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かなめゆき『いつか一緒にくたばってくれ』
私が完全に心酔しているかなめゆき(@asunihayokunaru)さんの歌集、『いつか一緒にくたばってくれ』を読んだ感想を書きます。
すばらしいものに出会った時ほど、人は言葉から自由になると思います。というか、言葉を必要としなくなるように思う。だって、そこにあるそれが素晴らしいことを正しく理解するためにはそれに出会う他なく、それが素晴らしいことは言葉がなくとも失われることはないのだから。
という
動物がきらい『思い出の墓場』
いいことがあったら悪いことがある 電話がきたから地球は滅ぶ
本物じゃなくても構わないと言いながら自分の嘘で傷付く
ふたりだけホームの奥の奥に行く秘密基地みたいな深い穴
暗号も秘密基地だって持ってるしイーサンハントよりスパイ的
いつだって他人行儀でいるくせに電車に乗る時少しあがる手
昼下がり「夏休み、暇?」お互いに暇じゃないこと知ってて首肯
俯いて「花火行かない」今日ずっとそれを言おうと
魔女になれない日曜日
魔女ですが、机からよく消しゴムが落ちる呪いしかかけられなくて
魔女ですが、君が傷つけられてても物理防御は対応出来ない
魔女だから、仕方ないです満月の晩に貴方を想っちゃうのは
幸せな君はきらいだ しとしとと涙流さぬ魔女になりたい
君のため最終奥義 魔女だから悪い魔法使いは倒す、死んでも
わるくない、わるくないよと抱きしめた 皆怖がってるだけなんだ
先生はほんとうを言う君を見て見ぬ振りをし
愛と殺意は似てると思う【短歌10首】
この音は君を見つけた衝動だ愛と殺意は似てると思う
もし僕がこのまま力を込めたなら君はそのまま天使になれる
事故だった初めて会った教室が燃えたアルコールランプをなぞる
傷付けたのは私だし知っていた愛より痛いこれはなんなの
苦しげに沈黙してたふたりとも世界は優しくないと知ってた
鉛筆の尖った方を握り締め 笑う笑って「幸せです」と
気付きたくないこともある君の手は別にぜんぜん白くないこと