マガジン

最近の記事

私の誕生日/妹の誕生日

 4月生まれの宿命として、新しい環境で誕生日を祝ってもらうことはそうそうない。仲良くなって、誕生日の話題に至る頃には、たいてい自分の誕生日は終わっている。  でも今年はひょんなことから新しい職場で誕生日の話題になって、ちょっと言いづらいな、気を遣わせるなと思いつつ、「実は来週なんです」と言っていたもんだから、みんなにおめでとうと言ってもらう。昼休みは、高級中華料理店のリーズナブルなランチに上司が連れ出してくれた。  それにしても今月の生理は重い。すこぶる体調が悪かったが、

    • バスタを背にして/蓄音機と現代文

       朝、Spotifyで音楽を聴く。休日に聴いていることが多い「ホットケーキの朝食」と題がつけてあるプレイリストをかけていたら、耳に留まるフレーズがあった。  ん?いま「バスタ」って言った?甲州街道ってことはあの「バスタ」ってことだよね?一時停止して、もう一度聴き直しながら歌詞をみてみると、やっぱり「バスタ」と書いてあった。新宿駅の歌だなんていままで一切気づかなかった。新宿区民になったとたん聞こえてくるフレーズがあるもんだ。調べてみたら、NEWoMan新宿という商業施設とのタ

      • だから年パス/ささやきに耳を傾ける

         Chromebookが届く。数日前、だましだまし使っていたノートパソコンがついにだめになった。忙しない毎日で大きい買い物を即決するほどの気分的な余裕がなく、とりあえずはこの日記の執筆ができればいいし、持ち運びしやすい軽いものがよかったので、試しにサブスクで借りる。これで長文も書きやすくなるかな。  昼過ぎ、そうだ新宿御苑に行ってみよう、と思い立つ。途中で近所の町中華の店にふらっと入ったりしながら、徒歩で大木戸門の入場口へ。ゲートの案内を見ていたら、年間パスポートがあること

        • 東京の上司/玉野の親戚

           出勤8日目。仕事帰りに40代女性の上司二人がご飯に連れて行ってくれた。入社前、オフィシャルな媒体や場所で顔や名前、その仕事を見ていた人たちなので、並んで座って円卓を囲んでいることが奇跡みたいな気分だった。加えて、「上司に仕事帰りご飯に連れて行ってもらう」がこの歳にしてやっと叶ったことへの感慨も大きい。ちゃんとした直属の部下として扱われるという感覚もはじめてのことだ。    職場からほど近い中華料理の店。私たちはそれぞれハイボール、水、青島ビール(私)を飲みながら、焼き餃子、

        私の誕生日/妹の誕生日

        マガジン

        • 日記(仮)
          6本
        • essay
          18本
        • collage
          11本
        • 平成訳七十二候
          6本

        記事

          ふつうの相談/ファースト愚痴りタイム

           日曜日に買った本、東畑開人『ふつうの相談』を読み進めている。表紙を開けてタイトルから一枚目にある、主題に関連した引用句(これをエピグラフと呼ぶらしい、今回あとがきを読んではじめて知った)に中井久夫のこの一節があって、買うことがほぼ決まってしまった一冊だ。  相談って、別に専門家の専売特許じゃなくて(例えばカウンセリングルームみたいなところで行われるものだけでなくて)、職場での立ち話とか、友人との秘密の会議とか、そういうあらゆるところにあるよね、というのが「ふつうの相談」と

          ふつうの相談/ファースト愚痴りタイム

          日記を書こうと思う/7冊本を買った

           日記を書いてみようと思う。  理由はいろいろある。一つは、4月から仕事・住む土地・家が変わったから。案外、通常運転でやれているのだけれど、やっぱりここまでがらっと全てが変わると、自分が自分として接続していくために何かしないとなという感じがする。日々の発見や変化もあるので、時々の手触りを残したいのもある。  二つ目は、何でもいいので書き続けたいから。業務日誌とか相談記録とか、毎日の仕事上必要な記述について「いいね」と言ってもらうことが多かったけど、今度の仕事はそういうもの

          日記を書こうと思う/7冊本を買った

          しもやみてなえいずる

          霜止出苗(しもやみてなえいずる) その日はとにかく食べ続けていた。久しぶりに会う友人との遅めのランチは、昭和の香り漂う渋いスナックの看板が並ぶ通りにある店で、古風なカレーライスとチーズケーキのセット(紅茶付き)。チーズケーキの持ち帰りが人気のようで、ぽつりぽつりとお客さんが来ては買って帰る。スフレ仕立てで軽い口どけ、なるほどこれは無限にいける。常連客が大きなワンホールを買って一人で食べるなどというので、ご主人自ら止めたらしい。人がいい。続いて古本屋、軽く珈琲でも、と思ってい

          しもやみてなえいずる

          あしはじめてしょうず

          葭始生(あしはじめてしょうず) 北風と太陽。朝と晩の気温差に、脱いだり着たりを繰り返す。季節の移ろいによって左右される装いではあるが、それを縛るのは何も実践の面においてのみではない。その日にその日に合わせたドレスコードを嗅ぎ取って服を選ぶことはたのしい。とりわけ足元は大切だ。 展覧会に行くときは、音に配慮したいのと、長時間立っているので、歩きやすい靴を好んで履くことが多いのだが、2年前、森美術館の「六本木クロッシング2016展」に行ったときは別だった。片山真理氏の作品に対

          あしはじめてしょうず

          にじはじめてあらわる

          虹始見(にじはじめてあらわる) 少し前、自動車免許の更新に行った。色気のない手続きに費やすには勿体のないくらいの陽気だった。ありとあらゆる世代の人でごった返す免許センターで、ある共通点に気づいた。誕生日だ。2ヶ月の幅があるとはいえ、僕らはみんな春生まれ。今の姿かたちがどうあれ、社会における立場がどうあれ、皆このうららかな日差しのなかで生まれてきたのかと思うと、それだけで十分めでたいと思われた。講習のおわりに、バースデイカードのひとつくらい配ってもいいのかもしれない。HAPP

          にじはじめてあらわる

          こうがんかえる

          鴻雁北(こうがんかえる) 桜散る。例年よりだいぶ早い。 雁の群れはV字に連なるけれど、先頭の一頭はやはり体力の消耗が激しいらしく、時々交代しながら飛行するらしい。パシュートのようだ。新年度、空気抵抗強めの日々が続く。春の嵐、一緒に隊列を組んで進んでくれる仲間の現れんことを。

          こうがんかえる

          つばめきたる

          玄鳥至(つばめきたる) 年度はじまり。新しい街でぎこちなく踊るワンルームディスコ。はじまったばかりの朝ドラの主人公は、つばめじゃなくて、すずめ。まだ着こなしいまいちの背伸びして買った服、肩の馴染まぬジャケット。切り揃えられた髪。道を訊く人。次々出てくる生活の必要を埋めるべく、慌てて買い足した両手の荷物。暮らすって物要りね。

          つばめきたる

          まえがき 愛しの平成へ

          愛しの平成へ 君、終わるらしいね。あと一年ほどだそうだ。 世間では、次の年号はなにかなにかとヤキモキしているばかりで、君のフィナーレのことはまだあまり気に止めていないようだ。けれど、いまの世を生きているエンペラーが粋なお方で本当に良かった。君の終わり方としては、なかなかいいものなのじゃないだろうか。 君の後任がやってきたとて、なにかが突然変わるわけではないだろう。生活はつづくのだ。それでもやっぱり、なにかとてつもない不可逆を迎えるような気がしてしまって、僕はさみしい。僕

          まえがき 愛しの平成へ

          先日の台風。せっかくの休みなのに終日船が止まってしまって引きこもる。紙モノの整理を兼ねて、とても久しぶりにハサミ作業。

          先日の台風。せっかくの休みなのに終日船が止まってしまって引きこもる。紙モノの整理を兼ねて、とても久しぶりにハサミ作業。

          クラムボンの友人C

          「リップヴァンウィンクルの花嫁」のエキストラに参加したのは、昨年の絶賛フラフラ期間中のことだ。池袋のとある結婚式場に着くと、私に割り当てられたのは、新婦・皆川七海のホンモノの友人席だった。テーブルには六人の同世代の女性。ぎこちなく自己紹介をする。 ホンモノの顔をしたニセモノの私たちが座る豪華な円卓上のグラスには、シャンパンの代わりにジンジャーエールが入っている。それでも、軽部さんの進行も手伝って、途中から本物の披露宴に参加しているような錯覚に陥り、終盤では誰の結婚式でもない

          クラムボンの友人C

          近況報告シリーズその2。材料集め中のコラージュ。3月には完成させたいな。

          近況報告シリーズその2。材料集め中のコラージュ。3月には完成させたいな。

          山形県米沢市で作った「米沢」。紙ねんどです。

          山形県米沢市で作った「米沢」。紙ねんどです。