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マガジン

  • 満たされない僕は

    大学を中退し、フリーターになった吉山悠(よしやまはるか)。 何となく過ごす毎日。 この先の人生について悩んでいたある日の夜、堤防沿いを歩いていると一本の木と出会う。 「世界は埋め合わせやしな」 そんなことを言う木と話していく中で、悠の何かが変わっていって、、、、 人生の中での不安と生きがいの葛藤を描いた物語

  • 人生ゲーム

    短い作品を載せています

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第一話 朝

 うひゃひゃひゃひゃ。  純粋で混じりけのない子供の笑い声だ。ちょー楽しそう。でも、何でこんなに笑っているのかめちゃめちゃ気になる。  すると、急に泣き始めた。 …

わおわお
5か月前
3

第12話 金欠

 やべっ。  本能で危険を察知するかのように目が覚めた。  急いでスマホを見る。六時二十九分。  あっぶねー。  「体よ、頼もしいぞ」  起き上がりながら、自分の…

わおわお
4か月前
3

第11話 夜の堤防

 堤防を歩きながら、夜の景色を眺める。  対岸の街明かりに、水面に映る反転した世界。  見上げると、雲一つない夜空。  白く光る月に、いつもは見えない星々も顔を…

わおわお
5か月前
2

第十話 ガールズバー

 お店へ入ると、十席ほどあるバーカウンターに、胸元の開いた服を着たお姉さんが四人ほどいた。  三人いるお客さんの中にサングラスおじさんも混じっていた。  「二名…

わおわお
5か月前
2

第九話 二人のおじさん

 サングラスをかけた小さめのおじさんと、がっちりとした体型の包容力がありそうなおじさんが入ってきた。  「おー、お久しぶりです」  マスターの知り合いだそうだ。…

わおわお
5か月前

第八話 初めてのバー

 大山ビルと書かれた、少しレトロな建物が見えた。  あそこの一階の一室がバーココロである。  いざ来てみると、不安と緊張で覆われていく感じがした。  やっぱり帰ろ…

わおわお
5か月前

第七話 思いつき

 九月になり、秋らしくなってくるかと思いきや、全くそんな気配がない。  まだクーラーをかけていないと寝れないし、外へ出るだけで汗をかく。    「早く涼しくしてく…

わおわお
5か月前

小さな世界

楽しいな 楽しいな 何でもある どこへでも行ける あれ 何かが足りない 何かが足りない あっ 時間がない はは 知らなかっただけだった

わおわお
5か月前
1

第六話 美紗都

 考え事が一気にどっかへ行った。  女の人に声をかけられることにも驚いたが、それ以上に、名前を呼ばれたことに驚いた。  この辺で自分を知っている人なんて、大学の…

わおわお
5か月前
1

第五話 暇

 右手首のジーンとした痛みで朝なのだとわかった。  いてててっ。  スマホを取ろうとしたが、思うように手が動かない。  左手でスマホをタップして画面を見てみると、…

わおわお
5か月前
1

冬の移ろい

雲一つない真っ青な空に 月がくっきりと見える 住宅街に響く 子供たちの無邪気な声 冬休みだ もうすぐクリスマス 子供と大人の目の色は 同じようで全然違う いつの間…

わおわお
5か月前
1

あらた夜

深夜三時 ひんやりとした空気が頬を触る 換気扇の音だけが響く世界 欠けている月 太陽にありがとうと言ってそうだ 僕はこの世界が好きだ 人がいない澄んだ空気 夜空の…

わおわお
5か月前

第四話 散歩

 家の近くにある堤防を歩きながら、河川敷を眺める。  不格好なトランペットの音の響かせながら練習をしている大学生くらいの女の人、子供と一緒に無邪気になって水遊び…

わおわお
5か月前
1

第三話 バイト

 開店から十分ほどして親父さんが帰ってきた。    「おはようございます」    「おう」  ぶっきらぼうな返事が返ってきた。話すと色々話してくれるのに、挨拶だけは…

わおわお
5か月前
3

第二話 朝の道

 外に出ると、太陽がおはようと叫んでいるかのような快晴だった。    目に差し込んでくる光を瞼で覆いつつ、今日も一日が始まったのだと自覚する。  太陽はいいよな、…

わおわお
5か月前
3

第一話 朝

 うひゃひゃひゃひゃ。
 純粋で混じりけのない子供の笑い声だ。ちょー楽しそう。でも、何でこんなに笑っているのかめちゃめちゃ気になる。

 すると、急に泣き始めた。

 決して同じ人とは思えないくらい、息を詰まらせながら呻くように泣いている。
 子供の情緒ってやばいな…。
 心配するところかもしれないが、のんきにそんなことを考えてしまった。

 ……。

 泣き止んだ。
 気が付くと、真っ暗だったは

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第12話 金欠

 やべっ。
 本能で危険を察知するかのように目が覚めた。
 急いでスマホを見る。六時二十九分。

 あっぶねー。

 「体よ、頼もしいぞ」

 起き上がりながら、自分の体を労う。

 体のべっとりとした気持ち悪さと、頭の少し重たい感じで、昨日のことを思い出した。
 帰ってきてシャワーを浴びる元気もなく、そのままベッドに入ってしまっていた。すぐに寝た気がする。

 そういえば、誰かとちゃんと話したの

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第11話 夜の堤防

 堤防を歩きながら、夜の景色を眺める。

 対岸の街明かりに、水面に映る反転した世界。

 見上げると、雲一つない夜空。
 白く光る月に、いつもは見えない星々も顔を出している。

 昼とは全く別の世界だ。

 あー酔ってるわー。
 いつもはこんな景色を見ても何も思わないはずなのに、この世界に心が浸っている。

 少し降りて、芝生の上で寝転がってみる。

 プラネタリウムじゃん。
 星ってこんなにあ

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第十話 ガールズバー

 お店へ入ると、十席ほどあるバーカウンターに、胸元の開いた服を着たお姉さんが四人ほどいた。

 三人いるお客さんの中にサングラスおじさんも混じっていた。

 「二名様ですか」

 「あそこのサングラスをかけた人の連れです」

 「承知しました。ではこちらへどうぞ~」

 がっちりおじさんが答えるなり、入り口付近にいたお姉さんに案内してもらう。

 これがガールズバーか。
 みんな可愛い。そして破廉

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第九話 二人のおじさん

 サングラスをかけた小さめのおじさんと、がっちりとした体型の包容力がありそうなおじさんが入ってきた。

 「おー、お久しぶりです」

 マスターの知り合いだそうだ。

 「ビールだ、ビール」

 座りながら、サングラスのおじさんが怒っているかのような口調で言った。
 サングラスのおじさんはべろべろ状態で、がっちりとしたおじさんがそれを介抱する形になっている。
 
 「べろべろじゃないですか、大丈夫

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第八話 初めてのバー

 大山ビルと書かれた、少しレトロな建物が見えた。
 あそこの一階の一室がバーココロである。
 いざ来てみると、不安と緊張で覆われていく感じがした。

 やっぱり帰ろうかな、と一瞬頭によぎったが、それよりもバーに入ってみたいという気持ちが強かった。

 カランカラン。

 扉を開けると、オレンジ色っぽい暖色で包まれた部屋に、六席くらいあるカウンターがあった。カウンターの奥で、眼鏡をかけた少しぽっちゃ

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第七話 思いつき

 九月になり、秋らしくなってくるかと思いきや、全くそんな気配がない。
 まだクーラーをかけていないと寝れないし、外へ出るだけで汗をかく。
 
 「早く涼しくしてくれよな」
 
 駐車場にいたネコがこっちを見ていたので、あいさつ代わりにしゃべりかけてやった。
 もちろん、ネコは逃げた。

 
 今日もバイトだ。
 少し重いドアを開けて、山田さんと親父さんに「おはよーございます」と言う。
 暇すぎず、

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小さな世界

楽しいな
楽しいな

何でもある
どこへでも行ける

あれ

何かが足りない
何かが足りない

あっ

時間がない

はは

知らなかっただけだった

第六話 美紗都

 考え事が一気にどっかへ行った。
 女の人に声をかけられることにも驚いたが、それ以上に、名前を呼ばれたことに驚いた。

 この辺で自分を知っている人なんて、大学の知り合いくらいしかいないのに、女の人となると、さらに謎だった。
 
 前を見るまで一秒もなかったはずだったが、五秒分くらいの思考が回った。

 顔を見ると、合点がいった。
 高校二年生の時に仲良くなった美紗都だった。
 高校生の時はたまに

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第五話 暇

 右手首のジーンとした痛みで朝なのだとわかった。

 いてててっ。
 スマホを取ろうとしたが、思うように手が動かない。
 左手でスマホをタップして画面を見てみると、まだ五時四十六分だった。
 
 早すぎだろ。
 ここまでくると、もうちょっと寝ていたい。
 
 ——。

 寝れない。

 ここまで健康体になってほしかったわけではないのに。
 とりあえず、インスタグラムを開いた。

 ストーリーを見よ

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冬の移ろい

雲一つない真っ青な空に
月がくっきりと見える

住宅街に響く
子供たちの無邪気な声

冬休みだ

もうすぐクリスマス

子供と大人の目の色は
同じようで全然違う

いつの間にか
そんな世界の
住人になってしまった

もう帰れないな

あらた夜

深夜三時
ひんやりとした空気が頬を触る

換気扇の音だけが響く世界

欠けている月
太陽にありがとうと言ってそうだ

僕はこの世界が好きだ

人がいない澄んだ空気
夜空の光が一直線に目に届く

誰の声も聞こえない
誰のことも気にしなくていい

照らされている月に照らされる僕
僕にはそのくらいがちょうどいい

騒がしいよ

第四話 散歩

 家の近くにある堤防を歩きながら、河川敷を眺める。
 不格好なトランペットの音の響かせながら練習をしている大学生くらいの女の人、子供と一緒に無邪気になって水遊びをしているお父さん、上裸で寝そべっているおじいさん、犬と散歩をしている老夫婦。
 
 河川敷には、平凡で穏やかな空気が流れている。都会の殺伐とした空気とはまるで世界が違う。ここにいる人たちはどこか肩の力を抜いて生きているようだ。この空気感が

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第三話 バイト

 開店から十分ほどして親父さんが帰ってきた。
 
 「おはようございます」
 
 「おう」

 ぶっきらぼうな返事が返ってきた。話すと色々話してくれるのに、挨拶だけはいつも「おう」の一言だけである。

 開店をしたはいいものの、まだ朝の九時過ぎという時間だからお弁当を買いに来るお客さんはいない。いつもその間は、レジ周りを拭いたり、お店のドアを拭いたりするのだけど、これが何ともちょうどいい。しんどす

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第二話 朝の道

 外に出ると、太陽がおはようと叫んでいるかのような快晴だった。
 
 目に差し込んでくる光を瞼で覆いつつ、今日も一日が始まったのだと自覚する。
 太陽はいいよな、存在しているだけで。なんなら、生命に恵みを与えているなんてすごいよ、ほんと。人間なんて、お金がなかったら生きていけやしない。
 
 あぁ、ダメだ。またこんなことを考えている。
 考えないと決めたのに。

 思考を遮ろうと、周りに目を移す。

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