wata aya

山田航と佐藤文香

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山田航と佐藤文香

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今朝5

×月×日 乱舞するかなぶんわたしだけじゃまだ届かないかな六等星に  K ◯月◯日 かなかなよ鎮痛剤の濃紺よ  S  ×月×日 うーん、ごめんって言うのが悔しい。 あなたが満足気な顔するの目に見えてるから。 アンパンマンみたいに頰っぺつやつやさせるのわかってる。 悔しいから謝らない。 代わりに久しぶりに料理つくってみる。 トムヤンクン。 唐辛子何本入れる? ねえ水を飲んでよ喉を震わせて副作用とか気にしたらだめ  K ◯月◯日 喉をゆく冷えたいきもの秋の海  S

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    • 今朝4-S

      ◯月◯日 手帳を持ち歩かない、本がぐちゃぐちゃ、 それでもいいんだよ。 ただ、持ち歩かないばっかりに予定を忘れることを繰り返したり、 本が崩れて僕が弁慶の泣き所をやられた、 そういうのは、こだわりとか、自分流で片付けられる問題じゃない。 他人に迷惑がかかることは改めなさい。 どんなに努力したって、 君も僕も、他人に迷惑をかけずに生きることなんかできないんだから、 だから迷惑かけていいと思うような、 そこで甘えるようなヤツになってはいけない。 まちがってると思うなら、僕

      • 今朝4-K

        ×月×日 言っとくけどね、 今回はほんとうに本気だよ。 手帳持ち歩かないくらいでそんなに怒るなんて、すごくショックだよ。 いいじゃない、カレンダーに全部予定書き込んでるんだから。 毎日ちゃんと確認してるし。 そりゃたまに忘れるけど。 誕生日プレゼントのネタバレ書いちゃったのは悪かったと思ってるけど。 それをいったらあなたもあなただよ。 あの雑誌の山はあのままの状態が一番効率的なの。 ただ雑然と積んでるだけだと思ってるかもしれないけど、 ちゃんと特集別とか紹介されてるお店の

        • 今朝4

          ◯月◯日 煮崩れのトマトひろごる夜空かな  S ×月×日 紅差し指でミートソースを拭ってはにっこりするよ花魁ごっこ  K ◯月◯日 君を人差し指でさわって、ぷにっとするのを味わうのが好きだ。 君はそんなに太っていないから、見るからにぷにっとしているわけではない(最近、おなかはそうでもないかもしれないけど)。 さわってみると、ぷにっとするのがいい。 もっとも、ほっぺは、ぷにっとすると思ってさわって、ぷにっとするのがいい。 くわえて、君が驚くのもおもしろい。 ふりむく首

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          今朝3-K

          ×月×日 覚えてるよ覚えてる。 夕食のときあなたがいなくて寂しかったよ。 ほんとに寂しかった。 小学校のときに親友が風邪で休んだ日を思い出したよ。 わたし登校から下校までのあいだたった一言だけしか喋らなかったからね。 「余ったプリン食べていいですか」の一言しかね。 わたしはやっぱり地方出身だからさ。 それも電車が2時間に1本くらいのど田舎だよ。 そんなに頻繁に両親になんて会えないよ。 久しぶりに会うごとに、びっくりするくらい加速度的に老けてくんだ。 地元で結婚した姉もどん

          今朝3-K

          今朝3-S

          ◯月◯日 うちの母親がこの前出てきた日のこと覚えてる? 実家は立川だから、出てこようと思えばすぐなんだけど。 たまたま僕も時間があいたんで、母親と僕がふたりで夕飯を食べた日。 僕たちは、へんに高級な店に入ってしまって、 店の人に言われるがままに、ちいさい魚のおどりぐいを試した。 ふたりとも、特段おいしいとも思わず、かと言って気持ち悪がるでもなく、 そういうところが親子なのかな、と言いながら、たんたんと食べた。 母親に、彼女とはどうなの、と聞かれて、 仲良くやってると思う

          今朝3-S

          今朝3

          ×月×日 ドロップの薄荷よパフェのシリアルよわたしは君たちが必要だ  K ◯月◯日 シリアルの箱のタンクトップの動物よ  S ×月×日 そういえばわたしたち付き合いはじめて……えーと…… 少なくとも、1年は超えてるね。いいね! 最初の方から何かしら二人で続けられることをしていこうって話してたね。 結局この短歌と俳句のやりとりくらいしか続かなかった気もするけど。 そうだねー、写真とかあったね。一緒に撮りまくってたね。 そこらへんの人に写してもらおうとするたびに肩をポ

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          今朝2-S

          ◯月◯日 カレー食べたよ。ありがとう。 量的には3日もつけど、美味しくいただくには2日が限界だと思ったので、晩・朝・昼・朝・晩で食べきりました。 * 君が山にいるとき、僕は川にいた。 川岸の、なにかもぞもぞとした苔の花が咲いている岩のあいだに手を差し入れて、水にいちど浸った指で靴下を脱ぐ。ジーパンを脱いでたたみ、その上に靴下をまるめておく。 川に入ると、それまで僕のまなざしの内側にあった風物が遠のき、 かわりに僕の黒瞳は、水のうごくかたちで充ちるのがわかった。 水の

          今朝2-S

          今朝2-K

          ✕月✕日 久しぶりに山登ってきたー。 楽しかったー。 今年もいい花見れたよ。 登山仲間のトクヤマさんは本業が喫茶店のマスターで、 登頂したら熱いコーヒーを淹れてくれるんだ。 それが本当に美味しくてね。 トクヤマさんが言うには豆は大したことなくて、 湧き水を使ってるから美味しいんだ、 コーヒーの命は水なんだって言ってたよ。 でも地上に戻ってから行ったトクヤマさんのお店のコーヒーは、 そんなでもなかった。不思議。 あーそうそう。 山行ってたあいだ元気してた? 念のため作り

          今朝2-K

          今朝2

          ○月○日 立って書く日記 枇杷ひとつころがる  S ×月×日 フラジャイル あらゆる種が降り注ぐこの胸の真南の王国  K ◯月◯日 君と部屋でだらだらすごす、1日2時間程度がいちばん楽しい。 付き合いだして1年3ヶ月17日経ったけれど、 僕は君とふたりでだらだらすごすのが、今もとても嬉しい。 すごく嬉しい。 ほんとだよ。 僕はいつも、ふかく、ふかく、よろこんでいる。 ゴールデン・ワトル 手首を血がとおる  S ×月×日 きんいろのひざしのなかでおとなしい

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          今朝1-K

          ✕月✕日 わたし実はけっこう虫が好きで、 この季節になると網戸をすぐに開けたがる。 網戸が開くときの音も好きだし、 雨が止んだあと、網戸にはりついてきらきらとした雨粒がたたまれてゆくのを見るのも好き。 網戸越しに感じる風は粒子が細かくてやわらかでふかふかのパンみたいだけど、 わたしはどちらかというと直接吹きつけてくる風の、フランスパンみたいな強い感触が好きなんだ。 そういえばあなたと初めて喧嘩したのは、 部屋に入ってきたカナブンを追いかけ回して愛でていたら、 嫌がって逃げ

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          今朝1-S

          ◯月◯日 そのとき君が見てたかったのは僕の顔じゃなくって、 目の前の果実と果実のあいだの、 枝と葉と支柱の隙間の、 もうそれが空かどうかもわからない細かな、 何角形かの空気のかさなりたち そういうことを僕は、丁寧に覚えてゆく。 ふぁっとこっち向いて笑ったとき、 横顔からはみだしそうに目が、 目が。 ははは。 二人ゐて少し離れて袋掛  深見けん二

          今朝1-S

          今朝1

          ✕月✕日 わたしの暮らしのまわりにあるものでいちばん季節の変化に敏感なのは、 花でも鳥でもなくてアスファルトだと思う。 アパートの土台に使われてるあのアスファルト。 春が近づいてきたらあきらかに染みのかたちが変わって、 黒ずんだケサランパサランに似てくる。 もうここで暮らしはじめて三周目だから、知ってる。 面の皮が厚いせいか、気温の変化に鈍感で衣替えが下手なわたしは、 もうだいぶケサランパサランにお世話になっている。 手を振ってもまだ気づかない半円の虹はあなたの猫背みたい

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