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トラウマ治療のためのスキーマ療法(2)

↓ の記事の続きです。

本章では実際にどういったセッションを行うのか解説します。

トラウマ体験に今の自分が介入する

スキーマ療法はイメージ療法です。
セラピスト(臨床心理士等)と1対1で行います。

①患者が過去のトラウマ体験(多くは幼少時の経験)をセラピストに話します。
例)小学校のころ、こういうことがあって、母親にこう言ったら、○○と言われた。○○された。など

②患者はリラックスして目を閉じ、その経験をゆっくりと回想します。

③子どもの自分が傷ついたシーンで、現在の自分を登場させる。自分を傷つけた相手に、今の自分として言いたいことを言う。

(実際に声に出します。)

④子どもの自分を守り、励ましてあげる。

⑤子どもの自分がもう傷ついていないことを確かめて終了。

ざっくり書くと、このようなことを行います。
所要時間は1回30分~1時間くらいです。

このセッションを1~2週間おきに繰り返します。

治療期間は本当に様々です。

深刻なトラウマを抱える人が何年もかけて治療した症例もあれば、自分のように、3か月程度集中的に行い、その後は必要に応じてセッションを受ける人もいます。

なぜこれでトラウマが癒えていくのでしょうか?

トラウマが癒えるということは前章で解説した「早期不適応スキーマ」が正しいスキーマに書き換えられ、「認知の歪み」が改善するという事です。

スキーマ療法はイメージ(無意識の世界)に干渉し、過去の体験を解釈しなおすことでそれを行います。

そのためには、大切な条件があります。

治療に必要な条件

セラピストとの信頼関係

過去の傷つき体験をリアルに想起するとネガティブな感情に見舞われます。
深刻なトラウマがあるとパニック状態に陥る可能性もあります。

怖い、悲しい、不安、焦り、そういった感情に翻弄されないために、患者はセッションの場が「絶対に安全な場所」であると思えなければなりません。

そのために最も重要なのがセラピストとの関係です。

「辛い体験を話したら否定的なことを言われないだろうか?」
「感情を乱したりしないだろうか?」

そういったことを思わせる相手だと失敗します。

患者と適切な距離を保ちつつ信頼をどう勝ち得るのかが、セラピストの腕前です。

性格的な相性ももちろんありますが、認知行動療法的な手法を使える人だとなおいいです。

認知行動療法については今後記事を書く予定ですが、たとえば「ライナスの毛布」です。

スヌーピーに出てくるライナス君

毛布というただの物(道具)が、その人にとって安心感を与えてくれるお守りのような存在になる、という例です。

「物を持つ・ふれる」「ルーティンを決める」などといった「行為」のくりかえしによって無意識領域にポジティブな影響を与えていくアプローチが認知行動療法です。

自身の経験から、治療の成否はセラピストの腕次第と言っても過言ではないです。
(というか、選択を間違って一度失敗しています。)

一人や二人で諦めず、何としてでも探しましょう。

マインドフルネスの習慣化

辛かった過去をリアルに回想しても、ある程度平静が保てること。
これは患者本人の精神状態にも左右されます。

欧米では、性的暴行や児童虐待のような深刻なトラウマケアのためにスキーマ療法がよく使われますが、前段階としてマインドフルネスが行われます。

マインドフルネスは、「今」と「ここ」に意識を集中し、感情の安定や集中力を高めるメソッドです。

そもそもスキーマ療法は、トラウマを癒して認知の歪みを矯正し、精神的な安定を取り戻すための治療なので、目的はほぼ一緒です。

なので、本格的なセッションに入る前に必ずマインドフルネスを習慣づけて、精神的なタフネスを底上げしておく必要があります。

何より、こちらが動揺しづらくなることで、セラピストの方も感情が乱れにくくなります。

つまりストライクゾーンが広がり「相性のいいセラピスト」が増えるので、治療の成功に直結します。

(逆に、今の状態が悪すぎてどんな人とも良好な関係を築けない人は、必ずマインドフルネスを行ってください。)

また、脳機能が向上すると、早期不適応スキーマの原因になった特定の体験が発見できるようになります。

小さな傷つき体験を蓄積させているタイプの人はそれに気づくことが重要になります。

変性意識に入ること

「変性意識状態」という言葉をざっくり説明すると、五感の情報よりも頭の中のことにリアリティを感じている状態です。

日常でもこういう状態はよく経験します。

ぼーっとしている時、考え事に集中している時、酒に酔っている時、あるいは寝起きなどです。

変性意識はポジティブなものもネガティブなものもありますが、そんな時は多かれ少なかれ、普段とは違った物事の認知と行動を行います。

スキーマ療法は変性意識を使って記憶のイメージ(無意識の領域)にアクセスし、過去の解釈を変えていく方法なので、この状態に上手く入れることが重要です。

言い換えれば、「傷ついた過去の自分が癒されている」という空想(イメージ)が、リアリティを持つ時に、スキーマ療法は効果を出すのです。

意識的に変性意識に入るために必要な訓練も、マインドフルネスです。

特に瞑想系は、リラックスしながらも一つの事に集中を続ける練習なので、寝起き(寝てもいないが興奮もしていない)と同じ脳波状態になるようです。

スキーマ療法とマインドフルネスはこのように切っても切れない関係にあるのです。

患者目線で書かれたとてもためになる解説書です。)

癒されていくプロセス

セッションとセッションの間の期間は、なるべく楽しいことをして過ごしましょう。

一回のセッションで心の体力をかなり使うので、休息が必要です。

僕個人の成功体験は、正確にいえば自我統合療法という心理療法でした。
個人的な解釈ですが、スキーマ療法にほぼ近い応用的なものです。

ちょっと恥ずかしいですが、セッションが終わると涙が流れていることもありました。

ですが感情が高ぶっているわけではなく、心の中は信じられないくらい静かでした。

これが精神的な「浄化」というものなのだなと、はっきり実感しました。

僕のケースは、幼少時の衝撃的な体験というより、長年にわたって小さな傷つき体験を重ねてきたものですが、セッションのたびにそれらが癒されていくのを感じました。

そのようにして精神的な安定を取り戻し、重篤なうつ状態からクローズド就職に持ちこめたので、内科的治療と合わせてマインフルネスとスキーマ療法を行うことを強くお勧めします。

トラウマを持ってない人などいないと思っています。

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