マガジンのカバー画像

小説

14
運営しているクリエイター

記事一覧

【超短篇絵本小説】地球。

【超短篇絵本小説】地球。

地球は普段は深い深い眠りについています。地球で何が起きていても分かりません。

ある日地球はふと数千年ぶりに目覚めました。

すると、地球内で犯罪や戦争が絶えなくなってきたことに気付き、世界中の人々の悪行の多さに怒って大きな、大きな火災を起こしました。

地球内では、原因不明の火災と報道され、研究者たちが必死に原因を探っていました。 

取り敢えずこれで暫くは大丈夫だろうと一息吐こうとしたその時、

もっとみる
【短編小説】スティール。

【短編小説】スティール。

生まれた瞬間から名前が自動的に決まり、意味を表す世界。

スティールちゃんは、「ス」が頭、「テ」が上胴体、「ィ」が下胴体、「ー」が両腕、ル」が両足の女の子で、祖母の遺伝から、頬に「 ゛」が付いているのが特徴でした。

スティールとしてただ生まれたその子の意味は「盗む」です。
そのため、周囲からは忌み嫌われた女の子でした。

確かに、その文字の意味合いを強く能力として持ち、彼女はモノや人を盗むのが得

もっとみる
【短編小説】お花を咲かせるために。

【短編小説】お花を咲かせるために。

ある人は、勝手に育てば良いと、植えた種に水やりをしない。

注いだ水が多過ぎても少な過ぎても、申し訳ないと要望を言えないし、そもそも育てようと思わない。

咲かなかったらどうしようとか、水を注いだ人に責任を負わせるのが申し訳ないと思うんだろうから、「がんばれ」とだけ言っておこう。

もし枯れた時、自分に責任が負わないようにしてるんだったら、雨が降った時の水と晴れの時の日光で、自分の力で、育てば良い

もっとみる
【短編小説】寂しいブロッコリー。

【短編小説】寂しいブロッコリー。

私はブロッコリーとして生まれ、育てられました。

ですが、今日ほどその人生を後悔したことはありません。

私はてっきり、サラダとか洋風の料理として調理されると思っていたのですが、なんとカレーに入れられることになったからです。

カレーには、玉ねぎ・人参・じゃがいもが当たり前だと思われており、実際カレー煮込みの中には、仲良く3人組で並ぶ玉ねぎさんたちがいます。

適度な大きさに切られた私は、まな板の

もっとみる
【超短編小説】消しゴムと鉛筆。

【超短編小説】消しゴムと鉛筆。

僕は鉛筆が羨ましい。

だって、君の身体が文字として残るじゃないか。 

例え、短くなって捨てられたとしても、君は世界に残り続けることができる。

でも僕は、鉛筆を消す役割で、消しカスとなった僕は捨てられる。

小さくなって、影も形もなくなって、世界からいなくなる。

それに、僕は最後まで使って貰えること自体少ない。

いつも、途中で買い替えられて、僕は机の隙間や床下に忘れ去られ、年末年始に見つけ

もっとみる
【短編小説】私の私。

【短編小説】私の私。

私は普段、仕事から家までのルートしか歩かない。休みの日は、家で死ぬように寝た生活を送っていた。

それなのに、どうしてなのか、あとで振り返ってみてもよく分からない。私はふと、今日はいつもと違う道で帰ろうと思った。

最寄駅から家までの道を、ぐるっと大きく回るように私は歩き始めた。高級そうな一軒家、学生が住みそうな集合住宅、客が入っているのかどうか分からないスナック…周囲を見回しながら歩き、普段は気

もっとみる
【短編小説】北へ傾く。

【短編小説】北へ傾く。

ある電柱は、毎日苦言を呈していた。

なんせ、日々自分の身体が北へ北へと傾いているからだ。

このまま傾き続ければ、自分はいつか中心辺りからぽっきりと折れ、死に絶えるだろう。

 傾く理由は、地形や天候など様々あるが、1番の根幹の原因は「電力の供給割合の傾き」によるものだ。

家庭によって、使われる電力量は違う。そして電柱は、より多く電力が使われる方へと傾いていく。 

普段は倒れないように、人間

もっとみる
【短編小説】6と9の苦悩。

【短編小説】6と9の苦悩。

この世の見た目は、数字で構成されています。
ある人は2という形で。ある人は、7という形で。

その中でも、ある6は、勉強、運動、人付き合い全般が苦手で、いつも劣等感を抱いている少年でした。どんなに練習しても、努力しても、みんなに追いつけないので、いつもいつも、自分を責めては他人を羨んでいました。

一方で、その幼馴染の9は勉強も運動もでき、周囲からも好かれ、いつも生き生きとしている、世にいう優等生

もっとみる
【短編小説】愛のクスリ。

【短編小説】愛のクスリ。

とある山奥に、ある少年がいました。

その少年には他に、3人の家族がいました。

しかしながら、青年が物心つく前に両親は病死し、物心ついた頃には、兄は病に伏せ、布団の上で残りの寿命を全うするしかない状態でした。 

更に兄は心も病に蝕まれ、誰かが少しでも兄に近づこうとすると、狂気めいたことを大声で口にし、門前払いする者と化しており、少年は、兄を見守ることしかできませんでした。 

その時の少年の心

もっとみる
【短編小説】ロボット。

【短編小説】ロボット。

ロボットの僕は、燃料が切れると動けなくなる。 

他のロボットたちもそうだ。

働きすぎると、機器が熱を帯びて、パンクする。

状況によっては働きながら充電することだってあるけど、そうすると、そのロボットの寿命は短くなる。

部品を直しても、充電しても、動けなくなる。

ふふっ、まるで人間のようだろう?

眠眠打破を飲みながら、24時間365日働き続けることには限界がある。

つまり、何事にも、誰

もっとみる
【超短編小説】君に届け。

【超短編小説】君に届け。

僕たちの光が、地球のみんなに届くまでは、沢山の時間がかかる。 

でも、その瞬間その瞬間の光に、僕たちは様々な想いを込めるんだよ。

そして、君たちの寿命はそれよりも遥かに短いから、この人に届いて欲しいって願った光も、届かない間にその人が死んでしまう時もあるんだ。

それに、最近の地球は地上が明るくなって、僕たちが見えにくい環境になってしまっているしね。

一等星とかは見えやすいと思うんだけど、小

もっとみる
【短編小説】幸せのお店。

【短編小説】幸せのお店。

ここには、沢山の人が並ぶお店が数多くあります。

その中でも私は、幸せのお店で順番を待つことにしました。

こんな簡単に幸せになれるなんて、そんな奇跡あるのだろうか…。

そわそわそわそわ…。
きっと、世間の言い方としてはそう表現するのでしょう。

次は私の番かな、それとも、次の次かな。

暫く待ったけど一向に呼ばれる気配はありません。 

受付の番号の順番を見に行きましたが、私の番はまだです。

もっとみる
【超短編小説】陰でも僕は、回り続ける。

【超短編小説】陰でも僕は、回り続ける。

僕は、ずっと回ってる。

みんなを、快適にするために。

くるくるくるくる、何度も同じ場所を回ってる。

ても、小柄な僕の役割に、存在に、気づいてくれる人は少ない。
でも、それでも良いんだ。

だって、僕は影の存在だから。

僕は、空気を循環させる働きがメインだから。
僕は、サポーターだから。
クーラーや扇風機には、どうやっても敵わない。

でも、就寝時とか、部屋が広くない家庭とか、僕を主役にして

もっとみる
【短編小説】桜物語。

【短編小説】桜物語。

4月も中旬にさしかかるある日、公園で遊んでいたら、桜に声を掛けられた。

「もうそろそろ春が終わってしまうから、今年の僕が死ぬ前に、願いを叶えてくれないか?」

どうやら、桜は毎年、別人に生まれ変わるらしい。

来年生きられないならしょうがない、そう思って、協力することにした。

1つ目の願いは、「お店の中に入ってみたい」だった。

木である桜が、どうやったら動けるのか聞くと、花びらを1枚持ってい

もっとみる