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エッセイストになりたいねん

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自分の人生や日々の生活に起きたことをエッセイにしています。
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#音楽

喪失の響き

わたしには文学の才能ってものがない。自分で書いていて虚しいほどにわかる。語彙は少ないし、小説も数えるほどしか読めたことがないし、コツコツと地道な作業を続けるのも苦手だ。

それでも、書かないと生きられない瞬間があったから、これまで書き続けてきた。

わたしが本当にやりたい芸術は音楽だ。音楽でなら、どんな言いたいことだって表現できる。音は血肉となってわたしの中を流れている。こどものころからずっと、記

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ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番=「ロシア正教会の鐘の声 諸行無常の響きあり」

ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番=「ロシア正教会の鐘の声 諸行無常の響きあり」

「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり……」といえば平家物語である。生きているとたまにこういう気分になる時がある。

祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

【現代語訳】
祇園精舎の鐘の音は、「諸行無常」、つまりこの世のすべては絶えず変化していくものだという

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音楽の力があるとして

音楽の力があるとして

この世にはどうにもならないことがある。たくさんある。それを知っている。

自分の力、人の力、どんな力を持ってしても、合わせても、無力な瞬間がある。時がある。日々がある。

苦しさ、悔しさ、悲しさ、虚しさ、寂しさ、切なさ、いろんな「さ行」が心の中で影を潜めている。顔を出さないように釘をさしても、ほんの僅かな出来事で弾け飛んで、心の内壁が傷付いて、癒える日が遥か遠くに見える。

どうしようもないことを

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音楽性の合う合わない

音楽性の合う合わない

音楽性の合う合わないを友だちづくりの基準に据えていた時期があった。今考えれば、なんとまあ未熟な、可能性を狭める選択をしていたことか。若いってえげつない。

大学生の頃、あんまり友だちがいなかった。毎日がつまらなくて、授業には遅刻ばかりして、講義室に入るのがいやでサボるのはいつものことだった。

当時は「音楽がすべて」だった。軽音サークルに入って、歌を歌って、演奏をして。人間は音楽をするのが当たり前

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言語化のばかやろう

言語化のばかやろう

できないことが増えてくたび
自分がひとつ消えていく
なにも知らない人の
あどけないひとことに傷ついて

なにもやらないことに慣れてくたび
自分がひとり死んでいく
やりたいことだけが膨らんで
できずにしぼんでく

どうして どうして どうしてなの?
どうして どうして どうしてなの?
どうして どうして どうしてなの?
どこにも答えは載ってない

やりきれぬこと飲みこむたび
悔しさばかりたまっていく

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「好きな音楽を誰とも共有できない悩み」 #洋楽好きnoteユーザーあつまれの会

「好きな音楽を誰とも共有できない悩み」 #洋楽好きnoteユーザーあつまれの会

数日前まで、noteではハッシュタグ企画「#いまから推しのアーティスト語らせて」が開催されて大変盛り上がっていた。

面白い企画だなぁと思った一方、私は即座に投稿することを諦めてしまった。それはなぜか。

カーペンターズ。
キャロルキング。

彼らは私の敬愛してやまないミュージシャンだけど、そんな彼らについて語ったところでどうせ誰も読まないだろうな、そう思ったからだ。

カーペンターズとキャロルキ

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革命のエチュードを聴きながら【ショパンの故郷ポーランドをたずねて】

革命のエチュードを聴きながら【ショパンの故郷ポーランドをたずねて】

ショパンの話をしようとすると、いつも胸がいっぱいになってしまって、何から話したらいいかわからなくなってしまう。だからこの文章もどう頑張ったってムチャクチャになる。それでも想いの1/10でも記せたら良いのかなと思って書いてみることにする。

私にとって、ショパンは私のもう一つの心であり、理解者であり、気が合う人でありながら、偉大なる作曲家でもある。

クラシックの演奏はイタコに似ている。音を書き残す

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変わる変わるよ音楽性は変わる 〜ショパンを弾いていた少女が大塚愛経由でDesperadoに辿り着くまで〜

変わる変わるよ音楽性は変わる 〜ショパンを弾いていた少女が大塚愛経由でDesperadoに辿り着くまで〜

音楽が好きな人ならきっと、聴いた途端センチメンタルスイッチが入る曲ってあると思うんだけど、私にとってのそれはイーグルスの”Desperado”だ。

1973年の発売当時に相当売れた曲みたいなので、私にとっての、というよりは全世界共通のセンチメンタルスイッチと言えるかもしれない。まあ、みんながみんなセンチメンタルな気持ちで聴いているのかどうかはわからないけど、少なくとも私はめちゃくちゃ胸が熱くなる

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So Far Away

So Far Away

"But you're so far away
Doesn't anybody stay in one place anymore
It would be so fine to see your face at my door"

目の前にある小さな幸せを見逃さないよう
与えられた環境や愛情に誠実に感謝して
一日一日を大切に生きていきたいと思った。

人と人との繋がりは
木と鳥の関係に似ているのか

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イギリス音楽体験記|ウォータールーの夕暮れ

イギリス音楽体験記|ウォータールーの夕暮れ

イギリス留学も終盤に差し掛かった頃のことである。半年住んだロンドンにもすっかり慣れた一方で、私は不完全燃焼に陥っていた。思えば冬の間中うつ状態で家に籠もりきりで何もしていない。学校はサボり倒したし、罪悪感で死にそうである。せめて最後に一花咲かせて帰りたい。故郷に錦を飾りたい! いやまあロンドンは故郷じゃないけど、とにかくこのままでは終われないという焦燥感があった。

そんな折に日本人の友達に教えて

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音楽と私|きらきら星

音楽と私|きらきら星

小学生だか中学生のとき、音楽高校でピアノのレッスンが受けられる企画があって、私はなんとなく興味があって参加した。当時の私は個人のピアノ教室で一番上手くて、大人も抜かしていつも発表会ではトリだった。もちろん毎日必死に練習して、厳しいレッスンにも堪え、相応の努力はしていたけど、それでもチヤホヤしてもらえるのは嬉しかったし、 言うなれば天狗になっていた。

音楽高校でのレッスン当日、小さなピアノ室には私

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