【読書感想文】『やっぱり監督ってすごい』~サッカー監督の決断と采配~

やっぱり監督ってすごい

本書を読み終わり、監督に対するリスペクトの気持ちがとてつもなく大きくなった。

大分トリニータを長年取材されているひぐらしひなつさんが、Jリーグを中心に指揮を執る9人の監督に取材を重ね、その生き様と采配の舞台裏を書いたノンフィクション短編集だ。

目次に記された監督のラインナップを見ると、そうそうたる名前が連なっており、それだけでもワクワクが止まらなかった。その中に現在ファジアーノ岡山を率いる木山隆之監督の名前を見つけた時にはもう読まずにはいられなかった。

本書のテーマは「決断」と「采配」だ。監督が何を考えて采配を下しているのか、それが導いた結果をどう受け止めているのか。少し読んだだけでも丁寧な取材をもとに深く掘り下げられていることが分かる。

監督のすごさ。それは成功と失敗が紙一重の中で決断し続けることだと思う。

下した決断によって、どのような結果が待っているかは神のみぞ知る。勝利や優勝などそれぞれの目標に向かってその時々の最善の一手を打つ。より良い決断を下す中で、勝つかもしれないし、負ける可能性もある。とにかくやってみないと分からない。

結果は成績と直結してくるため、非常に重要である。結果が評価を大きく左右し、それはやがて人生にまで影響を及ぼす。監督の決断で自分の進退だけでなく、選手、スタッフ、チームに関係する多くの人の人生も左右しかねない。極めて責任のある仕事だ。

誰かの人生を背負っている。チームの命運がかかっている。そんな大役を自分は務めることができるだろうか。想像するだけでもめまいがする。自分はそんなに強い人間ではないから、重くのしかかるプレッシャーにきっと押し潰される。体調を崩しても全くおかしくない。自分には到底できない。

どんな監督でもずっと結果を残し続ける人はいないだろう。名将と呼ばれる成功の多い監督は存在するが、失敗やうまくいかない時期の方が長い。どちらかと言うと、そういう監督の方が多いように思う。身を置くのは勝敗を争う世界であり、極めて難しい仕事である。

勝てば称えられ、負ければ叩かれる。結果に左右されることがすごくハッキリとしているため、クビになることもある。

どんなに叩かれても、任を解かれても、また修羅場とも言える監督の席に身を置く。それはなぜなのか。人としての強さがあり、勝負の世界だけで味わうことのできる爆発的な喜びをまた味わうために、オファーがある限りチームを率い続けるのだろうと思う。

9人の指揮官が抱くそれぞれの想いを読み進めていくと、信じる力強さが半端ないことが分かった。自分の決断を、選手を信じる。結果がどう転ぶか分からない勝負の世界において、迫られる決断の連続を乗り越え、チームをより良い方向へ導こうともがく監督を続けていくには、信じることのできる心の強さが必要不可欠なのではないか。

魂を削り、神経をすり減らし、身を粉にしてチームを率いる。すごいことをやっているサッカー監督への尊敬の念であふれた。これからもより一層リスペクトの気持ちを持って、取材活動をおこなっていきたい。

この記事が参加している募集

#読書感想文

187,194件

#サッカーを語ろう

10,673件

読んでいただきありがとうございます。 頂いたサポート資金は遠征費や制作費、勉強費に充てさせていただきます!