依田稽一 / Keiichi Yoda

詩、短歌、データ集計、分析などの記事・創作を発信しています。 作品先行公開個人ブログ…

依田稽一 / Keiichi Yoda

詩、短歌、データ集計、分析などの記事・創作を発信しています。 作品先行公開個人ブログ:https://yodak1.blogspot.com/

マガジン

  • 駅で男は目覚めたシリーズ

    散文詩(無改行、不改行)「駅で男は目覚めた」をまとめています。

  • 定型詩(短歌・川柳など)まとめ

    作成した定型詩(短歌・川柳など)をまとめています。

  • 階シリーズ

    足を出しても進まない。膝を上げても昇れない。下っていくほど深くはない。 旅ではなく、迷い躓くための「階シリーズ」の詩集。

  • データ集計・分析系記事まとめ

    作成したデータ集計・分析系の記事まとめ用のマガジンです。 青空文庫アクセス数、詩人年表など。

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『月刊ココア共和国2022年11月号』佳作掲載と感想

詩誌『月刊ココア共和国2022年11月号』の佳作集に拙作「木になる君へ」が掲載されました。 佳作集は電子版のみの収録です。よろしければご鑑賞ください。 以下はココア共…

点々とまだら島々零す地へ暗がりの聲末に広がる

口惜しの涎も凍る陽滑らかに雲海渡り山彦を継ぐ

蹌踉めいて流され島にかもめ墜つ酔いの静けさ満ちる徳利

駅で男は目覚めた:

駅で男は目覚めた。そんなことは露知らず、遠い異国の地で眠りについた女がいた。女の名前はエミリー、あるいはイヴ、あるいはジャンヌ、あるいはキャロライン、あるいはネ…

川底に沈む根腐り雨仰ぐ澱み香し泥の骨格

相聞に酔える歌媛滔々と戯れ技転がす愛のカデンツァ

ひと知れず祈るふりして頭垂れ高天原の微風想う

良好に岡陵越えて下り坂 いまや禍福に過不足もなし

花形見ひとり賀宴の夢千夜 帯を緩める指に補佐なし

女が生まれた。服を着た女が。

女が生まれた。服を着た女が。 父は服のみを産み落とさずにいたことを嘆いた。 母は祖母によく似た糸を裁つ頃にようやく笑みを浮かべた。 女は赤子ではなかった。 女は少女…

駅で男は目覚めた―

駅で男は目覚めた。正確には、目覚め損ねた。目覚め損ねるという過ちを犯すことを、これほど正確にしてのけることは、未だかつて男の目覚めに際して起こり得なかったことで…

砂利砂利の崎に隠れし陽は落ちて波打ち際を長ながときく

公園に本卦還りの父連れて老熊骨董引き取り手も避け

飢えずとも分かちがたきはかたき故 皮乾かした大福を割る

崎見えず周り漕げども遊び過ぎ気づけばひとり残される宮

『月刊ココア共和国2022年11月号』佳作掲載と感想

『月刊ココア共和国2022年11月号』佳作掲載と感想

詩誌『月刊ココア共和国2022年11月号』の佳作集に拙作「木になる君へ」が掲載されました。

佳作集は電子版のみの収録です。よろしければご鑑賞ください。

以下はココア共和国11月号を読んで気になった詩についての感想です。

森崎 葵「プレゼントはいりません」

「もらえるものは病気以外はもらっとけ」なんて言葉もありますが、贈り物を受け取ることも時には息苦しく感じることがあったりする…ことを思い出

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点々とまだら島々零す地へ暗がりの聲末に広がる

口惜しの涎も凍る陽滑らかに雲海渡り山彦を継ぐ

蹌踉めいて流され島にかもめ墜つ酔いの静けさ満ちる徳利

駅で男は目覚めた:

駅で男は目覚めた。そんなことは露知らず、遠い異国の地で眠りについた女がいた。女の名前はエミリー、あるいはイヴ、あるいはジャンヌ、あるいはキャロライン、あるいはネリー、あるいはノリコであった。女は美しい女だった。どの程度美しいかと問われれば、その女を見たことのない人々の、各々の想像力が「美しい女」をイメージし、そのイメージを形作り、そのイメージを一定の期間、保持するのを損なわない程度には美しかった。

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相聞に酔える歌媛滔々と戯れ技転がす愛のカデンツァ

ひと知れず祈るふりして頭垂れ高天原の微風想う

良好に岡陵越えて下り坂 いまや禍福に過不足もなし

花形見ひとり賀宴の夢千夜 帯を緩める指に補佐なし

女が生まれた。服を着た女が。

女が生まれた。服を着た女が。

女が生まれた。服を着た女が。
父は服のみを産み落とさずにいたことを嘆いた。
母は祖母によく似た糸を裁つ頃にようやく笑みを浮かべた。
女は赤子ではなかった。
女は少女ではなかった。
女は母ではなく、女は父でもなかった。
女は老婆ではなかった。
ただ女は服を着た女であった。
女の産声は産婆の耳鳴りに掻き消されて誰の耳にも届かない。

胎盤を透かして見た臀部の裏の襞の間にかいた汗の一滴を波が攫っていく。

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駅で男は目覚めた―

駅で男は目覚めた。正確には、目覚め損ねた。目覚め損ねるという過ちを犯すことを、これほど正確にしてのけることは、未だかつて男の目覚めに際して起こり得なかったことである。おそらくは夢の中でさえ、男がこれほどまでに目覚め損ねることはなかった。男はうーんうーん、と唸り声を上げるが、それは欠伸でも、起き抜けに気道を開こうとする試みでも、声帯の自発的な準備作業でもない。男の精神は確かに目覚めに向かっていたのだ

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砂利砂利の崎に隠れし陽は落ちて波打ち際を長ながときく

公園に本卦還りの父連れて老熊骨董引き取り手も避け

飢えずとも分かちがたきはかたき故 皮乾かした大福を割る

崎見えず周り漕げども遊び過ぎ気づけばひとり残される宮