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牡蠣と音楽
海面にはった氷を
銀のハンマーで
慎重に叩いていくと
一回ごとに
音階が上がり
ついには何も聞こえなくなる
そのように
牡蠣が歌う歌も
天上に向けられている
空は常に晴れていて
くまなく照らされている
この時点では春はまだ存在しなかった
夜がようやく
はるか遠くに
その大きな体を覗かせる
シャワーも浴びてないし
なんの準備もしていないけど
錆びた鉄のような
錆びた鉄のような
川を馬が越えるイメージ
そこから向かう村は
降り続く雨により
花で満たされる
朝靄
平野
木の爆ぜる音
輝く霜
鎧を取り去って
長い髪を自由にする
どんな酒だって
飲み干せる
大きな蛇のような気持ちで
光に体を預ける
何回でも繰り返そう
なによりも優しい風が
真夜中の海から来て
頬を撫でるかぎり