鈴木偏一
マインドが大学生。
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小説 開運三浪生活 34/88「university of Iwate, by Iwate, for Iwate」
六月に入った。相変わらず週一回の部活に参加していたものの、文生はもはや卓球に熱が入らなかった。部活というよりサークル然とした緩い活動を望む部員に、肩透かしを食らった気持ちだった。部活への失望も相まって、大学生活そのものに対する期待はさらに薄まっていった。他大学への編入について調べ始めたのもこの頃だった。
この時季、ほかの大学に進んだ高校時代のクラスメイト数人とひさしぶりに連絡をとってみると、それ
小説 開運三浪生活 26/88「破戒」
高校生になってもテレビを観ない生活を継続していた文生だが、二年に進級してしばらく経つと、ようやくにしてカラフルな二次元の世界への欲求が募り始めていた。
その頃の文生は、人生で初めて本格的に音楽を聴くようになっていた。後年、CDが一番売れた時代と言われ、邦楽ロックと呼ばれるジャンルが日本の音楽シーンを牽引していた。CDを買う習慣がまだなかった文生は、ラジオから流れる楽曲をテープに録音して何度も聴い