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【レビュー】『たくましい忍耐力と浮き出た課題』~第7節大分トリニータVSファジアーノ岡山~


試合結果

024 J2 第7節
3/30 14:03K.O. @レゾナックドーム大分
大分(0-0)岡山

スタメン

マッチレポート

5連勝ならずとも見せた、たくましい忍耐力

大分と岡山がレゾナックドーム大分で激突した一戦は、互いに勢いよくプレスを掛け、攻守の切り替えを鋭く行ったことで、激しい肉弾戦が繰り広げられた。

首位の岡山は、3バックの中央を務める田上がしっかりとディフェンスラインを押し上げることでコンパクトな陣形で攻守をアグレッシブに展開していく。セットプレーをたくさん獲得しながらゴールに迫る中、8分、左CKを仙波が蹴り込むと、阿部がニアサイドに飛び込んで合わせる。体を反るようにして放ったヘディングシュートが枠を捉えたが、相手選手にライン上で掻き出されてしまう。さらにこぼれ球を拾った木村が右足を振り抜くも、GKの体に当たった。

一方、9位タイの大分は、トップ下気味の立ち位置を取る長沢が192cmの高さを生かしてロングボールを収め、右サイドからのクロスでゴールに向かった。しかし、ストロングヘッダーの長沢がPAを離れて組み立て起点を作っているため、ゴール前の迫力が上がらず。GKスベンド・ブローダーセンを慌てさせる場面を作れなかった。

攻撃を仕掛けているのにラストプレーの精度が高まらず、相手の守備が堅いことも相まってゴールを脅かすまでには至らない両者。しかし、0‐0で迎えた後半に試合が大きく動く。51分、岡山のCKを耐えしのいだ大分がカウンターを発動。こぼれ球を拾った野嶽が末吉を突破し、広大なスペースに走り込んだ渡邉がドリブルで突き進むと、猛スピードで戻った柳貴に倒された。このプレーが決定機阻止と判断され、柳貴は退場となり、岡山は残り約40分間を10人で戦うことに。

その後は、数的優位の大分が一方的に岡山を押し込んでいく。ホームチームがパスを繋いで左右に揺さぶりを掛ける中、アウェイチームは途中出場のパワフルなルカオを前線に残し、横スライドの徹底で応戦。1人少ないことでそれぞれの運動量は確実に増したが、全員で懸命に守る。89分には大分にPA内へ鋭い縦パスを打ち込まれて完全にゴール前を崩された。絶体絶命のピンチ。しかし、途中出場の右WB河野が内側に絞って体を投げ出す。執念のブロックで何とか守り切った。

岡山はクラブ記録の5連勝がお預けとなった。しかし、後半の頭から数的不利になる苦しい展開で、全員が力を振り絞って守備の決壊を防いで勝点をもぎ取った忍耐力は本当にたくましかった。

コラム

分岐点となった51分の退場。
問題は個人ではなくチームにあり

今節の分岐点となった、51分の柳貴博の退場シーン。各方面で議論になっている中、柳貴博に称賛を送りたい。

確かに10人になってから苦しかった。1人多い相手を上回って勝つことは非常に難しい。粘り強くゴールを守り切り、何とかセットプレーを獲得して柳育崇の一発で―。それしか5連勝への道は残されていなかった。

ただ、52分の場面を振り返ると、問題なのは背番号88が相手を倒したことではない。むしろ完全に置いていかれたのによく間に合った。そもそもCKの攻撃時のリスクマネジメントに問題があったように思う。全員がファーサイドに流れたボールとそれに対応する阿部を見て棒立ちになっているし、そろりと上がろうとしている渡邉の存在を察知できていない。守備の初期配置には問題なかったと思うが、状況が変わろうとしている場面で動けなかった。

退場した選手を責めるのは簡単だ。もしあそこで失点しても11人だったら十分に取り返せ、勝ちにいけたと言うのは今のチームに自信がみなぎっているからで、そのマインドは頼もしい。しかし、退場しなくて済むような準備・行動があったはずだ。

第7節を終えて負けなしの首位。最高のスタートを切った中、今節に浮き上がった課題を解決し、もっと隙のないチームを作っていけばいい。望んだものではなかったが、柳貴の退場はチームのために誰よりも早く動き出した結果。気持ちを切り替え、背番号88の活躍で勝った、と笑える日を待っている。

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