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【読書ノート】49「外国人差別の現場」安田浩一・安田菜津紀

現在様々な場所で活躍しているジャーナリストの安田菜津紀氏、安田浩一氏による日本社会の「外国人差別の現場」のルポタージュ。今まで日本政府・入管などは外国人を社会の一員として認識せず「犯罪者扱い」してきた傾向が顕著であるが、入管が戦前の「治安維持」を行った特高警察の影響を受けた制度・施設であることは本書で初めて知った。政府の「管理」「監視」「排他」すべき「治安維持」の対象が戦前は社会主義者や共産主義者、無政府主義者だったが、現在は(難民を含む)外国人になっていることが良く理解出来る。
著者たちが述べるように外国人労働者は今や日本にとって不可欠な存在であるからこそ、適切な政策による共存のシステムを一刻も早く確立すべきである。

「移民に日本が乗っ取られる」「移民によって日本が日本でなくなる」
こうした声は決して小さなものでもない。
排外主義を活動方針に掲げる団体の代表は、私の取材に対して 次のように答えた。
「これ以上外国人を増やしたら日本の文化も伝統も破壊される」
いや、逆じゃないのかと言いたくなる。
いま、日本の田園風景は誰が守っているのか。
地場産業、伝統産業を護っているのは誰なのか。実習生をはじめとする外国人ではないか。
そう、すでに私たちは 外国人労働力なしでは、やっていけない社会で生きているのだ。
だからこそ —--搾取と差別で機能している実習制度など、1日も早くなくすべきだと私は考える。
誰かの犠牲によって「生かされる」システムなど、存在してはならない。
必要なのは「ともに生きる」ためのシステムだ

p218

2021年、政府は 入管法改正し、入館 当局の権限をさらに強化することを企んだ。・・・
あえて強調したい。こうした政策を支えているのは、いや、呼応しているのは、日本社会の中に座っている排他の気分だと私は思っている。
長きにわたり、日本社会は内に差別と偏見を抱えてきた。外国人を貶め、時に「敵」だと認識し、差別を正当化し、それを政策にも盛り込んできた。
今、様々な場所で問題となっているヘイトスピーチも、急に生まれたわけではない。差別の影は時代に合わせてリニューアルを繰り返してきただけだ。
私たちは、私たちの社会は、未だに差別を克服していない。

p287

(2023年12月26日)


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