり昔の作品のような気もするけど、そういう意味での古臭さは全くない。

ただ、なんとなく知った気でいたこの物語だけど、ドロシーたちの願いを叶えてもらうまでこんなに時間がかかっていたのか…というのが、読み終わったあとに抱いた感想かもしれない。

【あらすじ】ある日突然、大きな

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人が大きく変わってゆく姿をこんなにもそばで見ることができる/秘密の花園

人が大きく変わってゆく姿をこんなにもそばで見ることができる/秘密の花園

最初の庭園もの(?)が『トムは真夜中の庭で』だったからか、今日読んだ『秘密の花園』(バーネット:西村書店)も、てっきり魔法がかった物語なんだとばかり思っていました。

この物語では特に終盤、「魔法」という言葉が連呼されるけど、魔法だなんていう、ある種、他人任せなものではなく、自分で気持ちを強くもって努力をすれば、これだけ変わることができるのだと教えてくれる成長の軌跡の物語でした。

【あらすじ】

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誰だっていつでも子どもに戻れる/トムは真夜中の庭で

誰だっていつでも子どもに戻れる/トムは真夜中の庭で

『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス:岩波少年文庫)を読んだ。

初めて手に取ったとき、ずっとずっと昔の物語なんだろうと勝手に思っていたけど、日本で初版が出たのは1975年。わたしが生まれるたったの25年前のことだった。

秘密がある庭ってすごくすごく魅力的。

自分だけの庭で、自分だけの秘密基地を作って、自分だけの友達ができて。

これは「時」をテーマにした、とてもきれいなファンタジー。

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