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【レビュー】『勝利を呼び込む好循環』~第5節ファジアーノ岡山VS水戸ホーリーホック~


試合結果

試合結果
2024 J2 第5節
3/20 14:00K.O. @シティライトスタジアム
岡山(1-0)水戸
40分 グレイソン

スタメン

マッチレポート

選手層の厚さを発揮した岡山。3連勝で首位堅持。

岡山が選手層の厚さを存分に発揮した。前節から中3日で迎えた今節は先発4選手を変更。柳育、本山が3バックに、河野が右WBに、田中がシャドーに入ると、持ち味を存分に発揮していく。前半は強い風と雨が降ったりやんだりする悪天候の中でスタート。高く上がったボールが大きく戻され、芝生もスリッピーな難しい環境だったが、冷静に適応した。3トップが激しくプレスを掛けてロングボールを蹴らせ、柳育が圧倒的な高さで跳ね返し、セカンドボールを藤田がことごとく回収する。このサイクルを主体的に回し続け、主導権を掌握。2分には左サイドを崩されて肝を冷やしたが、それ以降は昨季に不動の3バックを形成した柳育、本山、鈴木が阿吽の呼吸で決定機を作らない。グレイソンのポストプレー、田中のターンでボール中心に人数を掛ける相手の守備をいなしていき、河野が右サイドから鋭いクロスを供給してゴールに迫った。ゴール前でわずかにパスがズレたり、選手間の意図が合わずに決定機を作れない時間が続いたが、37分に頭で描いた崩しの絵が1枚になる。中央で田部井がパスカットし、本山から河野の足元にズバッと縦パスが入ると、背番号16は斜めにパスを供給。これをグレイソン1タッチで右前にはたき、田中もダイレクトでゴール前へ送る。岩渕も連動して、最後は逆サイドから走り込んだ末吉が倒されてPKを獲得。グレイソンがGKの逆を突いてネットを揺らしてみせた。

後半は水戸が積極的に選手交代を行って反撃の糸口を探る。67分には途中出場の山崎が左サイドを抜け出していくも、ここは本山が快足を飛ばしてカバー。濱崎監督は73分に188cmの寺沼、186cmの久保を同時に入れて高さを加えたが、岡山の対応も早かった。その直後に木山監督が田上と柳貴を投入し、本山をボランチにスライドさせる。試合終盤は水戸がサイドからクロスを放り込んでロングスローも混ぜながら反発するも、岡山は冷静に対処。各個人が球際を激しく戦い、GKブローダーセンが常に大きな声で守備陣の集中を促し、危なげなく守り切った。

メンバーを代えても岡山の力は全く落ちず。ピッチに立った選手が強みを出し、チームの約束事を遂行して3連勝を達成。“誰が出ても同じサッカーができる”総合力の高さで、首位をガッチリとキープした。

コラム

こぼれ球を吸い寄せる藤田息吹。
回収の秘訣は絶え間ない微調整にあり。

全てのルーズボールが吸い寄せられている。そう感じるほど、藤田息吹はこぼれ球を拾い続けた。

特に今節の勝利に大きく貢献したのが、3バックが競った後のボールの回収だ。前半は強烈な向かい風を受けながらプレーした。落下地点の予測が難しくても弾き返し続けた柳育の空間把握能力には脱帽だったが、クリアボールが戻されてしまうことが少なくなかった。短くなったクリアボールを拾われると、より自分たちのゴールに近い位置で相手の攻撃が続いてしまう。しかし、藤田がそうはさせなかった。柳育が競り合うタイミングで常に近くに立ち、素早い反応でマイボールにすると、少ないタッチでの散らしでボールを逃がして相手の攻撃を断ち切った。

なぜ、あれだけこぼれ球を拾えるのか。その力はもはや神がかっている域に達しているが、藤田を追いかけるように試合を見ると、背番号24はいつもボールの近くにいる。ボールの移動中に必ずボールの進行方向に数歩移動している。常に足を動かして数m、いや数cm単位の移動をすることで、誰よりも早くルーズボールに反応できる。もちろん豊富な経験に基づいた予測や試合の流れを読む力も関係しているが、ボールが動く度に自らも動く、絶え間ないポジションの微調整がこぼれ球奪取力の土台になっているに違いない。

他の追随を許さないプレーの連続性で相手を圧倒し、ボールを拾いまくる。34歳のベテランが縁の下の力持ちとしてチームの躍進を支えている。

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