shimonoyukiko

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6月の終わり

予定を埋めていく 細い筆跡に 緑は追いつき 離れる つたは 光をその顔に落とし 片目を瞑り 私は思い出している 使わない言葉 金でできた花弁と 紙できた建築 あなたを笑わせる 頭から水浸しになる 温かい飲み物をください 窓から星が見える頃に 今、顔に当たる風は 冷たいけれど 手は暖かい その目に 獣が狩られる 炎を飲み込みながら 青い空に降る雨 全ての言葉を串刺しにする極彩色の黒 それを見てもなお変わらず抱きしめる 夜を呼ぶ言葉は失われ 代わりとなる緑の風 瞬き

    • on y va

      12枚に収められた 一連の食事の写真 春から氷河まで直線で結ぶ 航路 床にこぼれ落ちた 果物を拾いながら 甲板まででると 既に日は沈んでいた オレンジ色に 照らされた顔を見合わせ 冷たさを切り分ける 沈黙があたりを 柔らかく包み この上なく賢明な言葉が 頭を駆け巡る グラスは砕け 海は凪いでいる 次の目的地で 言葉が通じるのかも知らないまま 眠る 水色の空間に雪や紙切れ、金属など 様々なものが散っていく 冬の日に照らされて どこまでも届く声

      • 牡蠣と音楽

        海面にはった氷を 銀のハンマーで 慎重に叩いていくと 一回ごとに 音階が上がり ついには何も聞こえなくなる そのように 牡蠣が歌う歌も 天上に向けられている 空は常に晴れていて くまなく照らされている この時点では春はまだ存在しなかった 夜がようやく はるか遠くに その大きな体を覗かせる シャワーも浴びてないし なんの準備もしていないけど

        • love song

          あなたが好きだな 今にもその犬歯で 私は噛み砕かれそうだ 今は土星の表面のゆったりとしたしまを天体望遠鏡で眺めているように遠く安全な場所にいる 同じ日に髪を切ってしまったり 意図せず同じ本を読む そんな香りのないひやっとするような偶然を重ねる そうではなく草の中に同じ光を見つけたり 夜のための三つの時制を作るような とんでもない間違いをしてみたい 今日は炎をナイフで切り分けた 朝 湖を鏡にしてからだを写し 短い髪を整える いまからでは遅いし 間に合わない そん

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        • 新しい言葉
          0本

        記事

          無題

          満ちる 茶の香り 一つとして同じことは起こらない バターを塗ったパン 白い小さな花びらが落ちる瞬間 ダブルイメージの朝 雨が降っている 同時に 風が雲を散らし眩い太陽が 煙が地から立ち上る 私は約束に遅れたことがない 白い貝殻を隠すのは 閉じられたことのない書物 砂漠に腕があるとしたら こんな腕だろう 緑の長椅子に横たわる 熱帯の朝 目の曲線に沿って 消えていく鳥は 淡い水色 胡粉が溶かれる 日没までの時間 灰と赤土が混ざり合う 理由なんてない方がいい

          フランチェスカの空

          フランチェスカの空 フランチェスカの薄く青い空を少し舐める それはあなたのお腹と同じ味がした 果てしない塩田を渡ってくる 柔らかい風 夜の公園で星が動く音を聞き 季節が巡ったことを感じる 教会とドラッグストアしかない村 古いドイツ車は 猛スピードでその橋を渡る 白ワインはなし オリーブオイルと塩だけで 食べるクスクス それでも今日は毛布はいらないし 1キロ先の海のことを思いながら 眠るのはいいものだ 明日の朝 この島が春の雨に覆われ 色をなくしても 海の飛沫を輝か

          フランチェスカの空

          絵を運ぶ

          9月の朝、10号線を別府から大分方面に向かう。 レンタルした白の軽バンの後部座席には絵が載っている。 ナフコで買った180cmほどの高さのある薄いベニヤ板に打ち付けられた紙の絵が強い潮風ではためくため、窓は半分以上閉じられている。 左の車窓から見える海と空は柔らかいコントラストで分けられ、大きく軽い絵だけを載せた車内は広く明るい。 その絵は即興的なたくさんの淡い色彩の筆致で描かれている。 流れるほど薄く溶かれた絵の具は、いつまでもたった今描かれたように新鮮だ。偶然現

          ミーティング

          それでもまだこの罪は生臭い味がする? 私は 沈黙が結晶化したような 白い壁に 両手をつけている 足に冷たい砂を 感じながら 強い日差しに 焼きつくされ 跡が残った 花や言葉は それがそこに 到達しようとする力の前では 気休めにもならない 急に走り出した犬は 庭に消え 二度と姿を表さなかった 服を着替え何食わぬ顔で みんなと 硬い肉を食べる オーストラリアから アメリカから グアテマラから あなたと出会えて光栄です なんて話しながら

          ミーティング

          は星のようだ

          は星のようだ 額から流れる 景色を車窓から眺めると その端から消えていく 果物売り 牛の傍に跪き洗う人 泥の中から聞こえる音楽があるという 砂漠に行くまで乾くことがない髪の毛で 乱れる 黒衣のまま 小さな声で 鳥を呼ぶ合図 切先鋭くて 優しさのもとに 全てを腑分けする 囲む食卓 草花の成長が早い 雨の日の午後は 街に出て 新しい誰かと話す 大きな太陽が沈む 何度窓を開けても同じ光景にはならないから約束をしない revelation 静かに虹を吐く その白い蛇には名前がついてい

          は星のようだ

          ユリシーズの靴下

          ソファで本を読みながら服を脱がされるのが好き 耳が裂けるまで土を詰められて 瓦礫の中に転がる 国民的な英雄の 賑やかな始まり だから花で飾って この平たいお腹を 今日は朝から砂金をあび 今は変わったお茶を飲んでいる 悪夢みたいな光景には 私たちを介入させない額縁がある クリックしてドネーションを続ける 指に光るみどりの光 西洋絵画の空の彼方からの光 この有様を照らし出す 家にいるだけであがる沢山の小さな悲鳴 ビルの一つ一つに小さなサインをしていく それは祈りで子供の遊

          ユリシーズの靴下

          飛び立つ鳩のように 前触れなく 喜びと車輪のような 雲に隠れていくその塔の頂点 数を数えるたびに一つ増え 必ず戻ってくる 蟹や貝 素足で踏みつけ 風は止まずに激しさを増す 乱れる髪を押さえて 笑う 顔は逆光でも青白い 男を見た 何も記入されていない 診断書のように 新鮮な気持ちで 世界を眺める この海の向こうから 強い日差しに 負けぬよう目を細めた 電車が通り過ぎてから 学生服を少し崩して着る 1人の気持ちで

          錆びた鉄のような

          錆びた鉄のような  川を馬が越えるイメージ そこから向かう村は 降り続く雨により 花で満たされる 朝靄 平野 木の爆ぜる音 輝く霜 鎧を取り去って 長い髪を自由にする どんな酒だって 飲み干せる 大きな蛇のような気持ちで 光に体を預ける 何回でも繰り返そう なによりも優しい風が 真夜中の海から来て 頬を撫でるかぎり

          錆びた鉄のような

          ミロ

          砂漠で飲む ミロ 熱が真っ青な形を 自由に作っていく最中 契約書に火をつける 拡大鏡 列車に乗り 南に向かう 蝶の標本をポケットに忍ばせ 顔を伏せている 派手なシャツが汗ばんでいく 音楽とニュースが落ち着かなく切り替わるラジオにいらつく とてつもなく大きなものを忘れたのだがそれが何かを思い出せない ぼやけた図像と感覚で呼び起こす 新しい神の仕草 それを元手にネットショップを開設した くだらないほどに分かちがたいな 幸運と美は だから柔らかな鬼の着ぐるみで踊る 00年代独特

          領土

          恐ろしさ 美しさ 残酷な 窓 暗い目をした三つ編みの女 胸から下は影 濡れた草と と魚介の匂い 銀の食器を錆びさせる聖歌は 細切れで聞こえなくなり 次第に親密な会話がとって変わる 土砂にまみれた美しいこの体 いつも犬のように喉を乾かす 法王の嫡子のように うまくやる 宝飾品で飾れるだけ飾り 値を釣り上げた 何度めの花婿 汚い体位 出来るだけ甘いものを食べたい 全ての皿は神話的な決断を強いるから 私たちは仕方なく巨大な牛を屠る 理想的な春 涙で景色は既に見えず 夜の支度を

          カニエトキム

          唐辛子が干された路地裏で 口汚く罵られても 空は地面に満遍なく注ぐ だからすごい高いスニーカーについた泥は元の場所へと戻っていった いつ始まったのか知らない 他の時間、場所のことも ジョンとヨーコみたいな カニエとキムのような 行為で 星の一つ一つに名前をつける 砂が固まって風景になる数ヶ月間に 作られた音楽だ このニューシングル 東南アジアの水源地から 海までジェット機で見下ろす そんな楽しみ

          カニエトキム

          冬に向けて

          動物の形をした木が並ぶ広大な庭 での会食 ほとんど服を着ていない よそよそしい人たちの 温かい体と冷たいグラス 空は切り取られ継ぎ接ぎになる 灰色の雲と朝日が混ざり夜の闇へと グラデーションでつながる 星座はささやかにナイキやアマゾンのロゴを繰り返す 雪の積もる人気のない大通り 散らばる沢山のコート、手袋、マフラー、セーター  何枚も服を脱ぐ夢 ついに自分の肌の色はわからないまま 目の前の人にキスされる 頭の中で日本の小さい鳥がゆっくりと羽ばたき始め次第に加速していくのを意

          冬に向けて