見出し画像

【コラム】『先発予想が難しい』~2024年に臨むファジアーノ岡山の編成を見て~

1月9日からファジアーノ岡山の2024シーズンが始動した。
昨シーズンは緊急入院によって7月からリタイアになりましたが、新シーズンは始動日から練習取材に行くことができています。
「今年こそJ1昇格を!」と意気込みつつ、体調管理に注力して、1シーズンを走り切りたいと思っています。
2024シーズンも、どうぞよろしくお願いいたします。
まずは編成を見て、ああでもない、こうでもないと言いながら考えたことを書きました。

1月8日、2024シーズンを戦うファジアーノ岡山の背番号リストが発表された。それを見た僕は、頭を悩ませていた。

背番号リストの発表。それは編成がほぼ固まったことを意味する。ファジアーノは13人の新戦力を加えた30人で、J2優勝とJ1昇格を目指す。

バランスの良さを感じる編成だ。2シーズンにわたって主軸を担った外国籍選手が退団し、濱田水輝選手をはじめチームに長く在籍した選手が去った。寂しいお別れを受け入れるところからスタートしたオフシーズンだったけど、加入リリースが発表されるごとにワクワクした。昨季の主力が大幅に残留し、実力者、経験豊富なベテラン、将来有望な若手が加わった。

チームの顔ぶれを見ると、どの選手が試合に出るのか予想したくなる。それが毎年のルーティンになっているから、2024シーズンも考えてみた。

しかし、全く予想できない。

どのポジションも選手層が厚すぎる。

GKには東京五輪ドイツ代表のスベンド・ブローダーセン選手が横浜から加入し、2,022年から守護神を務めている堀田大暉選手が残留した。パワフルなシュートストップを武器とする188cm89kgのドイツ人GKと、足元の技術に秀でている背番号1が熾烈なポジション争いを繰り広げていく。ただ、チーム最長の在籍7年目を迎えた金山隼樹選手も貪欲に試合出場を狙っている。東洋大から入団した川上康平選手は、昨季の練習参加時にチアゴ・アウベス選手の強烈なシュートに食らいつき、守備範囲の広さも見せていた。非常にハイレベルな競争が繰り広げられる中、どの選手がゴールマウスの前に立つのか。吉岡宏GKコーチによるハードなトレーニングから目が離せない。

DFは3バックも4バックも対応可能なメンバーが揃った。印象的なのは、CBでプレーできる選手の充実具合。柳育崇選手、鈴木喜丈選手、本山遥選手は昨季の中盤戦から鉄板の3バックを形成した。武者修行先の秋田で主力を張った阿部海大選手は、自信を深めて帰ってきた。田上大地選手、柳貴博選手は実力実績ともに十分で、藤井葉大選手は高校サッカー選手権大会で青森山田(後に優勝した)を相手に存在感を放っていた。

SBは、左に高木友也選手と高橋諒選手、右に末吉塁選手と河野諒祐選手がいる。さらに鈴木選手と田上選手、藤井選手は左SB、本山選手と柳(貴博)選手は右SBでもプレー可能だ。

昨季に主将を務めた柳(育崇)選手が軸になっていくと思うけど、現段階でポジションが確立された選手はいないだろう。木山監督が率いた2年間で、3バックと4バックを柔軟に使い分けられる素養が備わった。だからこそ、読めない。DFラインの人数が定まらないから、スタメン予想の大枠も決まらない。

ただ、個人的には4バックが面白いと思っている。得点力をアップするためには、前線に人数を掛けたい。3バックだと5バックになって守る場面が多く、どうしても後ろが重たくなってしまう。4バックで守ることができれば、重心を下げ過ぎずに済むし、前線からのプレスも掛けやすくなる。阿部選手と柳(貴博)選手はスピードがあるからカバーリングでも貢献してくれると思う。本山選手と鈴木選手がSBでプレーすることによって守備を強化しつつ、2選手は内側に入ってビルドアップに関われる足元のスキルも兼ね備えているから、スムーズに相手陣内に入っていけると思う。4バックで守って、3バックで攻める可変式は面白そうだ。

そこで、ここからは基本布陣を[4-2-3-1]に設定して考えてみる。

ボランチも激戦区だ。完全移籍を決断した井川空選手と田部井涼選手は昨季以上に「ファジアーノのために」という熱いプレーを見せてくれるに違いない。加入以来、チームの中枢を担っている輪笠祐士選手は、木山監督からの信頼が厚い印象だ。期限付き移籍を延長した仙波大志選手は、巧みなターンで相手の矢印を折れる稀有な能力をもっている。

ここに百戦錬磨の竹内涼選手と藤田息吹選手が加わった。竹内選手は4年連続で清水の主将を任されており、岡山でもリーダーシップを発揮してくれるのではないか。藤田選手はJ2通算277試合に出場しており、気の利いたプレーで縁の下の力持ちとして活躍してきた。2選手の加入により、昨季に感じた経験不足は解消できたと言える。ベテラン選手が要所で引き締め、勝負強いチームになっていくと期待したい。

法政大から入団した吉尾虹樹選手は基礎技術が高く、パス練習では芝生をきれいに走るインサイドキックを連発していた。背番号25が頭角を現していけば、さらに充実度は増す。

2列目も激しいポジション争いが予想される。背番号10を付ける田中雄大選手は名実ともに中心になってほしい存在で、チームの勝利に直結する活躍を求めたい。

DFラインの陣容と高さが増したFWを考慮すると、精度の高いクロスが武器の高橋選手と河野選手はSHの選手としても考えられる。末吉塁選手と木村太哉選手の突破力は、SHで起用することで存分に生きるだろう。

既存の選手だけでも競争力が高い中、ガブリエル・シャビエル選手がやってきた。言わずもがな、今季の目玉補強だ。2017シーズンの夏に当時J2の名古屋に加入すると、半年間で16試合7得点14アシストを叩き出した。J1でも通算132試合16得点21アシストを記録しており、実績は十分だ。左足のキック精度が高く、ゴール前のアイディアが豊富で、昨季の課題だったゴール前の崩しを解消する活躍に期待が膨らむ。J2を席巻した頃から月日が経ったとは言え、まだ30歳。老け込む年齢ではない。ネームバリュー的にも、予想される年俸的にも、チームの浮沈を担うキーマンであることは間違いない。

いわきから加入した岩渕弘人選手は2列目の中で異彩を放ちそうだ。パスやドリブルが上手い選手がひしめき合う中、得点を取ることに特化した選手という印象を受けた。昨季はケガから復帰した半年間で7得点を決めている。ゴールシーンを見ると、抜け出しとシュートの上手さが目立つものばかり。相手DFの視線がパサーに集まった瞬間に動き出し、入れ替わるように背後に抜け出す。そして、GKの位置を確認して冷静にシュートを流し込む。シャビエル選手のスルーパスに抜け出す姿が容易に想像できる。いわきのSHを務めていたことから、守備での貢献にも期待がもてる。注目したい。

FWも多士済々な顔ぶれだ。昨季に途中出場で流れを引き寄せに引き寄せまくったルカオ選手が残留し、韓国2部の慶南FCからグレイソン選手、秋田から齋藤恵太選手が加入。明治大から太田龍之介選手が入団した。

ルカオ選手が191cm、グレイソン選手が186cm、太田選手が185cm、齋藤選手が181cmと、全員が180cmオーバー。FWの平均身長は185.8cmで、昨季と比べると約2cm高くなった(昨季は182.7cm)。それぞれに異なる持ち味がある中、単純に大きい選手が最前線に入れば、クロスやセットプレーからの得点増加が見込める。

ただ、1トップだと勿体なさも否めない。昨シーズンはルカオ選手のパワーが相手の脅威になっていたと強く感じたし、それは今シーズンも変わらないだろう。齊藤選手は2年連続でホーム最終戦にカウンターから得点を許しており、爆発的なスピードが脳裏に焼き付いている。今シーズンは味方になるから、とても心強い。

グレイソン選手と太田選手がJリーグ1年目から、どれだけ活躍できるのかも得点力アップのカギになる。グレイソン選手のInstagramでゴールとアシストの動画を見ると、相手DFの背中を取ってクロスを呼び込むポジショニング、ヘディングシュートを枠に飛ばす上手さが光った。太田選手はファジアーノU-18出身の選手であり、それだけで期待値が高いのに、インカレでは大会得点王に輝いてチームを優勝に導いた。クラブ内外からの期待を強く感じる。プレーを見た印象は、万能型。ポストプレーとスペースに流れるプレーを使い分けて前線で起点になり、自分の背中で縦パスを消しながらボールホルダーにアプローチすることもできる。タッチも柔らかく、ゴール前の嗅覚があり、得点パターンも多彩。プロの舞台でどれだけ活躍できるかが重要なポイントだけど、昨季に千葉の大卒ルーキーの小森飛絢選手が13得点を決めていることから、太田選手も匹敵するくらい活躍できるはず!

多様な特長をもつストライカーを1人しか起用できないから、1トップは勿体ない。2トップにすると、2列目の選手を削らないといけなくなる。3バックも面白そうだけど…。

とりあえず[4-2-3-1]を基本布陣に設定し、全選手について考えながら思考を巡らせてみたけど、全てのポジションで誰が出るのか本当に未知数だ。2022シーズンを踏まえると、ルーキーが存在感を放っても不思議ではない。外国籍選手には強烈な力を発揮して、チームを浮上させていってほしい。もちろん、既存の選手はポジションを譲る気なんて一切ない。ベテラン選手の豊富な経験値も頼りにしたい。

考えた末の結論は、2チーム分くらいできる!

直近2年間を振り返ると、コンディション不良やケガによる離脱が響いて、力を最大限に発揮にできない時期があった。しかし、今季は実力差が拮抗した選手が各ポジションに2人以上揃っている。充実の戦力を1年間通して余すことなく発揮し続け、1試合1試合を積み重ねていく。その先に悲願のJ1昇格が待っているはずだ。

木山体制1年目はアグレッシブに戦って昇格にあと一歩まで迫り、自信をもって迎えた2年目は高い壁に跳ね返された。万全の体制が整った3年目は、捲土重来を期す。開幕まで約7週間。宮崎キャンプも含めて、しっかりと動向を追っていきたい。そして木山監督が今季に志向するスタイルを理解し、開幕戦の1週間前には「これが先発予想だ!」と胸を張って言える状態にしたい。

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

読んでいただきありがとうございます。 頂いたサポート資金は遠征費や制作費、勉強費に充てさせていただきます!