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大昔のリーダーとその継承

マネジメントの集大成は何もしなくてもうまく回る仕組みを作ること

人間の行動は文化に大きく依存する。
一つ一つの行動に大きな意味はないのだから、例えば何気ない日の今夜の夕飯のメニューをどうするとか、本を縦に読むか横に読むかなんかに大きな決断を迫られる必要はない。
ただ周りがそうしているから何となくそうする、基礎行動としてこうする。
夕飯のメニューを考える際に、そもそも夕飯を食べないということを選択肢から無意識に除外しているように、特に大きな理由もなければ周囲の文化に従って生きるのが合理的というものだ。
思考コストを減らし、選択の回数を減らし、エネルギー消費を抑える。
わたしたちはこの1時間で呼吸を何回するとか、スーパーの店員に話しかけられたら何と答えようとか、このサイズの食べ物を腹にいれたら何時間かけて消化しようとか、いちいち考えずに生きていくことを可能にしている。

本来世代をつなぐために人間ほど高度な思考を獲得する必要はなかった。
野生のライオンの群れのリーダーが様々なデータを検証しながら熟考して意思決定を行っているところは見たことはない。彼らにもいろいろあるのだろうが、おそらく彼らは意思決定の適切さに困ってはいないだろう。
人間のリーダーは残念ながらそうはいかない。相手がなまじ高度な思考を獲得してしまっているせいで、ハードルが上がっていく。
文化に従って思った通りに行動すればよかった時代は、失われて久しい。

時代はトップダウンからミドルアップミドルダウンへ

信じられない世界だが、かつてリーダーは決断するだけでよかった。
優れたリーダーが多く現れたという人もいるが、どんな決断でも大体うまくいくくらい世界は伸びしろに満ちていたのだろう。
だから基本的に何もしなくてよかった。部下は勤勉に働いたり働かなかったり、細かな紛争は今と同じようにあったはずだが、そんなことにいちいち気を取られる必要がないくらい豊かだった。すごく良いか、ものすごく良いかの違いくらいしか分岐点はなかった。
今のリーダーは違う。基本的に成果は出ない。誰がやってもできる仕事ではなくなってしまった。求められる人材のレベルは上がり、優秀な人材は取り合いになり、優秀な人材をもってしても立ち行かなくなった。

市場は慢性的な人手不足だが、一方で職を失う人も増えている。
人手が足りないのではなく、「優秀な人手」が足りないのだ。

要求は基本的にどんどんエスカレートする。
誰かの要求に応えるだけではいずれ破綻する。誰かに使いつぶされて、もっと優秀な人のニーズを顕在化させるだけだ。
だからわたしの仕事を、今一度わたしが取り戻さなくてはならない。

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