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「良妻賢母」型ヒロイン・小紅は、なぜ自己評価が低く何事にも消極的なのか?|『未確認で進行形』(2)

 本記事は、アニメ「未確認で進行形」を徹底分析する特集の……第2回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマ!


 前回は作品概要と、本作を語る上で無視できない重要な特徴(「少女マンガ的な展開・ギミック」、「ファンタジー要素」)をご紹介した。


 本記事からは、主要キャラの人となりを見ていこう。


 まずは……主役の小紅!

 「小紅」というキャラの特徴をまるっとご紹介する!


※左:小紅。


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 さて、細かい分析を始める前に……ざっくり結論からご紹介したい。


 すなわち!

 小紅の特徴は、以下の4つに集約できると思うのだ。



 以下、各要素について詳しく見ていこう。


【小紅の特徴①】優秀な母、姉と暮らしている


 まずは、彼女の家族について。


 小紅は、夜ノ森家の次女である。

 夜ノ森家は、母、姉(紅緒)、そして小紅の3人家族。


 小紅が幼い頃に両親が離婚したそうで、父は一切登場しない。


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 さて、小紅の母はどのような人物だろうか?


 彼女は、いつも忙しく働いている。

 小紅たち姉妹をほとんど女手1つで育てたという。

 詳細は描かれていないが、どうやら優秀な人のようだ


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 次いで、姉の紅緒。


 詳細は紅緒の人となりを分析する別記事でご紹介するので……ここでは、大変に優秀な人であることだけ確認しておきたい。

 紅緒は、学校では「紅緒様」と呼ばれ、男女を問わず憧れの的となっている。

 小紅の友人・まゆら曰く、「紅緒さん、相変わらずすごい人気だよねぇ。でもわかるなぁ。美人でスタイルもスラッとしていて、常に成績もトップだし、スポーツも得意な生徒会長。でも気さくでお話ししてて楽しいし、好かれるのも当然だよね」(第1話)。


 文武両道、才色兼備の完璧超人というわけだ。


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 そんな母と姉について、小紅は以下のように言っている。

小紅「姉様や母様はすごい人」(第5話)

小紅「母様はほとんど私たちのこと、女手1つで育ててくれたくらい仕事バリバリだし。姉様も優秀だし」(第6話)


 優秀な母と姉に囲まれて育った小紅には、「それと比べて私は……」と自身を卑下するクセがあるのだが、そのあたりは本記事の後半で詳しくご説明しよう。

 ここでは、彼女の家族についてご紹介した。


【小紅の特徴②】見た目も中身も「良妻賢母」型


 続いて……彼女が「良妻賢母」型のヒロインであることを取り上げたい。


 「良妻賢母」というのは、具体的には以下のようなことを指す。



 これらの要素が組み合わさることで、「これぞ良妻賢母!」とうならざるを得ない雰囲気を醸し出しているのである。

 「ヒロイン」と言うよりも、「ママ」に近いと言えるかもしれない。


※小紅。


※右:巨乳安産体型の小紅。


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 さて……ここでは、彼女の「家事スキルの高さ」に注目してみたい。


 小紅は幼い頃から家事を担当していたという。

 仕事が忙しい母、家事だけは苦手な姉・紅緒に代わって、彼女が一切を取り仕切ってきたのだ。


 そして……家事と言っても、掃除、洗濯、裁縫など幅広いが、作中特に多く描かれているのは調理シーンだ。

 第1話のカレーに始まり、ハンバーグやら、スコーンとクロテットクリームやら……小紅が調理するシーン、そして調理しながら真白や白夜と会話をするシーンが、じつに丁寧にじっくり描かれている


 また、こんなエピソードもある。

 第1話で、「今日から、白夜と真白が同居することになった」と聞かされたときのことだ。


 突然の話である。

 小紅は呆気にとられ、混乱する。

 そんな彼女がとった行動は……そう!

 小紅は、「ハァ……。もー!私が考えた1週間の献立が総崩れじゃないかぁ……」と文句を並べながら、食料品の買い出しに出かけたのだった。


※左:突然登場した白夜と真白に混乱する小紅。


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 第1話の冒頭から(特に第6話まで)、こうした「小紅の良妻賢母的なところ」が何度も何度も描かれている。

 その結果、視聴者はこう考えるようになる……「小紅って、控えめだから決して目立つタイプではないけど、メッチャいい子じゃん!こういう人と結婚したら幸せだろうなぁ!」


【小紅の特徴③】家事以外のスペックも高い

 

 上述の通り、小紅は良妻賢母型のヒロインだ。


 しかし、それでは家事以外のアレコレが不得手かと言うと、そんなことはない。

 完璧超人の姉・紅緒ほどではないにしても、全体的にかなりスペックが高いのだ。


 まず、容姿は端麗である。

 スタイルが魅力的なこともあり、多くの男子生徒が彼女に興味を持っている(……が、シスコンの紅緒が握りつぶしてしまうので、小紅は自分がモテることに気づいていない)。


 また、成績は優秀である。

 定期テストで赤点をとった白夜やまゆらに、勉強を教えてやっている。


 その上、性格もいい。

 例えば、第1話にこんなシーンがある。

 上述の通り……16歳の誕生日に、「あなたには許嫁がいる。今日からこの家に同居することになった」と知らされた小紅。

 彼女は呆気にとられる。


 混乱状態の彼女が「とにかく!わたしは嫌ですから!!」と部屋を飛び出してしまうのも無理ないだろう。

 なにしろ、彼女は多感な16歳なのだ。

 そしてすべてが突然すぎる。


 ……しかし!

 小紅はすぐに冷静になって、「嫌ですから」という自身の言葉が失礼だったのではないかと反省する。

小紅「でも、向こうだって勝手に決められたんだろうし……失礼だったかな」


 ……ショックを受けたときにも、すぐに相手を思いやることができる!

 小紅の性格のよさが表れたシーンだと言えるだろう。


【小紅の特徴④】何事にも消極的


 ここまで見てきた通り……小紅は良妻賢母型で、さらに容姿も成績も人柄も優れている。


 ただ、そんな彼女にも欠点がある。

 何事にも消極的なのだ。


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 最もわかりやすいのが、対人関係である。

 小紅は常識を持った賢い子なので、誰に対しても愛想よくふるまうことができるだろう。

 しかし!

 そこからもう一歩、二歩と距離を詰めるのが苦手なのだ。


 例えば第12話、白夜と真白が突如実家に帰ってしまったときのこと。

 小紅はショックを受ける。

 しかし彼女は動かない。……いや、動けない。


 家族のように大切に想っていた2人が、挨拶もなく消えてしまったことに強い衝撃を受けながらも、彼女は淡々と家事をこなしていく。

事情を聞いたまゆらが言う「そんなに心配なら追いかけてみたら?学校もお休みなんだし」

小紅「でっ、でも……勝手に家を空けたら姉様や母様に心配かけちゃう。それに、白夜たちにも事情があるかもしれないし」

まゆら「……小紅ちゃん、こういうときくらいわがままになってもいいと思うなぁ」

小紅「えっ……」

まゆら「許嫁なんだから、白夜くんの実家に行ってもおかしくないでしょ」

小紅が立ち上がる「あっ……うん!ありがと、まゆら」


 こうして小紅は白夜らの実家に向かうわけだが……おわかりいただけただろうか。


 このフットワークの重さである!

 「相手にも何か事情があるかもしれない」、「迷惑かもしれない」、「心配をかけてしまうかもしれない」……そんなことばかり考えてしまうのが小紅なのだ。

 よく言えば、(上述の通り)「温厚で控えめで、決してでしゃばらない」。

 悪く言えば、「人との間に壁を作る」、「他人行儀」。


 そして……家族のように親しくなったはずの白夜らに対してすらこの腰の重さなのだから、そうでない人、例えば学校のクラスメイトらに対して、彼女がどれだけ他人行儀に付き合っているか想像がつくだろう。


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 考えてみると……「未確認で進行形」に登場する小紅の友人はまゆら1人だ。

 その唯一の友人が「天然ボケ気味」、「実家が金持ちのお嬢様」、「普段はおっとりしているが、妙に勘が鋭い」といった特徴を持つ一風変わった子だというのは興味深い設定だ

 そんな変わった子だからこそ、他のみんなが「いい子なんだけど……小紅ちゃんってちょっと付き合いづらいよね」と感じる「壁」を無視して小紅と親しくなることができたのだろう。


※中央:まゆら。「ゆるゆり」の池田千歳、あるいは「テニプリ」の入江奏多に顔や髪型が似ている。「一見温厚、中身は個性的な子」というところも似ているように思う。


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 これ以外にも、小紅の「消極的なところ」が感じられるエピソードは少なくない。


【例】目立つのが嫌:白夜が小紅と同じ高校に転入する際、「許嫁がいるなんてバレたら、同級生から囃し立てられるに違いない。だから誰にも知られたくない!」と考える。


【例】ハッキリ断れない:校内新聞の取材を申し込まれたときのこと。目立つのが嫌いな彼女は当然取材なんて断りたいのだが……ハッキリ嫌と言えず、いつまでも付きまとわれることになる。


【考察】小紅はなぜ消極的な性格になったのか?


 ここまで見てきた通り……小紅は何事にも消極的だ。 


 さて、ここで考えてみよう!

 彼女は、一体なぜこのような性格になったのだろうか?


 結論から申し上げると、以下のような構造になっていると思われる。



 以下、各要素について詳しくご説明しよう。


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【1】優秀な母や姉と比べて、自分が劣っていると感じている


 小紅が自身を卑下するようになった第1の原因……そしておそらくは最大の原因は、「優秀(すぎる)母と姉」の存在だ。


 まずは、小紅自身の言葉をいくつかご紹介しよう。


 小紅が、高校に入学したばかりの頃を回想する(第1話)。

 全校生徒が憧れる完璧超人・紅緒の妹が入学してきたということで、学校中が大騒ぎになる。

小紅「あのときは、本当に穴があったらと思ったよ。……まぁ、比べられるのは慣れてるから。それに、姉様は私にとっても自慢の姉だからみんなに好かれているのは素直に嬉しいし」

 ……と言いながらも、小紅は少し寂しそうな表情を浮かべる。


※少し寂しそうな小紅。


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 あるいは、「白夜らの身内が、様子を見にくることになった」と聞いたときのこと(第5話)。

小紅「姉様や母様はすごい人たちだけど、それに比べて『私なんか……』とか思われるのかな……」


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 また、新聞部員から「生徒会長の妹」に取材をしたいと打診を受けたときのこと(第6話)。

小紅が呟く「『生徒会長の妹』かぁ……」

白夜「嫌?」

小紅「えっ?」

白夜「比べられるの……」

小紅「そっ、そういうのじゃなくて!私、目立つようなこと苦手だし……それにがっかりさせちゃうだろ?」

白夜「何が?」

小紅「あっ……ううん。こういうことってよくあったから、慣れてるし……」


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 上述の通り、小紅の家族、つまり母と姉・紅緒は大変に優秀だ。

 一方の小紅も人並み以上だと思うが……母や姉ほどではない。少なくとも小紅はそう思っている。


 小紅は母や姉を尊敬し大切に想っているが、それと同時に、幼い頃から常に劣等感を覚え、「私なんて……」と自身を卑下してきたのだ。

 こうして彼女の自己評価は低下したと思われる。


※学校で「紅緒様」と崇められる紅緒。ちなみに、以下のツイートの投稿主の「松井恵理子」さんは声優で、紅緒を担当している。


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【2】虚弱体質


 前回ご紹介した通り、白夜や真白は人間ではない。

 「もののけ」などと呼ばれる存在だ。


 幼い頃、小紅がひどいけがを負ったときのこと……その場にい合わせた白夜が自らの力を分け与えることで、小紅は一命をとりとめた。

 しかしそれ以来、小紅は虚弱体質になったという。

 人ならざる者の力によって救われたことの弊害らしい。


 作中では、第4、5、12話で発熱、めまいなどの症状が出て、倒れ込んでいる。

 そして、小紅が体調不良で寝込むのは決して珍しいことではないそうだ。


 「体の弱い子が自信を持てず、引っ込み思案になってしまう」というのは、現実世界でもよく観察されることだ。

 この「虚弱体質」が、小紅の自己評価の低さの一因になっていると考えられる。


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【3】孤独な幼少期の「不安」


 ここまでご紹介してきた2つの要因(「優秀な母や姉と比べて、自分が劣っていると感じている」、「虚弱体質」)と比べると、作中であまりハッキリ描かれていないのだが……幼少の頃、小紅は孤独感を抱えていたらしい(第4、12話でわずかに描写がある)。


 おそらく、こういうことだ。

 彼女の母は忙しく働いていた。

 姉・紅緒は幼い頃から大変に優秀で、アクティブに飛び回っていた。 

 それに対して小紅は……体調を崩し、1人ベッドで横になっていた。


 幼い彼女が孤独を感じるのも無理はないだろう。


 そしてこのとき小紅は、「私だけが置き去りにされる」、「みんなの足を引っ張る私は、見捨てられてしまうのではないか」といった子ども特有の強烈な「不安」を抱いたのではないかと思うのだ。

 「世界から見捨てられる不安」とでも言おうか。


 また、上述の通り……彼女の幼い頃に両親が離婚している。

 さらに、同居していた祖父(母の父)が亡くなっている。

 これらの「喪失」も、彼女の「不安」に影響しているのかもしれない。

 つまり、「みんな、私を置いていなくなってしまう。次は母様か姉様か……」というわけだ。


 以上ご説明した「孤独感ゆえの不安」もまた、彼女の自己評価を低下させる一因になっていると推測される。


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 ここまで見てきた3つの要因、すなわち「優秀な母や姉と比べて、自分が劣っていると感じている」、「虚弱体質」、「孤独な幼少期の『不安』」の結果、小紅は自己評価の低い子に育った。

 そして自信の持てない小紅が、何事にも消極的になるのは当然の帰着と言えるだろう。


※再掲。


 さらに「自己評価の低さ」と「何事にも消極的」という2つの要素は、負のループ(ネガティブ・ループ)を描いていると考えられる。

 つまり、「自信が持てない → 消極的になる → ますます自己評価が低下する →より一層消極的になる……」ということだ。



 以上、「小紅」というキャラの特徴をご紹介した。



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(担当:三葉)

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